【 forget-me-not】
ある日、騎士ルドルフと恋人のベルタがドナウ川のほとりを歩いていました。
ベルタが岸辺に咲く美しい青い花を見つけ、ルドルフは彼女のためにその花を摘もうとします。
しかし、ルドルフは足を滑らせて急流の川に落ちてしまいました。
流されながらも、彼は摘んだ花を岸辺のベルタに向けて投げ、「僕を忘れないで(Vergiss-meinnicht)」と言い残して水底へ沈んでしまいました。
残されたベルタは、彼の言葉を胸に生涯その花を髪に飾り続けたといいます。

忘れられない人がいる。
もう戻らない過去だと分かっていても、今も心の奥底にその存在が残っています。
どれほど時が流れても、海へ行くと波打ち際に陽炎のようにその面影が浮かび上がり、
胸が締め付けられるような切なさに襲われることがあります。
恋というものは、本当に儚い。
けれど、私はその出会いに心から感謝しています。
彼女がいなかったら、私は哲学者の思考に触れることも、
経営学を学んで自分の世界を広げることもなかったでしょう。
誰かを深く想うことで開かれた新しい視点や知識は、今も私の中に確かに生き続けています。
『勿忘草(わすれなぐさ)』の伝説に登場する騎士のように、形ある関係は流されてしまったかもしれません。
けれど、彼女が私に残してくれた学びや感情は、消えることのない財産です。
今、恋愛で悩んでいる人へ。
無理に誰かを忘れようとしたり、痛む心を否定したりする必要はないと思います。
切なさや寂しさが消えなくても、
その出会いが自分にもたらしてくれた変化や成長に目を向けられたとき、
過去はただの傷ではなく、静かな感謝へと変わっていきます。
人を深く愛した経験は、間違いなくこれからのあなたを支える糧になるはずです。
人はときが経てば、忘れてしまうこともあります。
時間は戻りません。
しかし、ふとした瞬間に想い出すことがあります。
あなたにも忘れられない人がいますか。
煌びやかな過去が鮮明に、浮かび上がり、潮の香りが、運んでくる夏を私は今でも想い出します。

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