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暗記がきらいで法則がだいすきな女と、ドイツ語のジェンダーの話

ヨーロッパ言語には、名詞に文法上の性別があることが多い。フランス語にもイタリア語にもスペイン語にもロシア語にもあるし、むしろヨーロッパ言語なのに、性別がない英語の方がイレギュラーなんだと思う。

たとえばフランス語だと、革命や車や銀行は女性名詞で、本やノート、パソコンなんかは男性名詞だ。この名詞の性に応じて、冠詞が違ったり形容詞の形が変化したりする。

わたしが最近ちまちま勉強しているドイツ語もご多分に漏れず、名詞が性別を持っている。それはフランス語で慣れたからもういい。中性名詞なんてものまであるけど、ひとつ性別が増える程度ならどうにかなるはず。

問題は「名詞の性には法則性がないらしい」ということだ。どこで聞いたのかはもう忘れたが、そう聞いたことがある。つまり、すべての単語を冠詞とともに暗記するしかない。

これは重大な問題だ。なぜならわたしは暗記が大嫌いだから。絶対に覚えられる気がしない。法則を知って出来るだけショートカットしたい。

それにそもそも、何に対しても法則がないということ自体があんまり好きではない。たぶん個別具体よりも抽象的なものが好きな性質が、ここでも現れているんだと思う。

よく考えたら単語の暗記はいやだけど、文法規則なら暗記しがいがあるなと思うから、暗記が嫌いなんじゃなくて個別具体が嫌いなだけかも。とにかく、抽象的な法則がほしい。

でも残念ながら、単語を眺めていても、法則性があるようには見えない。フランス語の単語と並べるとよくわかる。

ドイツ語:die Frau / die Post / die Bank / die Universität / die Revolution / die Frage / die Literatur
フランス語:la femme / la poste / la banque /l'université/ la révolution / la question / la littérature

女性名詞

ドイツ語:der Herr / der Arzt / der Garten / der Park / der Bleistift / der Wein / der Kuchen
フランス語:le monsieur / le médecin / le jardin / le parc / le crayon / le vin / le gâteau

男性名詞

フランス語の場合、eで終われば女性名詞であることがほとんどだ。あとそのほかに、tionやsionで終わると女性名詞とか、eで終わってもageだと男性名詞とかのちょっとした例外はあるが、「eで終わり=女性名詞」でかなりの名詞はカバーできてしまう。

一方ドイツ語は、単語を見ていても法則が全然わからない。他のいろいろな単語を見ていると、フランス語のようにe終わりの単語が女性名詞であることが多い気はする。あと学術分野を表す単語(歴史、経済、物理、化学、文学)は女性名詞のようだ。でもe終わりじゃないのに女性名詞の単語だって山ほどある。学術分野もたまたまかも。

やっぱり、法則はないんだろうか。でも、本当に法則がないとしたら、結構困らない?

先述のようにフランス語の名詞の性には法則がある。だからネイティブだとまったく知らない単語を聞いても「なんとなくこれは、女性名詞っぽいな」などと音などから推測できるらしい。

法則がないということは、ドイツ語だとこれはできないんだろうか。言葉は生き物だからどんどん新しい単語も生まれていくのに、それだと困らない?まあでも、別に名詞の性を間違えたからって意味が変わるわけではないからいいんだろうか。

日本語に無理やり置き換えて考えるとすると、助数詞(枚、個、匹など)に法則がないようなものに思える。そうなると、まったく新しいものが出てきた時、どう数えていいかわからないし、みんなが適当なものを使ってカオスになりそう。やっぱしんどくない?

ドイツ語話者はどうやって名詞の性と向き合っているんだろう。

こういう検索してもいい感じの情報が出てこなさそうなことを知りたい時は、まずAIに聞くのが便利だ。でもその前に、一応「ドイツ語の名詞の性に法則性がない」というのは本当かを聞いてみよう。

あるんじゃねえか

と思ったら普通にあった。しかしフランス語とは複雑さが段違いだった。

まず、名詞の性を決める規則はこの3つ。上から順番に厳格なルールで、たとえば意味カテゴリー的には女性名詞だけど接尾辞から見ると男性名詞の場合は、男性名詞になるとのこと。

1. 複合語の後部要素
2. 接尾辞
3. 意味カテゴリー

複合語の後部要素とアップルジュースという単語があった時に、ジュースが男性名詞だったらアップルが男性名詞だろうと女性名詞だろうとアップルジュースは男性名詞になるし、オレンジジュースもトマトジュースも全部男性名詞になるということだ。

そして接尾辞。フランス語でいう、ionで終わるものは女性名詞とかそういうの。ドイツ語もion終わりは女性名詞らしい!あとe終わりもやっぱり女性名詞が多いみたいだ。フランス語既習者としては親近感が湧くし、覚えやすくてうれしい。

接尾辞の法則があると知った時は、「そうそうこういうのがほしかった!やっぱりあるんじゃん〜〜〜」と思って楽しくなった。が、多すぎる。

これは女性名詞のもの。つまりこの3倍の量のこんなのがある。

これはさすがに、これを全部覚えていちいち一つひとつの単語に適用するくらいなら、単語ごと覚えたほうが早いのでは?と思っちゃう。

実際その方が初心者にはスムーズだから「法則なんてないから暗記するしかない!」という教え方を便宜上してるんだなとすごくよく理解できた。

しかし法則はまだある。意味カテゴリーによっても名詞の性は決まるらしい。

これはすごく覚えやすいし、かつ使いやすくていい気がする。

あとは規則ではなく傾向の話ではあるものの、「女性名詞に多い音」とか「男性名詞に多い音」とかがあるらしい。

にしてもちょっと法則が多すぎる。でも一方で、この複雑すぎるところがすっごいドイツっぽいなあとも思う。ともかく文法規則大好き女のわたしとしては、ルールがないよりはずっといい。

正直、今やっているドイツ語学習コンテンツに冠詞が出てきたあたりから「法則はないのか……勉強やり続ける限り毎回個別具体で覚えるとかやっぱりいやかも……」と思っていたので、本当に法則があることがわかってよかった(ちなみに調べる過程で、ドイツ語の名詞は半数近くが女性名詞だから困ったら女性名詞を使えばいいというちょっとしたライフハックも得た、ラッキー)。

それでも、初心者が学ぶような基礎語彙は法則に当てはまらないものが多くて丸暗記となるみたいだけれど、最初だけなら全然いい。ちゃんと法則があるとわかったことで、ドイツ語とこれからも仲良くなっていけそうだ。ありがとう法則。


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