幻想写真詩集『晩夏』

畳まれたままの翼が、駅のホームでじっと出番を待っている。
まだ走り出してはいないけれど、季節はもう動き出している。

コスモスの咲くホームの上で、翼を広げる。
どこに続いているかもわからないのに、行ってみたくなる匂いがする。

渡ることのできない橋が、今日も静かに架かっている。
向こう岸の緑だけが、やけに濃く見える。

錆びた棘の隙間から、線路がかすかに覗いている。
草に呑まれて先は見えないが、続きがある気配だけは消えない。

煙の途絶えた煙突が、空に向かって背筋を伸ばしている。
それでも律儀に、夏の雲を数えている。

古い列車と、小さな自転車がすれ違う。
走る速さの違う、ふたつの夏が束の間、並ぶ。

色を手放し、軒先に吊るされたままの花がある。
枯れてなお、そこに留まっている。

朽ちかけた板壁に、オレンジと白の花が寄り添うように咲いている。
夏はここでようやく、大きく息を吐いたようだった。
