僕なりの『三匹の子ブタ』は……|||シン小説 no.108
それはそれは豪華なキャンプだった。
最新式のテント。
太陽光発電パネル。
衛星通信によるインターネット。
冷蔵冷凍設備には、豊富なドリンクに食材。
料理は言うまでもない。
そんな贅沢なキャンプ。
隣でも、同じようにキャンプをしてる人がいた。
テント。
モバイルバッテリー。
Wi-Fiルータ。
普通で考えたら、かなり贅沢なキャンプだ。
そこに、もうひとりあらわれた。
なんにも持っていない。
木や葉で、寝床をつくる。
どうやら山には詳しいらしく。
獣を狩り、どこからか水を汲んでくる。
まさに、山男。
三人は、互いに距離をとり、互いに干渉しない。
実は、三人は昔、同じ研究所で働いていた。
気候変動に関する研究。
意見が対立し、それぞれ、別の道を歩むこととなった。
それがなぜか、この山で邂逅を果たしてしまう。
理由は、単純だった。
あらゆるシミュレーションによって、この山の上でなら生き延びることができる。
三人とも、別のルートながら、この同じ答えにたどり着いた。
まずは、視察も兼ねて、と。
ところが、事態は一変する。
止まらない海面上昇。
そこに、大規模な地震。
そして、とんでもない津波。
ある意味、シミュレーション通り、山の下は水没してしまった。
通信方法を持つ二人は、なんとか助けを呼ぼうとした。
残念ながら、繫がらない。
肝心の衛星通信も、地上の設備がやられてしまっては、いくら衛星が生きていても意味をなさない。
地上を覆い尽くす大量の水。
蒸発した水は、雲となり、なかなか去ろうとしない。
太陽がなければ、太陽光パネルもただの板。
蓄電池も、モバイルバッテリーも、尽きた。
二人は、山男に頼るしか、道はなかった。
なにも持っていなかった山男にサバイバルを学び、生き延びる。
山男は、たまにいなくなる。
どこに行っているのかもわからない。
山男に、すべて委ねるしかないから詮索もしない。
そんな山男は、別の山にいた。
そこには、水力・風力・太陽光による発電。
年単位で自立可能な蓄電能力。
気候変動や放射能に対応可能な、地下シェルター。
地下水源の確保と浄水システム。
可能な限りの通信設備。
すべてが揃っていた。
シェルターの扉が開き、美しい女性が出迎える。
子供たちも走ってきた。
可愛らしい男の子と女の子。
大型の犬も、飼い主の帰宅を大喜び。
山男は、二人をシェルターに招いた。
二人は、驚きを隠せない。
山男は、言う。
「キミたちを警戒していた」
そんなこと当然だ。
気にしないでくれ。
二人は、感動と感謝を述べ続ける。
美しい妻に、かわいい子供たち、それを見守る犬。
歓迎の宴。
二人は、久しぶりの文明に酔いしれる。
堅固なシェルター、調整された室温。
整えられたベッド。
いつしか、深い深い眠りについていた。
山男は、二人を別の部屋へ移動する。
二人は、起きる気配がない。
無機質な部屋。
二人を、ステンレスの台のようなものの上に置く。
山男は、慣れた手つきで、二人を捌いていく。
そして、あの美しい妻が仕分けをする。
燃料、食糧、再利用、肥料。
ボックスには、それぞれ、そう書かれていた。
作業も終わり、山男……男は、子供たちの寝顔を見にいくことにした。
美しい妻が聞いた。
「このあとは、どうされます?」
「今日は、もう寝よう」
子供たちと、犬は、それぞれのベッドで寝ていた。
充電中の赤い表示が、薄暗い部屋で、妙に光ってみえる。
美しい妻も、自分の充電ベッドに戻っていった。


