教員だった私が、一番伝えたかったこと②
「テストの点数では見えないもの」
テストが終わると、多くのご家庭でこんな会話が交わされるのではないでしょうか。
「何点だった?」
「前より上がった?」
「平均点は?」
私も親になった今、その気持ちはよく分かります。
子どものことが心配だからこそ、点数が気になるのです。
でも、中学校で英語を教えていた頃、私がテストを返すたびに思っていたことがあります。
「この一枚の答案だけでは、その子の頑張りは分からない。」
そんな思いでした。
ある男の子がいました。
英語はあまり得意ではありません。
毎回、一生懸命勉強しているのですが、思うように点数が伸びませんでした。
ある定期テストでは、40点台。
本人は答案を受け取ると、少しうつむいて席へ戻っていきました。
「またダメだった…。」
そんな気持ちだったのでしょう。
でも、私はその子がテストまでの数週間、どんなふうに過ごしていたかを知っていました。
昼休みに職員室へ来て質問をしたこと。
間違えた問題を何度も解き直していたこと。
英単語を覚えるのが苦手なのに、毎日少しずつ練習していたこと。
その努力を見ていたからこそ、私は答案を返すときにこう声をかけました。
「今回は前より、最後まであきらめずに解けていたね。」
すると、その子は少し驚いたような顔をして、
「先生、それ分かりました?」
と笑ったのです。
その笑顔を見て、「見ていてよかった」と心から思いました。
もちろん、点数は大切です。
今の学習で何が理解できていて、何が課題なのかを知るためには必要なものです。
でも、点数だけを見ていると、見えなくなってしまうものがあります。
例えば、
前までは白紙だった問題に挑戦できるようになったこと。
分からない単語を自分で調べるようになったこと。
苦手な教科から逃げずに机に向かえたこと。
こうした変化は、答案用紙には書かれていません。
でも、その積み重ねが、やがて点数として表れてくるのです。
教員だった頃、テストを返した日の放課後に、ある保護者の方からこんな相談を受けたことがありました。
「家では頑張っているように見えるんです。でも結果が出なくて…。うちの子は勉強に向いていないのでしょうか。」
その言葉に、お子さんを思う気持ちがあふれていました。
私はそのとき、
「結果だけを見るとそう感じてしまいますよね。でも学校では、お子さんが以前より積極的に取り組む姿が増えているんですよ。」
とお伝えしました。
すると、その保護者の方は少し安心した表情になられました。
子どもの成長は、毎日そばにいると意外と見えにくいものです。
だからこそ、学校で見えた姿、ご家庭で見える姿、その両方が合わさって、その子の本当の成長が見えてくるのだと思います。
もし、お子さんがテストを持ち帰ってきたら、点数を見る前に一つだけ聞いてみてください。
「今回、自分で頑張ったと思うことは何?」
最初は「別に。」と返ってくるかもしれません。
それでも大丈夫です。
少し時間がたつと、
「英単語は前より覚えた。」
「最後まで解いた。」
「苦手な数学も逃げなかった。」
そんな言葉が返ってくることがあります。
その小さな頑張りを認めてもらえた経験は、「次もやってみよう」という力につながります。
教員だった頃も、今、学びのたまごで子どもたちと向き合っている今も、変わらない思いがあります。
それは、
子どもは結果だけで成長するのではなく、「見てもらえた」という安心感の中で成長していくということです。
テストの点数は大切です。
でも、その数字の向こうには、一人ひとり違う努力や葛藤があります。
その小さな成長に気づいてくれる大人が一人でも増えたら、子どもたちは、きっと次の一歩を踏み出す勇気を持てるのではないでしょうか。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
夏休みまであと1週間ちょっとですね。
子どもたちが大きく生成長する夏。ご家庭の学習について、何かひとつでもお役に立つことを投稿できたら幸いです。
次回は、「提出物が出せない子は、怠けているのでしょうか?」についてお話しします。
教室で見えていたのは、「やらない子」ではなく、「やりたいのに動けない子」の姿でした。
