御子柴家の掟
我が家には、細かい掟がそこそこある。
その中でも、いちばん"それっぽい"ものがこれだ。
――元旦に、お餅を食べてはいけない。
なぜ御子柴家がこうなったのか、理由はよくわからない。
ただ、調べてみると"元旦に餅を食べない"という決まりがある地域も実際に存在するらしい。
では、もし元旦に御子柴家の人間が餅を食べたらどうなるのか。
それは
「男の子が生まれなくなる」
御子柴家は代々、"男の子が生まれやすい家系"だったらしい。
わたしの父も、男二人・女一人の三兄妹である。
しかし、わたしは妹のいる二人姉妹
そんな父は、長いあいだ独身だった。
40歳を過ぎたあたりから
「もう結婚は一生無理だろう」
と悟り、元旦にもかかわらず、大好きな餅を好きなだけ食べていたらしい。
が、45歳で結婚。
余談だが、わたしの父と母は20歳差である。
お腹にいるとき、わたしは"男の子"だと言われていたらしい。
名前も決まっていた。
"御子柴 介人(かいと)"
これが、男の子として生まれていた場合のわたしの名前である。
この話を聞いたとき、わたしがまず思ったのは
「名前、線すぎやしないか?」
だった。
しかも、フルネームをひらがなで書くと
みこしば かいと
となり、名前の中に"ばか"が含まれてしまう。
わたしは小学生の頃、いじめられっ子だったので、この名前だったら間違いなく"ばかいと"と呼ばれていただろう。
黒羽快斗と一緒だね、なんて言っている場合ではない。
しかし、実際に生まれてきたのは女の子のわたしである。
一応言っておくが、それっぽいものは一切ついていないし、
身体つきも極めて女性的だ。
今まで生きてきて、
「女じゃなかったらぶん殴ってる(冗談)」
と言われるたびに、
「女に生まれてよかった!」
と、某女芸人のような台詞を言っている。
ちなみに、わたしがいないところで父と母はわたしのことを
「我が家の長男」
と呼んでいるらしい。
父が掟どおり、元旦にお餅を食べていなければ、わたしは本当に男の子として生まれていたのかもしれない。
そう考えると、男の子として生まれたわたしの人生もなかなか気になるところである。
