小さなUIに、大きな責任がある。総合トップ改修で向き合った仮説検証のリアル
本シリーズでは、DMM.com アルファ室で働くメンバーの言葉を通じて、アルファ室のプロジェクトのリアルを紹介しています。
今回取り上げるのは、スマートフォン版の総合トップにある「サービスパネル」のUI改修プロジェクトです。
一見すると、サービス一覧の見せ方を少し変えるだけのUI改修に見えるかもしれません。
けれど実際には、会社の顔ともいえる総合トップのに関わる施策であり、ユーザーの回遊、各サービスへの送客、収益への影響、複数部署との調整、ABテストによる意思決定までが絡むプロジェクトでした。
プロフィール
伊藤 圭司
アルファ室所属。PdMとして、プロジェクトの企画整理、UI方針の検討、Figmaを用いたワイヤーフレーム・プロトタイプ作成、ABテストの仮説設計などを担当。
齋藤 亮
アルファ室所属。SPサービスパネルUI改修ではPjMとして、スケジュール管理、進捗管理、リスク整理、関係部署との調整、リリースに向けた判断を担当。

「全部のサービスを見せたい」から始まったUI改修
——まず、SPサービスパネルUI改修はどのようなプロジェクトだったのでしょうか?
伊藤:
きっかけは、スマートフォン版の総合トップにあるサービスパネルのUIに限界が見えてきたことでした。
DMMはサービス数が多く、新しいサービスも増え続けています。これまでは、限られた表示枠の中で優先順位をつけてサービスを掲載していました。ただ、当然ながらすべてのサービスを表に出せるわけではありません。載せたいサービスは増える一方で、今のUIでは受け止めきれなくなってきていました。
そこで、「ユーザーがDMMの多様なサービスを見つけられるように、改めてUIを考え直したい」という相談がありました。既存の“タイル型”のようなUIにとらわれず、他社事例も見ながら、DMMの総合トップとしてどう整理するのがよいかを提案してほしい、という依頼でした。
齋藤:
表面上はUI改修ですが、総合トップなので影響範囲が大きいんです。
総合トップはDMMの多くのサービスへの入口です。そこにある導線を変えるということは、ユーザーの動き方も変わる可能性があります。
だから、単に「見た目を変える」ではなく、「ユーザーの回遊や事業への影響をどう検証するか」まで含めて進める必要がありました。
企画の初動は早く。選択肢は広く出す
——最初はどのように検討を進めたのでしょうか?
伊藤:
最初に考えたのは、UIをどう変えるかではなく、「この改修で何を実現したいのか」です。
10年以上大きく変わっていないUIだからこそ、「なぜ今変えるのか」を整理することが重要でした。
そのうえで、相談を受けてから数日以内に、背景や他社事例、UI案と、それぞれのメリット・デメリットを整理し、複数の選択肢として提案しました。初期段階では、開発のしやすさだけで選択肢を狭めず、まずは「ユーザーにとって本当に良い形」を考えることを大切にしています。
齋藤:
選択肢を出し切ることは大事ですよね。
あとから「こういう案もあったのでは」となると、議論が戻ってしまうことがあります。最初に複数案と、それぞれの良い点・懸念点を整理しておくことで、関係者が判断しやすくなります。
伊藤:
そうですね。
今回も、既存のタイル型に近い案、少し冒険する案、より大きく役割を変える案などを用意しました。
サービスパネル単体ではなく、DMMの入口である総合トップとして、どんな役割を果たすべきなのか。
同じUIでも、「サービスを全部見せたい」のか、「ユーザーが目的のサービスを見つけやすくしたい」のかで設計は変わります。
その中で、DMMの総合トップは一般的なECサイトというより、複数サービスへの入口となるポータルサイトに近い。
だから、参考にする事例もECだけではなく、ポータル型のサイトを見るべきだと考えました。
ただUIを提案するのではなく、「なぜこのUIなのか」を説明できる状態にする。
それが、PdMとして最初にやるべきことだったと思います。

PdMは方向性をつくり、PjMは実現までの道筋を整える
——齋藤さんは、PjMとしてどのタイミングから入ったのでしょうか?
齋藤:
大きな方向性が決まった後、デザインや開発に向けて具体化していくタイミングから入りました。
伊藤さんが企画やUIの方向性を整理し、ある程度の方針が決まる。その後、デザインを詰め、開発チームに見積もりを依頼し、どのスケジュールで進められるかを確認していく。そこからはPjMとして、進行管理や関係者調整を担当しました。
伊藤:
PdMの役割は、「目的を言語化し、「なぜこのUIなのか」を説明できる状態をつくり、関係者が判断できる材料を素早く整理することです。
一方で、実際にリリースまで持っていくには、開発、QA、データ分析、デザインレビューなど、いろいろな工程があります。
そこをPjMが整理してくれることで、プロジェクトとして前に進んでいく感覚がありました。
齋藤:
PjMとしては、決まったものをただスケジュールに落とすだけではありません。
たとえば、リリース直前に細かいデザイン修正の相談が来ることもあります。
そのときに、「今入れるべき修正なのか」「影響範囲は把握できているのか」「品質リスクはないか」を見て判断する必要があります。
小さな修正に見えても、総合トップでは影響範囲が大きい。だからこそ、やる判断だけでなく、あえて“今は見送る”判断も必要になります。

UIを変えるだけではなく、運用のルールも変わる
——開発面で難しかったことはありましたか?
齋藤:
技術的にものすごく難しい、というよりは、UIが変わることで周辺のルールも変わるところが難しかったです。
たとえば、これまでのサービスパネルではサービス名をある程度長く表示できていたものが、横並びのUIになると同じようには表示できません。文字数や見せ方の制約が変わるんです。
つまり、単なるデザイン変更ではなく、「サービス名をどう表記するか」「どこまで短縮できるか」「今後サービスが増えたときにどう運用するか」といったレギュレーションも決める必要がありました。
伊藤:
UIは見た目だけではなく、運用とセットなんですよね。
DMMのようにサービス数が多いと、今あるものだけをきれいに並べても不十分です。今後サービスが増えたときにも破綻しないか、更新しやすいか、ユーザーが直感的に使えるか。そこまで考える必要があります。
齋藤:
細かい工夫でいうと、横スクロールできることがユーザーに伝わるように、あえて一部が見切れるように設計した部分もあります。完全に収まってしまうと、横に続きがあることに気づきにくいので。
そういう小さなUIの工夫も、実際に使われるかどうかに関わってくると思います。
ABテストで見えた、単純な勝ち負けではない結果
——ABテストでは、どのような結果が出たのでしょうか?
齋藤:
今回のABテストでは、旧UIと新UIを比較し、サービスパネル単体ではなく、総合トップ全体の主要指標にどのような影響があるかを検証しました。単にサービスパネルだけのクリック数を見るのではなく、総合トップ全体としてプラスかどうかを評価しました。
結果として、総合トップ全体としてはプラスの影響が確認できました。
一方で、すべての指標が一律に改善したわけではありません。サービスパネル単体では、クリック数やCTRが低下していました。

伊藤:
そこがこのプロジェクトの面白いところでした。
サービスパネルを小さくしたり、位置を変えたりしたことで、当然、サービスパネル自体のクリックは減る部分があります。一方で、そのぶんメインコンテンツやグローバルナビからの送客が増えました。
つまり、サービスパネルだけを見ると課題がある。でも、総合トップ全体で見るとプラスの影響が出ている。
この結果をどう解釈するかが重要でした。
齋藤:
数字は出ますが、数字だけで自動的に意思決定できるわけではありません。
サービスパネルの目的は、全サービスへの導線を網羅的に提供することです。一方で、総合トップ全体としては収益貢献も重要です。どちらの観点をどう見るのか。そこを関係者と確認しながら、本番公開に進む判断をしました。
伊藤:
ユーザーは「ここからしか行けない」と思っているわけではなく、分かりやすい導線があれば別の場所からでもちゃんと動いてくれる。
今回の結果から、それが見えたのは大きかったです。

早く動く。でも、合意形成も丁寧にやる
——今回のプロジェクトを通じて、学びになったことはありますか?
伊藤:
DMMのようにサービス数が多く、関係者も多い環境では、最終的にリリースするまでには合意形成の時間も必要です。
そこに時間がかかるのは、悪いことだけではありません。影響範囲が広いからこそ、関係者と会話し、検証し、納得感を持って進める必要があります。
ただ、そのプロセスをもっとスムーズにできる余地はあると思っています。アルファ室が関わることで、横断的な意思決定や推進をもっと前に進められるようにしたいです。
齋藤:
PjMとしては、少しの改修でも大きな売上影響につながることを、かなり実感したプロジェクトでした。
総合トップは、多くのユーザーが触れる場所です。だから、ボタンの位置や見せ方、ファーストビューの使い方といった小さな変更でも、数字として大きな差が出ることがあります。
その分、PjMには「ただ予定通り進める」だけではなく、変更の影響を見立てること、必要な検証を組み込むこと、リリース前後のリスクを考えることが求められると感じました。
小さく見える改修ほど、軽く扱わない。それが今回の一番大きな学びだったと思います。
応募を検討している方へ
——最後に、アルファ室に興味を持っている方へメッセージをお願いします。
齋藤:
アルファ室のプロジェクトは、単にタスクを進めるだけではありません。
今回のように、UI改修に見えても、実際にはデータ分析、デザイン、開発、リリース、運用、複数部署との調整が関わってきます。
PjMとしては、全体を見ながら、どこにリスクがあるのか、誰と何をすり合わせるべきかを考え続ける必要があります。
大変な部分もありますが、そのぶん、自分の仕事が大きなサービスに影響する実感を持てる環境だと思います。
伊藤:
アルファ室では、ふわっとした相談を、実際に動かせる形にしていくことが多いです。
「こういう課題がある」「何かできないか」という状態から、他社事例を調べ、DMMとしてどうあるべきかを考え、選択肢を出し、関係者が判断できる材料をつくる。
そこに面白さを感じる人には、合っていると思います。
正解が最初から決まっているわけではありません。だからこそ、自分で考え、データで確かめ、関係者と合意しながら前に進めていく。
PMやディレクターとして、そういう経験を積みたい方には、面白い環境だと思います。

※掲載内容は取材当時のものです。組織体制・所属・役職・サービス内容等は変更されている場合があります。
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