え?東南アジアからの発熱?デング熱ってどうするの? の巻
これからの季節、東南アジアではデング熱が増えてきます。
日本でデング熱といえば、2014年の代々木公園。もう12年前です。妖怪ウォッチが流行って、「ありまぁす」と言っていた年。
でもデング熱はまだありまぁす!
国内で大きな騒ぎを聞かなくなったのですが、日本でも相変わらず輸入例は年間200例くらい報告されてますし。というか2024年頃は東南アジアで大爆発してましたし。
とはいえ、「デング熱は蚊が媒介します」「発熱や発疹が出ます」という総説を読んでも、現場ではあまり役に立たないんですよね。知っとるわそんなもん痴れ者が!と思いますよね。
知りたいのは、
「東南アジア帰りの発熱患者が来ちゃったよ。デングて何を調べるの?」
「入院しちゃったけど、何を見ていればいいの?」
「感染対策は?陰圧室に入れるの?」
という話ですよね。
蚊の種類とか吸血時に足を上げて吸うとかどうでもいいですもんね。
なので今回、これだけ知っておけば何とかなる!
というところだけお話しします。
☆診断:保健所に聞くがよろし
身も蓋もない話です。でも結局そのとおり。
デング熱の検査は「NS-1抗原」、「IgM/IgG」、「PCR」がありますが、世界的にはNS-1抗原てやつで迅速検査します。血液1滴垂らせばすぐわかります。インフルエンザみたいな感じ。
問題は「そんなもん常備してないよ」ですよね。
だから、保健所に聞いて、お奉行様の沙汰を仰ぐのが一番。
でも、そのためにまず確認するのは、
「どこへ行ったか?どの国?」
「いつ帰ってきたか?何日間行ってたの?」
「熱が出たのは何月何日か?」
です。
特に大事なのが発症日。
デング熱の潜伏期は4-10日程度。つまり1泊2日のベトナム旅行で帰国時の発熱では起こらんのです。逆に4泊5日で帰国してから6日後の発熱であればあり得る。発症した時の1週間前に現地にいたかどうか。
帰ってきて数日経っていたからと行って刀を納めよとはならないです。
ちなみに
PCRやNS1抗原・・・発症直後から7日以内は陽性になる。
IgM・・・発症4~5日目くらいから検出されやすくなる
IgG・・・発症7日目以降くらいで検出され始める
って思ってください。
検査キットが無いわけだからどうしようもない。
だったら疑ったらすぐに保健所へ相談した方がいいんですよ。
生兵法は怪我のもと。
保健所のお奉行様から聞かれることだけ患者さんに聞いておけばいいんです。
あ、でも東南アジア帰りの発熱を全部デング熱にしてはいけません。
デングにあらずんば熱にあらず。なんて琵琶法師もギブソンのレスポール持つレベルの超解釈。
そいや平清盛はマラリアで亡くなったという逸話もありますよね。
東南アジア地域にもよりますが、マラリア、腸チフス、チクングニア熱、レプトスピラ症などもあるし、特にマラリア流行地から帰国した発熱患者では、マラリアは絶対忘れないこと。
デング熱を見つけて勝鬨を上げたところを、背後から熱帯熱マラリアに斬られたら片腹痛いわけです。
採血は血算、ヘマトクリット、肝腎機能、電解質などを確認します。
発熱ガンガンなのにCRPが全く上がっていない。
もうコレだけ見たらまずはデングだろと疑ってください。
レントゲンも撮るんだけど発症直後は特に何もないことが多いね。
☆治療:熱が下がったところで油断しない
デング熱には特効薬がなく、基本は補液と対症療法です。
ここで一番知っておきたいのは、
熱が下がったから治った、とは限らない
ということです。
まずは臨床経過の図を

もうこの通り、だれもが通る道。
大事なのは一回熱が下がってからが勝負ていうこと。
ここを理解してほしいんですよね。
発症1週間前後で熱下がります。でもコレがウイルスの謀。
なのに白血球も血小板もめっちゃ低い。
この時点では治ったのかと悪くなったのかがわからない。
なんでかというと、デング熱では、発熱が落ち着くころに血管透過性が亢進し、血漿漏出、ショック、出血などを起こすことがあります。
安心させといて後ろから斬る、武士の風上にも置けないやつ。
で、そういう時に発症するのは、
強い腹痛
繰り返す嘔吐
粘膜出血
意識状態
血圧、脈拍、尿量
胸水や腹水
血小板とヘマトクリットの推移
です。
「殿、血小板が5万にございます!」ってパニック値報告をしますが、世界的には治療はヘマトクリットが上昇していないかで確認します。
お風呂の栓が抜けた状態がデング熱です、水が抜けるより早く水を入れるけど、栓がされた瞬間にその水が戻ってくる、そのタイミングで一気に心不全になるのですよね。
だから血算の採血は毎日しますよ。
3日に1回じゃ遅いですよ。
あと、ロキソニンは禁止です。今日は鞘に納めてください。
で、無事に治りかける時期にWhite islands in the red seaという全身後半で白く抜ける点がある。という皮疹が出るわけです。

☆感染対策:陰圧室はいらない
デング熱は空気感染ではありません。
陰圧室もN95もいりません。基本は標準予防策です。
では、何をするのか。
患者を蚊に刺させない。
コレが大事。
ウイルス血症のある患者を蚊が刺し、その蚊が別の人を刺せば感染が広がる可能性があります。長袖、虫よけ、蚊帳、網戸、病室内の蚊の駆除などを行います。
患者を人から隔離するのではなく、蚊から隔離する。
蚊は面会時間を守りません。入館証もつけません。
デングのパスに蚊取り線香って書いといてください(マジで)
蚊は見つけ次第、刀の錆にしてください。
☆お土産☆
東南アジアからの発熱者はデングとマラリアはとにかく疑う
わからないんだからとりあえず保健所に聞く、なんとなく帰さない
デングは発症数日後が勝負。良くなったのか悪くなっていくのか
とにかく患者さんを蚊に刺させない。拡げない。
