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【番外編】私がブラック企業で見たもの1社目〜職場内不倫による堕胎を自慢する先輩〜



※ショッキングな内容のため苦手な方はご注意ください。



前回の記事では、私がなぜ働くことを怖いと思うようになったのかを書いた。あの記事では、「社会が怖くなった理由」を書くことが目的だった。だから、職場で実際に何が起きていたのかについては、あえて細かくは書かなかった。

そこで今回は、番外編として、私が実際に経験した出来事を書いてみようと思う。

身元が特定されないよう、一部ぼかしている部分はある。それでも、書く内容はすべて私が経験した事実だ。

少し長くなる。

でも、もし今、「自分の職場はおかしいのかもしれない」と感じながら働いている人がいたら、最後まで読んでもらえたら嬉しい。

新卒の私は、「仕事を頑張れば報われる」と信じていた。

私は大学で学んだ生命倫理学から福祉業界に興味を持ち、有料老人ホームへ就職した。

「この仕事で誰かの役に立ちたい」

そんな、ごく普通の新卒だった。もちろん、仕事が楽だとは思っていなかった。むしろとんでもなく激務だった。止まっている暇など無い。トイレに行く時間も水を飲む時間も無い。

そしてもちろん夜勤もある。身体も使う。責任も重い。大勢の生命をあずかる仕事だ。

それでも、「好きな仕事だから頑張ろう」と思っていた。

実際、仕事そのものは大好きだった。だから私は、その会社で五年間も働けたのだと思う。

仕事が嫌で辞めたかったわけではない。人が怖くなったのだ。


最初に仲良くなった先輩

入社してすぐ、一人の先輩が声を掛けてくれた。右も左も分からない私に仕事を教えてくれて、ご飯にも連れて行ってくれた。私は、その人を信頼していた。

だから、後から知った事実は本当に衝撃だった。

その先輩は、同じ職場の既婚男性と不倫をしていた。最初は信じられなかった。でも、それは噂ではなかった。本人の口から言ってきたのだ。それも自慢げに。私はそれが信じられなくてただただ放心してしまった。

夜勤が一緒になると、二人は決まって姿を消した。

利用者さんが寝静まった深夜。

二人で空き部屋に入り鍵をかける。そして何時間も戻ってこない。そこで何が行われるかなんて誰に教えられなくとも分かっていた。

もちろん、その間、フロアは私一人だった。何かあれば、新人の私が対応するしかない。利用者さんの安全より、自分たちの時間を優先している。

新卒一年目だった私は、何も言えなかった。

その女性の先輩から「今日もありがとうね。〇〇ちゃん(私)口硬いから助かるわ〜」

そう笑顔で言われるのをただただ引き攣った愛想笑いで誤魔化すことしかできなかった。



「またおろした!」

ある日、その先輩は私に笑いながら言った。

「先週またおろした!」

私は一瞬、意味が分からなかった。「え?」と聞き返すと、「あー、妊娠してたから中絶した!」と、まるで美容院へ行ってきたというくらいの軽い口調で話し始めた。

その後も、その話は続いた。私が知っているだけでも四回。そのたびに、笑いながら報告された。私は何と言えばいいのか分からなかった。ただ、同じように、引き攣った愛想笑いで「そうなんですね」と返すしかなかった。

私は、不倫をしたことそのものよりも、その出来事を笑って話せることに強い衝撃を受けた。人の命や、誰かを裏切ることに対する感覚が、私とはあまりにも違っていた。



一番怖かったのは、誰も驚いていなかったこと

でも、本当に怖かったのはそこではなかった。周りのみんなも知っていたことだった。同僚も。先輩も。管理職も。誰も驚かなかった。注意する人もいなかった。

むしろ、「またか。笑」
そんな空気だった。

「あれはあの人たちだから」

「昔からだし」

そんなふうに流されていた。私は混乱した。

私がおかしいのだろうか。これくらい、社会では普通なのだろうか。

学生だった私は、「社会人になればもっと理性的な大人の世界なんだ」と勝手に信じていた。でも、目の前にあったのは、私が想像していた「大人」ではなかった。価値観が音を立てて崩れていくような感覚だった。

それでも私は、「新人だから分からないだけなんだ」と自分に言い聞かせていた。



「これって、おかしくないですか?」

私は耐えられなくなった。利用者さんを置いて持ち場を離れること。新人に仕事を押しつけること。それを誰も止めないこと。

何より、「みんな知っているのに、誰も何も言わない」ことが苦しかった。私は、自分一人で抱え込むことができなかった。
そこで、唯一信頼していた別の先輩に相談した。その先輩は夜勤に入っていなかったため、不倫の事実こそ知ってはいたが、夜勤中に不貞行為が行われていることや堕胎などの詳細については知らなかった。その先輩は、私の話を最後まで聞いてくれた。

そして激怒してくれた。

「ありえない。生命を何だと思ってるの?」

怒りに満ちたその言葉を聞いた瞬間、私は少しだけ安心した。

「ああ、やっぱり私の感覚は間違っていなかった。」そう思えたからだ。

その先輩はすぐに本社へ報告してくれた。私は、「これで少しは職場が良くなるかもしれない」と思った。でも、その期待はすぐに裏切られた。



守られたのは、正しい人ではなかった

不倫をしていた二人はその数日後には異動になった。ここだけ聞けば、「きちんと対応してもらえた」と思う人もいるかもしれない。確かに、本社の対応は迅速だった。

でも、実際に職場で起きたことは違った。

始まったのは、「誰が告発したのか」を探すことだった。

「あの人じゃない?」
「いや、違う」

そんな会話が、職場のあちこちで聞こえてきた。そして、告発した先輩は職場で孤立していった。

冷たくされる。陰口を言われる。空気のように扱われる。やがて、その先輩は辞めてしまった。

私は何もできなかった。自分の相談がきっかけだった。そのことが、ただ苦しかった。



「余計なことしてくれたよね」

やがて、私が相談したことも職場に知られた。直接名指しされたわけではない。でも分かった。私がいる前で、わざと聞こえるように言われる。

「余計なことしてくれたよね」
「異動なんて寂しい」
「面白い人たちだったのに」

その言葉は、全部私に向けられていた。私は何も言い返せなかった。

「私が間違っていたのだろうか。」

そんな考えまで頭をよぎるようになった。



送別会

不倫をしていた二人の送別会まで開かれた。職場をあげて。もちろん私は呼ばれなかった。行きたいとも思わなかった。

でも翌日から、送別会の話ばかりだった。

「昨日めっちゃ楽しかった!」
「やっぱりあの二人がいないと寂しいよね。」
「面白い人がいなくなっちゃった。」

その話を、私の前でする。偶然ではないと思った。私には、「あなたのせいで」という無言のメッセージに聞こえていた。




忘れられない一本の電話

その出来事のおよそ2年後。

私が出産した頃のことだった。夫の携帯電話が鳴った。相手は、その不倫をしていた先輩だった。夫も元々同じ職場で働いていたため、二人は顔見知りだった。

私は驚いた。夫は、当時のことを全部知っている。それなのに二人は長い時間話していた。ベランダに出て。聞こえないように。三時間近くも。

電話を切った夫に尋ねた。

「何の話してたん?」

夫は笑いながら言った。

「子育て頑張ってくださいって言ってた。笑」

私は言葉を失った。子どもが生まれてまだ一週間ほどだった。嬉しいはずの時期だった。

でも、その言葉を聞いた瞬間、何年も前の出来事が一気によみがえった。

最低でも四回、中絶したと笑いながら話していた人。夜勤中に利用者さんを放置していた人。

その人から「子育て頑張って」と言われることを、私はどう受け止めればよかったのだろう。

私は夫に怒りをぶつけてしまった。夫が悪いわけではない。でも、どうしても感情を抑えられなかった。

あの職場は、退職しても終わっていなかった。



あの五年間で失ったもの

私は五年間、その職場で働いた。仕事は好きだった。利用者さんも好きだった。だから辞めたくなかった。

でも、少しずつ失っていったものがある。

「正しいことをすれば報われる」

そんな当たり前だと思っていた価値観だった。

私は学生時代、
「困っている人がいたら助けよう」
「間違っていることは間違っていると言おう」
そう教えられてきた。

でも、社会に出て最初に学んだのは、その逆だった。

正しいことをした人が傷つくことがある。
声を上げた人が孤立することがある。
見て見ぬふりをした人の方が、うまく生きられることがある。

私はその現実を受け止めきれなかった。

今でも、あの時のことを思い出すと苦しくなる。

でも、今なら一つだけ分かる。

あの時感じた違和感は、間違っていなかった。

私がおかしかったわけではない。

あの環境が、あまりにも異常だったのだ。

そう思えるようになるまで、私は何年もかかった。




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望田のん|うつ病・回復の途中。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 スキ・コメント・フォロー、そしてチップでの応援は、すべて執筆の励みになっています。 チップは生活費に充てます☺ 「また読みたい」と思っていただけたら、とても嬉しいです✨️