日本に到来した中国の「詐欺の王様」
最近、特殊詐欺でお金を騙し取られた方のnoteを拝読しました。
筆者はこのnoteを読んで、とても既視感がありました。というのも、この詐欺は中国で有名な手法と同じなのです。今回は、日本と中国の詐欺の特徴から見えてくる、国際的な繋がりについて考察します。
タスク完了型リベート詐欺とは
この方が騙されたのは、中国でタスク完了型リベート詐欺(刷单返利诈骗)と呼ばれる手法です。この手法は中国で詐欺の王様(诈骗之王)と呼ばれ、2026年には中国の全詐欺被害の35%を超え、被害者数が最も多い詐欺の手口となりました。公安部のデータによると、2025年の被害総額は200億元(約4,800億円)を超えています。

中国のタスク完了型リベート詐欺の代表的な手口は以下の通りです。
簡単な金稼ぎで獲物を集める
「初期費用なし」
「時間自由」
「日給100〜300元、やればやるほど稼げる」
「1タスクごとに即精算」
こういった甘い文句で主婦や若者といった副業を探す人を惹きつけます。
最初は簡単なタスクで報酬を与える
試しに数回やってみると、すぐに報酬が口座に振り込まれてきます。
高額なタスクと資金の要求
そのうち高額なタスクが出現しますが
「保証金」
「システムチェック」
「本人確認」
などを理由に資金の投入を求められます。
詐欺ループの実行
資金の投入後は「タスクが未完了」「操作に異常があった」などの口実を作ってお金を返さず、被害者に追加資金を要求します。詐欺に遭ったと被害者が気づくまでお金をむしり続けるのです。
タスク完了型リベート詐欺の事例
大手SNSを騙った詐欺
タスク完了型リベート詐欺には、日本の事例と同じく有名企業を騙った詐欺も多く存在しています。その代表格が2023年に発生した、中国SNSの小紅書を騙った詐欺です。

2023年、複数の被害者が小紅書を名乗る偽アカウントからネット副業を紹介され、専用アプリに誘導されました。最初は小額のタスクで利益を受け取れましたが、大額の任務を実行した際に操作失敗とされ、資金が凍結。その後「追加注文で解凍→さらに資金を納付しないと出金できない」と次々と要求され、最も被害額が多い人は20万元(約480万円)をも騙し取られました。
同時期には小紅書に関わらず、有名プラットフォームを騙った副業の広告が大量に出現、多くの被害者が発生しました。手口は全て小紅書の事例と酷似しており、個人チャットから専用アプリに誘導、そこで金を詐取する流れでした。詐欺グループは同じアプリを名前を変えて使いまわしていたのです。
2026年現在、こうした詐欺は副業に関わらず、手を変え品を変えて行われています。
アダルトサイトからの誘導
例えばアダルトサイトのパターン。ここでは「様々なサービスを提供できる」と謳って専用アプリをダウンロードさせます。アプリをダウンロードすると、カスタマーサポートが「アカウント登録とタスクの完了がサービスの利用条件です」と説明。
さらに「タスクを完了すれば、美女の無料出張サービスが受けられるだけでなく、インストラクターの指導のもとで確実に稼げる」と誘惑してきます。被害者がインストラクターに従って送金し、タスクを進めてしまうと、財布の中身を詐欺グループにむしり取られることになります。

無料配布からの誘導
様々な大手企業になりすまし、特典配布や無料ギフトの名目でグループチャットへの参加や、専用アプリのダウンロードを要求するパターンもあります。最初は無料の簡単なタスクをやらせ、タイミングを見計らって送金によるタスク実行へと切り替えさせていくのです。

日本と中国の類似点と差異
ここまで紹介した中国の事例と比較すると、冒頭で引用した方の事例は非常によく似ていることが分かります。
有名企業を騙る
初期の餌(前払い報酬/少額報酬)
偽プラットフォーム
資金凍結→追加要求のループ
ここは日中の手法が一致しており、中国で行われている詐欺の手法が、そのまま日本でも展開されていることを強く示唆しています。
唯一、異なる点は中国で行われている詐欺のターゲットが一般大衆であるのに対して、日本ではインフルエンサーである点です。
おそらく、これには投資対効果を考えたターゲティングになっているのではないか、というのが筆者の考えです。中国で成熟した詐欺モデルは東南アジアに拠点を置く詐欺組織で各国向けにローカライズされているのではないでしょうか。
「特殊詐欺拠点で最新の詐欺手法が共有されており、各国ごとにローカライズされている」という仮定に基づくと、日本でインフルエンサーが狙われる理由も見えてきます。
報道や証言を見る限り、東南アジアの特殊詐欺拠点では、日本人オペレーターは全体から見れば少数派です。
日本のニュースでは、日本の若者がだまされて連れていかれた、という話になりがちです。でも、東南アジアの園区の従業員から見ると、日本人の割合は少ない。ひとつの園区あたり、多くても50人〜100人くらいでしょう。残りの数千人は中国人がほとんどです。
日本ではインフルエンサーが狙われる理由には、こうした人数制約を背景として、中国では大量生産型、日本では高単価案件へ最適化されているようにも見えます。これは犯罪組織の営業戦略の違いなのかもしれません。
中国人は無数にいるので、やはり無数に存在している主婦や学生がターゲットになります。その一方で日本語人材が限られる日本市場は少人数から大きく回収する方が合理的になります。だからインフルエンサーが狙われるのです。
広がりをみせるタスク完了型リベート詐欺
筆者は、現在は中国で成熟した詐欺モデルが、日本市場向けにローカライズされている段階だと考えています。実際に国民生活センターには最近、類似の被害報告が相次いでいます。
タスクをこなすと報酬が入る副業をした。さまざまな理由をつけてお金を請求されたが詐欺か
初期はターゲット選定型の詐欺モデルで成果を出し、今はより広いターゲットを引き寄せる広告型の詐欺モデルに進化しているのではないでしょうか。
いずれにしても、詐欺犯罪が国際化の様相を見せている以上、身を守るためには国際的な常識が必要となる時代になっているのかもしれません。
以下に、中国の国家反詐欺中心(国家詐欺対策センター)が提唱している10の「~はすべて詐欺」を紹介し、本稿の締めくくりとします。
覚えておこう!10の「〜はすべて詐欺」
資金を立て替えタスクをこなす副業は、すべて詐欺!
インサイダー情報・専門家の指導・ノーリスクで稼げる・高利回りを謳う投資・資産運用は、すべて詐欺!
無担保・審査なし・低金利・即日融資を謳うネット融資で送金を要求するものは、すべて詐欺!
ECサイトやを名乗り、返金・補償・交換を口実に、銀行口座番号を要求してくるものは、すべて詐欺!
警察・検察・裁判所などの機関を名乗り、犯罪への関与を口実に資金を振り込ませようとするものは、すべて詐欺!
上司・役員を名乗ってSNSの追加を申請し、ねぎらいや仕事の心配をした後、親族や知人の支援を口実に送金を要求してくるものは、すべて詐欺!
様々な口実で不審なリンクを送信し、銀行口座番号・各種パスワードを入力させようとするものは、すべて詐欺!
SNS経由で友達追加してグループチャットに招待し、リンクをクリックさせてアプリをダウンロードさせ、投資や返金を行わせようとするものは、すべて詐欺!
ネット副業や投資・資産運用などの名目で、宅配便や配車サービスを利用して現金や金を郵送・配送させようとするものは、すべて詐欺!
画面共有させ、資金口座の操作を誘導してくるものは、すべて詐欺!
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