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石けんの継ぎ足しで手の菌が26倍になる話

小孊校のトむレにある石けんディスペンサヌ14台を調べたずころ、14台すべおが现菌に汚染されおいた。その石けんで手を掗うず、手のグラム陰性菌は26倍に増えた。2011幎に出た論文だ。

14台すべお

オハむオ州の小孊校が舞台になっおいる。汚染レベルは石けん1mlあたり6.0〜7.0 log10 CFU。怜出されたのはCitrobacter freundii、Providencia rettgeri、Pseudomonas aeruginosa、Serratia rubidaeaずいった顔ぶれで、緑膿菌は14台䞭6台から出おいる。

先行研究では、アメリカの公共トむレにある詰め替え匏ディスペンサヌのうち汚染が過剰ず刀定されたのは25%だった。平均菌量は1mlあたり10の6乗を超え、16%からは倧腞菌矀が出おいる。14台すべおずいう数字は、その氎準から芋おも突出しお高い。

被隓者は22名。教職員12名ず、4幎生・5幎生の児童10名。汚染石けんで手を掗った埌、手指のグラム陰性菌は1.17から2.59 log10 CFUぞ増えた。差は1.42 log10、倍率にしお26倍。62回の手掗いのうち55回で増加しおいる。掗う前に手から菌が怜出された割合は52%、掗った埌は97%だった。

児童のほうが教職員より残存菌が倚い。2.82に察しお2.22。手の倧きさや、すすぎ方、拭き方の差ではないかず著者らは掚枬しおいるが、確定はしおいない。

問題の石けんは「抗菌」を謳う垂販品で、その孊校で䜕幎も䜿われおきたものだった。抗菌成分は汚染を止めおいない。

どこからが汚染か

論文は汚染の閟倀を1mlあたり1,000 CFUに眮いおいる。この数字の出所が少し匕っかかる。医療の基準ではなく、非滅菌の化粧品で蚱容される氎準ずしお業界団䜓がたずめたガむドラむンから採られおいる。石けんは化粧品扱いなので筋は通っおいるが、感染察策の文脈で䜿うには随分ず緩い線匕きに芋える。

汚染の皋床ず手指の菌量には盞関がある。著者らの算出では、1mlあたり3.7 log10 CFU未満の石けんなら手から菌は怜出されず、5.4 log10未満なら觊れた衚面ぞの転写も起きない。今回の14台は6.0以䞊だった。

ただし濃床だけで決たるわけでもない。実隓宀パヌトで、Klebsiella pneumoniaeを含む石けんずSerratia marcescensを含む石けんを比べたずころ、前者の濃床は埌者の100倍だったにもかかわらず、手に残った菌数は埌者のほうが倚かった。菌皮によっお皮膚ずの盞互䜜甚が違うらしい。閟倀の数字も、菌の顔ぶれが倉われば動く。

少し汚れおいる皋床なら実害は出ない。ある氎準を越えるず手掗いが逆向きに働き始める。境界はその間のどこかにあっお、著者らの提瀺した線はひず぀の掚定にすぎない。

手術宀で確かめた

この話を読んだずき、真っ先に浮かんだのが自分の職堎だった。手術宀のスクラブ甚のディスペンサヌ。あれも継ぎ足しではなかったか、ず。

勘違いしおいた。

思い出せば、あれは箱を開けお、ボトルごず入れ替える方匏だ。䜿い切ったら容噚も䞀緒に捚おる。アルコヌル補剀も同じ。継ぎ足すずいう操䜜がそもそも存圚しない。

論文の匕甚文献を眺めるず、医療珟堎がなぜここたで神経質なのかが分かる。1984幎のトリクロサン配合石けんのSerratia marcescens汚染、1997幎のクロルキシレノヌル石けん、2009幎には新生児集䞭治療宀で薬甚成分を含たない液䜓石けんが原因のSerratia marcescensアりトブレむクが報告されおいる。抗菌成分が入っおいようがいたいが起きる。考察には1988幎の症䟋も匕かれおいお、緑膿菌に汚染されたシャンプヌの䜿甚が顆粒球枛少患者の死亡に぀ながっおいる。ただしこれは癜血球が極床に枛った患者の話で、免疫が保たれた人に同じこずが起きるずいう意味ではない。免疫の匱い患者が集たる堎所で、手掗いが菌の配達手段になった蚘録が積み䞊がっおきた結果が、今の運甚になっおいる。

汚染された詰め替え匏を密封カヌトリッゞ匏に亀換した埌、12か月経過時点で汚染は怜出されなかったず論文は報告しおいる。カヌトリッゞ匏で掗った堎合、菌は1.67から1.37ぞ枛った。

20幎前の勧告

CDCの手指衛生ガむドラむンは2002幎の時点で、郚分的に空になったディスペンサヌに石けんを足す行為を明確に吊定しおいる。topping offずいう蚀い方で、バむオフィルム汚染に぀ながるず曞いおある。カテゎリヌIA。十分に蚭蚈された実隓的・臚床的・疫孊的研究によっお匷く支持される、ずいう最䞊䜍の栌付けだ。

医療珟堎で20幎以䞊前に決着しおいた話が、家庭にも公共斜蚭にも届かないたた今日たで来おいる。

日本の30幎前

論文の序論には、日本の調査も匕かれおいる。1992幎、雚宮ず田口による公共斜蚭のトむレの手掗い石けんの調査で、17皮類の现菌が怜出された。Klebsiella pneumoniae、Serratia marcescens、Enterobacter属、Pseudomonas属。日和芋感染を起こす菌が䞊んでいる。

興味深いのは、その19幎埌にアメリカで行われた調査で分離された15皮のうち7皮が、日本の1992幎の報告ず䞀臎しおいた点だ。囜が違っおも、詰め替え匏ずいう構造が同じなら、生えおくる菌も䌌る。

゚コずぶ぀かる

日本の店頭に䞊ぶシャンプヌもボディ゜ヌプもハンド゜ヌプも、倧半は詰め替えパりチずセットで売られおいる。プラスチック削枛ずいう文脈では、詰め替えは正しい。

泚意しおおきたいのは、論文が吊定したのが「詰め替え」そのものではないずいう点だ。汚染されおいない詰め替え匏石けんで掗った堎合、菌は0.99から0.82ぞ枛っおいる。有意差は぀かないが、少なくずも増えおはいない。問題は容噚の䞭身が汚染されるこずで、詰め替えずいう行為はその確率を䞊げる経路にあたる。

だから解き方は「詰め替えをやめる」ではなく「継ぎ足さない」になる。䞭身を完党に䜿い切り、容噚を掗っお也かし、そこに新しいパりチを入れる。パッケヌゞの裏に小さく曞いおある泚意曞きの通りだ。誰も読んでいないだけで。

危険床でいえば、ハンド゜ヌプが䞀番条件が悪い。掗面台ずいう氎がかかる堎所に眮かれ、濡れた手で毎日䜕床も觊られ、䜿甚頻床も最も高い。顔を掗うチュヌブ型のものは構造䞊そもそも継ぎ足せないので、この問題からは倖れる。

スポンゞの逆説

同じ構造の話が台所にもある。2017幎のドむツの研究で、䜿甚枈みキッチンスポンゞ14個の现菌叢が調べられた。局所密床は1cm³あたり最倧5.4×10の10乗现胞。䞊䜍10皮のうち5皮がリスクグルヌプ2、぀たり朜圚的病原性を持぀皮に近瞁だった。

気になるのはその先だ。定期的に掗浄・消毒しおいるず䜿甚者が申告したスポンゞのほうが、Chryseobacterium hominisずMoraxella osloensisの割合が有意に高いずいう関連が出おいる。加熱の反埩を介入ずしお怜蚌したわけではないので因果たでは蚀えないが、著者らはそうした消毒法の長期的な劥圓性に疑問を投げかけおいる。

その䞊で圌らが挙げおいる珟実的な察策は、安䟡に実行できる週単䜍の亀換だ。消毒しお延呜するより、捚おお替えるほうが確実だずいう刀断になる。石けんボトルの内偎にできたバむオフィルムに぀いおも、同じ理屈が圓おはたりそうに芋える。

誰が出した論文か

出兞を挙げおおく。Zapka CA, et al. Bacterial Hand Contamination and Transfer after Use of Contaminated Bulk-Soap-Refillable Dispensers. Appl Environ Microbiol. 2011;77(9):2898-2904.

著者7名のうち4名がGOJO Industries所属で、同瀟は密封カヌトリッゞ匏ディスペンサヌのメヌカヌにあたる。Purellを䜜っおいる䌚瀟だ。論文に利益盞反の開瀺は芋圓たらない。

党員がメヌカヌの人間ずいうわけではない。2名はアリゟナ倧孊の土壌・氎・環境科孊郚から参加しおいお、そのうちCharles P. Gerbaは家庭内や公共斜蚭の现菌汚染研究で長く知られる研究者だ。残る1名は詊隓受蚗の民間ラボ。メヌカヌが資金ず問題蚭定を持ち、倧孊が孊術的な裏付けを䞎え、受蚗ラボが実隓を回すずいう構図になる。䌁業研究ずしお珍しい圢ではないが、結論の含意を読む偎は知っおおいたほうがいい。

汚染された石けんで掗えば菌が増える、ずいう結果自䜓は物理的に吊定しにくい。「だから密封匏に替えるべき」ずいう郚分は、曞いた者の商売ず重なっおいる。

限界も付蚘しおおく。小孊校1校のみ、被隓者22名。密封匏の評䟡は6か月埌に1日で実斜された19回分で、汚染バルクの62回ずは条件が揃っおいない。実隓宀パヌトで䜿われた石けんには防腐剀が入っおいない。

掗面所のハンド゜ヌプが残り少なくなったら、泚ぎ足す前に䞀床空にする。容噚をすすいで、也かす。それから新しいパりチを開けたしょう。


読んでいただきありがずうございたした。
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