見出し画像

辛実|||シン小説 no.096

私は、ついに『とんでもない歴史の真実』にたどり着いてしまった。

気がついたときには、もう取り憑かれていた。

最初は、他愛のないことから。

中学二年生の夏休みの自由研究。

とある歴史の謎を選んだ。

単純に、歴史が大好きだったから。

それが運の尽き。

それ以来、そればかり。

人生のすべてを捧げたと言ってもいい。

そのために、生き、そのために必要な道を歩んだ。

なんとか大学の研究室にとどまり、あの手この手で研究を続けた。

娯楽と言えば、コーヒーとタバコくらい。

何度もあきらめかけた。

殺されかけたことも、一度や二度ではない。

あきらめない。

あきらめたくない。

あきらめなくてよかった。

ついに、たどり着けた。

賽は投げられた。

発表は、大きな反響を呼んだ。

当然だ。

彼は、民衆のために犠牲となり。
そして、英雄となった。

そう信じられてきた。

二千年以上も。
世界中で、何十億人もの人々が。

生きる支え。
人生のすべて。

それくらい信じている人も少なくない。

世界中の人々が彼の誕生日を祝ったりもする。

彼をまったく知らない人たちまでもが。

そんな偉大な彼の偉業の数々。

伝えられてきた、数多のエピソード。

それが、まったく。
そう、まったく違った。

それを証明してしまった。

膨大な、それはそれは膨大な証拠を携えて。

さぁ、みんな!
すごいだろ?

どうだい?

その事実は!
その史実は!
まったくの嘘っぱちだったんだぜ。

あらゆる反響を呼んだ。

ありとあらゆる反響は、出尽くしたんじゃないかしら。

そして。

私の真実は、あらゆる教科書に残った。

私の居場所は、どこにも残らなかった。






いいなと思ったら応援しよう!