だれ🉐ファイナルカウントダウン|||シン小説 no.080
営業後。
静寂の厨房。
営業中の喧騒が嘘のようだ。
突然、ピーッ!という音が鳴り響く。
シェフのスマホだ。
タイマー?
カウントダウンが始まっている。
残り三十秒と表示されていた。
なんだ?
なんのタイマーだ?
三十秒って、なんだよ?
厨房を見まわす。
なにひとつ、調理しているものは、ない。
あのシェフが、なんの目的もなく、タイマーを設定するわけがない。
なんだ?
なんなんだ?
仕込みか?
オーブンを、開けてみる。
冷蔵庫を、冷凍庫を、ガスレンジを。
タイマーが必要そうなものは、なにも入っていない。
あと、十秒。
消し忘れだよね?
設定したまま、忘れたんだよね?
そうだよね?
私は、あきらめて、シェフの方をみた。
「ねぇ、シェフ。なんのタイマー?」
聞いても、答えてくれない。
ピーッ!
タイマーが、刻を告げる。
「時間です。Mさんに、プロポーズの電話をしてください」
ちょうど、日付が変わっていた。
Mとは、私のことだ。
そして、私の誕生日でもある。
「ねぇ、奥さんと別れてくれたの?」
聞いても、答えてくれない。
いや、もう答えられない。
私が、答えられなくしてしまっていた。




