温泉が920円だろうと1500円だろうと、私は土日に行くしかない
エレベーターで「開」ボタンを押し続ける係を、つい引き受けてしまうことでおなじみのでんだです。
誰にも頼まれていないのに、最後のひとりが降りるまで押しています(誰も見ていない)。
さて。
今日は温泉の話をします。
でも、たぶん温泉の話じゃありません。
土日の湯船で、足を引っ込めたことありませんか
私はずいぶん長いあいだ、同じ温浴施設に通っています。
家からスクーターで30分弱。
天然温泉で、サウナがあって、露天がある。
いい施設です。
で、行くのはたいてい土曜か日曜でした。
そりゃそうです。
勤め人なので。
そうすると、こうなります。
湯船で足を伸ばしていると、人が出入りするたびに踏まれそうになるので、そっと足を引っ込める。
サウナは常時15人くらい。
段を上がるときに、人の膝の前を横切る。
出たあと、整いスペースの椅子は空いていない。
運が悪いと、浴槽の縁に腰かけて休むことになる。
あと、子どもが多い。
湯船で暴れる。
楽しくなっちゃってはしゃぐ。
・・・まあ、子どもは悪くないです。
悪くないんですが、静かではない。
これを私は、ずっと「温泉とはそういうものだ」と思って過ごしてきました。
あなたはどうですか。
土日のスーパー銭湯、あるいは土日の行楽地。
「まあ混んでるよな」と思いながら、それでも行っていませんか。
用事がないのに有給を取るの、もったいない気がしませんか
正直に書きます。
私は有給を「用事があるときに取るもの」だと思って会社員生活を送ってきました。
病院。
役所。
家族の予定。
法事。
こういう「取る理由」があるときだけ、申請を出す。
逆に言うと、理由がないと取れない。
いや、制度上は取れるんですよ。
取れるんですけど、なんというか、用事のない日に有給を溶かすのはもったいない気がしてしまう。
貴重な残日数を、ただの平日に使うのは損な気がする。
取っておいて、いざというときに使うほうが賢い気がする。
・・・気がする、気がする、で30年以上やってきました。
もちろん業務の都合もあります。
自分が抜けたら回らない日というのは、実際にある。
でも、それを差し引いても、私の中には「用事がないと休んじゃいけない」という手作りのルールがずっとありました。
たぶん、あなたの中にもあります。
違いますか。
月曜の朝10時、湯船は貸し切りだった
今年、夏休みを土日にくっつけて取りました。
つまり月曜が休み。
で、朝10時に、いつもの温泉に行ったんです。
まず、静かだった
浴場に入って、あれ?と思いました。
各浴槽に、ひとりいるかいないか。
いないこともある。
つまり貸し切りです。
足を伸ばしました。
誰も来ません。
ずっと伸ばしていられます。
サウナは4〜5人。
15人が4人になると、あそこは別の場所になります。
そして出たあとの整いスペース。
ガラガラでした。
椅子が選び放題。
「どれにしようかな」と選べるんです、椅子を。
土日に椅子を選んだことなんて、一度もありません。
平日が空いてることくらい、言われなくても分かっていたんですよ。
ただ、ここまで違うとは思っていませんでした。
そして、料金表を思い出した
帰り際、料金表を見ました。
平日820円。
土日920円。
差は100円。
いつもなら「土日は100円高いのか、まあそんなもんか」で終わります。
でも今日は終わらなかった。
だって、おかしくないですか。
高いほうが、中身が薄いんです。
100円多く払った日は、足が伸ばせなくて、椅子が取れなくて、騒がしい。
100円安い日は、湯船が貸し切りで、椅子が選び放題で、静か。
普通は、高いほうにいいものが付いてきますよね。
それが商売ってものです。
じゃあ、この100円は何なんだろう。
湯船の中で、もう一段考えました。
混雑って、本来は値段で散らされるものです。
高い日を避けて、安い日に人が流れる。
飛行機もホテルも、そうやって人を散らしています。
でも、私にはそれができない。
920円が1500円になったとしても、私は土日に行きます。
休みが、土日しかないから。
ここで腑に落ちました。
土日料金とは、曜日を選べない人だけが払っている100円のことです。
値段が上がろうが下がろうが、私は土日に行くしかない。
つまり私は、曜日を選ぶハンドルを握っていない。
握っていない人間が、混雑を全部引き受けているわけです。
誰も得していないのに、消えている
そして、もうひとつ気づいたことがあります。
平日なら味わえるもの。
足を伸ばせる湯船と、選べる椅子と、静けさ。
土日には、これがない。
でもこれ、誰かに横取りされているわけじゃないんですね。
施設が土日だけ湯船を狭くしているわけじゃない。
隣で洗い場の順番を待っていたおじさんが、私のぶんの静けさを持って帰ったわけでもない。
みんな同じ混んだ湯に入って、みんな同じように我慢している。
誰かが得して誰かが損する、という話じゃないんです。
同じ日にみんなで集まった時点で、平日にあったはずのゆとりが、どこにもなくなっている。
全員で分けようとしたら、全員のぶんが消えた。
そういうことなんです。
ここまで考えて、少し気が楽になりました。
私はずっと、混んだ湯船で足を引っ込めながら、どこかで「有給を取らない自分が悪いんだよな」と思っていたんです。
でも、そうじゃなかった。
みんなが同じ日にしか休めない。
その仕組みが先にあって、私はその中で土日を選んでいただけでした。
あの人たちが持っていたもの
その月曜、浴場にいたのはほとんどが年配の方でした。
土日にも年配のお客さんはいます。
でも、明らかに違うんです。
うまく言えないんですが、平日の年配客のほうが、余裕がある。
急がない。
場所を探してキョロキョロしない。
「今日はここ」と決めているみたいに、すっと浸かって、すっと出る。
ゆっくり湯に入ることに、慣れている感じがしました。
私は正直、憧れました。
かっこいいんですよ、あの人たち。
同時に、自分がまだそちら側ではないことも分かりました。
椅子が選び放題なのが嬉しくてキョロキョロしていたし、貸し切りの湯船が珍しくて長湯しすぎてのぼせかけたし(贅沢に慣れていない)。
あの人たちが持っていて私が持っていなかったのは、お金でも時間でもなくて、あのハンドルです。
そして思ったんですが。
定年になれば自動的にあちら側へ行けるのかというと、たぶん違います。
あの「慣れている感じ」は、慣れた結果でしょう。
かっこいいんですよ、あの人たち。
たぶん、何もしない時間を持て余さないんでしょうね。
私はまだ無理です。
平日の休み方って、ひょっとしたら練習が要るんじゃないでしょうか。
その日が来た瞬間に、いきなり湯船で余裕たっぷりの顔ができるかというと、私は自信がありません。
たぶん最初の何回かは、平日の空いた温泉でキョロキョロします。
用事のない平日を、ひとつ
というわけで、あなたに「有給を取れ」とは言いません。
業務の都合は本当にあるし、私だってさんざん我慢してきた側です。
ただ、ひとつだけ。
次に有給を申請するとき、何の予定もない平日を1日入れてみてください。
病院でも役所でも法事でもない、まっさらな1日です。
そして朝10時に、近所の温泉に行く。
たぶんあなたも、湯船で足を伸ばしたまま、ちょっと呆然とします。
「これ、ずっとあったのか」と。
土日料金の100円は、曜日を選べない人だけが払っている100円です。
でも本当に消えていたのは、100円のほうじゃありませんでした。
・・・まあ、気づけただけよかったことにします。
ではでは。
良い一日を!
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最後までお読みいただき ありがとうございます
また読みに来てくださいましたら、嬉しいです 拝