魂を込めてブルースを歌うと悪魔が来る
感覚過敏で人がたくさんいるところが苦手な私にとって、「配信」の発達ほどありがたいものはない。
先日などは、家にいながら、カリフォルニアの砂漠で開催されているCoachellaを生配信で見ることが出来た。
映画は映画館で見なければ!と言う人もいるだろうけど、知的障害で躁病の長女と暮らす老障介護の身としては、隙間時間に自宅で映画を見ることが出来るだけでもありがたい。
長女がショートステイに行ってるときに、かねてから見たかった映画を見るのだが、心から楽しめているかといえば、障害者の母あるあるで、少し罪悪感がよぎる。
そんなこと考えないで、楽しくリフレッシュして、元気なお母さんでいればいいのだけど、長年の習性で心から楽しむことが出来ないのが悲しい。
先日見て圧倒されたのが、「罪人たち」。
久々に完成度の高い映画に出会えた。
死ぬ前に間に合ってよかったとさえ思ってしまった。
サミーは「ブルースを歌うと悪魔が来る。」と牧師の父親に止められたが、いとこであるシカゴ帰りのギャングの双子に誘われて、ジュークジョイントで、歌うところから始まる一晩の物語り。
チャーリー・バットンのギターを抱えて。
双子を演じるのは、マイケル・B・ジョーダンで、一人で二人の性格をしっかり演じ分けている。
双子の一人の元妻はフードゥで、料理を担当。
中国人夫婦は看板や食品担当。
大柄なコーンブレッドは用心棒。
わあ、コーンブレッド演じるオマー・ベンソン・ミラーはCSIマイアミのレギュラーだし。
そして開幕ダンスホール。
1930年代のミシシッピ州、人種隔離政策のジム・クロウ法の下で、白人は入れないダンスホール。
そこへ、チョクトー族の長老が追う、アイルランド移民のレミックたちがやってくる。
アイルランド人はずっと差別されてきた歴史があるが、移民としてアメリカへ来てからは黒人を差別する側になっているという複雑さ。
アイルランド移民の歌は白すぎるという理由でホールに入れてもらえない。
ホールの中は、魂のこもったサミーのブルースから始まって、昔も未来も東西もまじりあう不思議な空間となっている。
ブルース、ソウル、ファンク、ヒップホップと今昔の音楽が繰り広げられ、アフリカ、中国、いろいろな宗教のダンサーが所狭しと踊り狂い、その熱気でホールは燃えつくすかの如くとなる。
魂のこもった音楽には、悪魔をはじめ魑魅魍魎が集まり、アイルランド移民たちは実は吸血鬼で、ホールの外で数を増やしてきている。
ホラー映画と言えば、ホラーなのだが、私にはこれは現実の世界だと思えた。
差別される人々が魂を込めて音楽を奏でれば、世界の隅々に隠れていた、魑魅魍魎が地面の下から、わらわら、立ち上がってくる。
だから、心の底に響く音楽ってのは、用心しなくてはならない。
最後に、年を取ったサミーの役で登場した「バディ・ガイ」89歳のブルースは圧巻です。
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