求人票をどれだけ綺麗に変えても、なぜか応募が増えない会社の共通点
「遠藤さん、求人票のキャッチコピー、もっと今風に変えてみました! 給与の表記も目立たせています!」
数年前、私の元へ上がってきたメンバーからの報告です。画面に映る求人票は、確かにキラキラしていて、いかにも応募が集まりそうなデザインでした。
「よし、これでいこう」
そう言って掲載をスタートしたものの、1週間経っても、2週間経っても、管理画面の応募数はピクリとも動きませんでした。予算だけが静かに消化されていく音を聞きながら、私はオフィスの片隅で冷や汗をかいていました。
本当に変えるべきなのは、求人票の文字なんだろうか。
1. 魔法の言葉なんて、どこにもない
応募が来なくなると、多くの会社はまず求人票を修正しようとします。
給与の額面を少し上げてみたり、完全週休2日制を大きくアピールしてみたり。もちろん、どれも大切なことです。
でも、かつて毎日100件以上のテレアポを経験し、独立リーグで泥にまみれてきた私は、何度もその限界にぶち当たってきました。
綺麗に化粧を直しただけの求人票で勝負しようとしても、求職者には見抜かれてしまう。小手先のテクニックだけで集めようとしても、結局は誰も残らない。そんな痛い失敗を、私は何度も繰り返してきました。
2. 採用できない時に、私がやりがちだったこと
「求人票の表現を変えましょう」 「掲載する媒体を変えましょう」 「もう少し広告費を増やせませんか」
採用がうまくいかない会議室では、いつも同じ言葉が飛び交います。 かつて年商12億、30億といった規模の拠点を運営していた頃、私も何度もこの言葉に逃げようとしましたし、自分自身もそうやって「どこかに一発逆転の魔法の媒体があるはずだ」と探し回った時期があります。
でも、それだけで根本的な解決ができる会社は、驚くほど少ないのが現実です。
なぜなら、本当の原因は、求人票の文言の良し悪しではない、もっと地味な場所にあるからです。
3. 求職者は、画面の奥の「姿勢」を見ている
少し極端な言い方をさせてください。 今の求職者は、求人票の文字を隅々まで熱心に読んでいません。
特にスマホで仕事探しをしている人はそうです。仕事の合間や移動中に、指先ひとつで何十件もの求人をスクロールしています。 タイトルを見て、給与を見て、勤務地を見る。ほんの数秒で応募ボタンを押す。
では、彼らはどこでその会社の本質を見極めているのか。 私は、それは「応募ボタンを押した直後」の体験だと思っています。
応募した後に、どれだけのスピードで連絡が来るのか。 電話をかけてきた担当者の声のトーンは温かいか。 面接の調整メールの文面は丁寧か。
ここで会社の「本当の姿」がすべて透けて見えます。求人票をいくら綺麗に着飾っても、応募した後の対応がガタガタであれば、求職者は一瞬で冷めて離脱していきます。
4. 採用は、必死に相手を思う「営業」と同じだった
私は、自分のキャリアを採用担当としてスマートにスタートしたわけではありません。毎日100件断られ続けた、泥臭い営業の現場から叩き上げでここまで来ました。
だからこそ思うのです。 採用は、人事業務というより、泥臭い「営業」や、相手の心を動かす「マーケティング」と同じだと。
応募者がどこで私たちの求人を見つけ、なぜ応募し、どのプロセスで心が折れて辞退してしまったのか。 返信が遅くて不安にさせてしまったのか、面接官の態度が冷たくてガッカリさせてしまったのか。
私がかつて神奈川の営業所を月商1億円規模まで成長させた時にやったのも、求人票を書き直すことではありませんでした。応募後の初回連絡時間を「5分以内」に変え、繋がらなければ心を込めてメッセージを送るという、徹底的な「目の前の相手に向き合うプロセス」の改善でした。
採用が弱い時ほど、人は「求人票」という見た目のせいにしたがります。 でも、採用が本当に強い組織は、自分たちの「おもてなしのプロセス」を必死に疑い、磨いています。
5. 遠回りしたから、気づけたこと
偉そうなことを並べてしまいましたが、これもすべて、私が「求人票を変えればなんとかなる」と過信し、多くの応募者を逃してきた苦い経験があるから言えることです。
スマートに正論を語るコンサルタントにはなれません。何百万円という予算をドブに捨てて、メンバーと一緒に頭を下げて、たくさん躓いて遠回りしてきたからこそ、この泥臭いプロセスの重要性が身に染みて分かります。
見た目だけを繕っても、中身は変わらない。それは、高校時代に背番号を外されてスタンドからチームを見ていたあの頃から、私の根底にある教訓なのかもしれません。
次回は、私がそんな手痛い失敗を経てたどり着いた、「私が面接で絶対に聞かない質問」について書いてみようと思います。
オフィスのデスクで、かつて自分が必死に修正していた古い求人票のデータを眺めながら、そんなことを思い出していました。
今日もまた、目の前のプロセスを一つずつ、泥臭く磨いてきます。
