『夏のアレーナとヴェローナの悲劇 “ロメオとジュリエッタ”の街』
気象庁が今年から気温が40度を超える日を正式に『酷暑日』と呼ぶと発表したのは5月でしたが、この夏はすでに5日連続で観測されたと目にしました。欧州も暑い夏が続いていますが、ここ数日は朝晩が少し涼しくなりました。
屋外劇場といえば、夏のヨーロッパを思い浮かべる人も多いと思いますが、その代表格はやはりヴェローナにある 『アレーナ/Arena』 でしょうか。 世界中の人びとが足を運ぶこのアレーナは、古代ローマ時代に建てられた 『円形闘技場/Anfiteatro Romano』です。 現代では、夏の期間に上演されるオペラやバレエ、クラシックコンサートなどを観るために、世界中から観客が訪れます。



ところで、ヴェローナの地図をよく見ると、アディジェ川沿いにもうひとつ 『ローマ劇場/Teatro Romano di Verona』 があります。こちらもローマ時代に建てられた建造物ですが、当時から劇場として使われていました。
『ヴェローナ市立考古学博物館/Museo Archeologico al Teatro Romano - Comune di Verona』が併設されていています。ガラス製の発掘品が多く展示されており、筆者は興味深く見て回ることができました。


ここで少し「あれ?」と思った方もいるかもしれませんが、 アレーナが古代ローマ時代の円形闘技場なら、どうしてローマにある 『コロッセオ/Colosseo』 は『アレーナ』と呼ばれないのでしょうか。 ご安心ください、イタリア語の 『コロッソ/Colosso』 は『巨大なもの』を意味する言葉で、ネロ皇帝/Imperatore romano Neroneの巨大像の近くにあった闘技場であったため、そこから 『コロッセオ/Colosseo』と呼ばれるようになりました。
話をアレーナに戻します。 ここで上演される作品はオペラ、バレエ、クラシックコンサートなどが中心ですが、ヴェローナといえば悲劇の代名詞、シェイクスピアの 『ロミオとジュリエット』 を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
ウィリアム・シェイクスピアがこの作品を書いたのは16世紀ですが、物語の舞台はヴェローナで、実在した二つの名家 モンテッキ家 と キャピュレット家、 互いに憎しみ合う名家の子ども同士が恋に落ち、悲しい結末を迎える物語です。
この作品が世界中で愛される理由のひとつは、原型となる物語がすでに存在していたことです。 その原型を描いたのが ルイジ・ダ・ポルト(Luigi da Porto)、さらにその前には、ナポリの マスッチョ・サレルニターノ(Masuccio Salernitano) の小説集にも、原型となるエピソードが登場すると言われています。
さまざまな人が書きたくなるほど魅力的で、現代でも人びとを引きつけるストーリーは、 間違いなく、世界的な名作と言えるでしょう。
この作品はオペラ、バレエ、ドラマ、映画、ミュージカルなど、さまざまな形で触れることができますが、ヴェローナには今も 『ジュリエッタの家』 が残り、世界中の人が訪れる観光スポットになっています。



ちなみに日本語では 『ロミオとジュリエット』 と呼ばれていますが、イタリア語では 『ロメオ(Romeo)とジュリエッタ(Giulietta)』 です。
イタリア語では Giulia(ジュリア) と Giulietta(ジュリエッタ) は別の名前で、英語ではどちらも Juliet になってしまうというからくりです。 イタリア語の –etta は小辞で、『小さい、かわいらしい、親しみを込めた』というニュアンスがあり、愛称としても使われますが、名前としても存在しています。
さて、ジュリエッタの家での見どころといえば、やはり中庭に面した バルコニー がナンバーワンでしょう。 内部には、筆者も記憶している半世紀以上前の映画『ロミオとジュリエット』の撮影に使われたベッドが展示されています。 この映画でヒロインを演じた オリヴィア・ハッセー(Olivia Hussey) は日本でも親しまれ、日本との縁もあった俳優ですね。
悲劇の物語ではありますが、作品の世界に浸り、涙を流すことで心が解放されるからなのか、今も愛され続ける作品であることは間違いなさそうです。
夏の風物詩のようなアレーナに足を運んで作品を観るのも素敵ですが、この暑さでは少し厳しいかもしれません。 涼しい自宅で書籍や映画を通して作品に触れるのも、新しい夏の過ごし方と言えるでしょうか。
おまけ
『パンドーロ/Pandoro』はヴェローナ発祥の伝統的なクリスマス菓子です。ふんわりとした黄金色の生地が特徴で、星形の型で焼かれ、食べる前に粉砂糖をまぶします。そのメーカーである『Bauli』のお膝元には、街歩きの休憩にぴったりのお店があります。ここでは一年を通して楽しめる『Minuto Bauli』(パンドーロと同じ生地を使って焼き上げたお菓子)が味わえます。
好みのフィリングやトッピングを自由選んでカスタマイズできます。夏にはジェラートを選ぶのも楽しいです。


