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笠井潔編『本格ミステリの現在』解説
(初出:笠井潔編『日本推理作家協会賞全集92 本格ミステリの現在 下』、2014年)
不可解な謎が、名探偵の合理的な推理で解かれ、意外な真相が明かされる。そのような内容を基本的な形式とするのが、本格ミステリ小説だ。このジャンルは、江戸川乱歩が登場した第二次世界大戦前、横溝正史や鮎川哲也などが活躍した戦後からしばらくの期間という二つの隆盛期の後には、松本清張に代表される社会派ミステリ、冒険小説のブームなどに押され、退潮を余儀なくされた。だが、綾辻行人が一九八七年に『十角館の殺人』でデビューして以後、本格ミステリの新人が続々現われ、一九七〇~八〇年代から本格を書いていた作家もあらためて注目された。これが、新本格ミステリ・ムーヴメントである。
その初期には書評家などから時代錯誤、人間が描けていないなどと批判されたが、次第に多くの読者を獲得した。その結果、逆風は薄れ、九〇年代半ばには国内ミステリ界で新本格は一定の地位を占めるようになった。状況が変わる過程では、同ジャンルの書き手や読み手の間で、新本格作品が正当に評価されていないという不満もあった。それに対し、新本格が過去の本格ミステリをいかに受け継ぎ、どのように新たな魅力や意味を与えたのか、作家論集の形で追究したのが、笠井潔編『本格ミステリの現在』だった。新本格の出発点『十角館の殺人』の十年後の九七年に刊行された本書は、翌年、第五十一回日本推理作家協会賞評論その他の部門を受賞した。
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