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わからないものに人は金を払う〜詐欺カタログ2026〜

合同会社クリアースカイ。京都の会社だ。IPFSという分散型ストレージの「サーバーの所有権」を売っていた。買えば第三者にレンタルして運用し、3カ月で10%の利回りをつけて買い戻す。そういう触れ込みだった。

約5000人が、約250億円を出した。

2026年4月7日、債権者から京都地裁に破産を申し立てられた。申立時点で確認された債権者は205名、28億円あまり。だが弁護団は、5000人・250億円規模に膨らむとみている。4月14日には消費者庁への告発。勧誘を担った代理店への責任追及も動き出した。連絡は2月中旬から取れない。

私が引っかかったのは、被害額ではない。「IPFSサーバーの所有権」を、出資した5000人のうち何人が説明できたのか。分散型ファイルシステム。Web3.0。改ざんを防ぐ次世代技術。並んだ単語のどれ一つ、普通の生活者には中身を検証できない。

検証できないものに、250億円が集まった。

これは事故ではない。設計だ。


わからなさは武器になる

理解できないものに出会うと、人は二つに分かれる。わかるまで調べるか、わかる人に判断を預けるか。詐欺は後者を選ばせるように作られている。

壁が高いほど、「自分にはわからないが、専門家が、著名人が、警察が認めているなら大丈夫だろう」へ飛ぶ。クリアースカイは警察とのコラボめいた演出をし、アスリートを広告塔に立てた。難しさそのものが、権威への委任を呼ぶ。難解であればあるほど「それだけ高度で儲かる仕組みなのだろう」という倒錯が生まれる。

わからなさは神秘になる。神秘は検証を放棄させる。

豊田商事という事件があった。1985年。「金の預り証」を売りつけた。預り証の先に金はない。差し押さえに行った被害者が見たのは、ガラスケースのハリボテだった。被害者は数万人、被害総額は約2000億円。当時、詐欺としては最大規模だ。

その手口の記録に、こうある。最初に少しだけ買わせ、後から次々に買い増しさせる。いけると見たら通帳も印鑑も預かり、根こそぎ巻き上げる。

クリアースカイの「IPFSサーバー」は、その金のハリボテが情報に置き換わっただけ。構造は40年前とまったく同じだ。 衣装が変わった。中身は変わっていない。むしろ規模は、当時を超える方向へ動いている。

わかった気にさせる道

神秘性だけが思考を止めるわけではない。逆の手もある。

みんなで大家さん。不動産。誰でも「わかった気」になれる。土地、建物、家賃。目に見えて、手で触れられそうな安心がある。利回りは7%。これが絶妙だった。

40%なら誰でも怪しむ。1%なら誰も乗らない。7%は「銀行よりずっといい、でも不動産なら出てもおかしくない」帯に収まる。一攫千金を煽る数字は強欲な人を呼ぶ。7%が呼ぶのは、堅実に備えたい人だ。

クリアースカイは「わからないから預けさせた」。みんなで大家さんは「わかった気にさせて疑わせなかった」。入口は正反対。たどり着く先は同じ。検証の放棄。

わからなくても、わかったつもりでも、人は考えるのをやめる。

騙されたのは欲深いからではない

ここを履き違えると、本質を見誤る。

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