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ホテルのワークスペースにて、漫画のことを考える

朝10時まではドリンクバーか無料だ。現代的な造りのこのホテルは予約もチェックインもデジタル式で、1階の共有スペースは日中はワークスペースやカフェにもなっている。10時になるとホテル利用以外のお客さんも来るので、それからカフェの閉まる22時まではドリンクバーが有料となる仕組みだ。

黒地にカラフルなチョークで書かれた「established 2019」の文字を見て、このホテルができた頃を想像した。この1階スペースは当初からのアイディアだったのか、それともテレワークが急に増えたことで対応したのか。どちらにせよ創業1年足らずで利用客が激減したに違いなく、今こうして繁盛している裏に隠れた葛藤を思った。

私は今ワークスペースの横長のテーブルに座って紅茶を飲みながら、チラチラ周りに目を配っている。大半は仕事をする男性だ。長袖ワイシャツの裾をズボンに入れ、袖は肘まで腕まくり。傍らにはビジネスバックと、人によっては小ぶりのスーツケースを転がしている。我が家は4人部屋を4人で貸しきっての個室利用だったけれど、彼らはどうしたのだろう。ドミトリーだったのだろうか。ドミトリーでよく眠れたかな、疲れが取れたのだといいな、なんて考えてしまうのは余計なお世話なのだろう。だけど気になる。

今現在も向かいの席に2人、それぞれ小ぶりのノートパソコンを開いて、グラスを片手に仕事をしている。私から見て左手の人は合間にパンをかじっている。右側の人はパソコンの手前にファイルを開き、仕事に没頭している。もちろん、それは私の目に移る彼らの仕草から推測したものであり、本当にそうなのかは確認していない。ノートパソコンの画面は見ていないので、必死にネットショッピングをしているとか、身だしなみバッチリでパズルゲームとかいう可能性もゼロではない。だけどスーツ姿の働く日本人はそうそう間近で見られるものではないし、漫画の世界(オフィスラブとか)を彷彿とさせるので、ここはやはり「仕事をしている」という設定にしておこうと思う。

漫画は、実のところ、この春から夏にかけてかなり読んでいた。現実逃避したかったのかもしれないし、想像上の日本を楽しみたかったのかもしれない。春に亡くした友人が漫画好きだったのもあるし、彼女が空けた日常生活の中の「日本」を何かで埋めたかったのもある。
どうであるにせよ、漫画は私の時間をかなり奪っていった。お金はまるで奪わなかった。なぜならオンラインの無料漫画ばかり読んでいたからである。

そんなわけで、日本に来る前の私は、頭の中を漫画の世界でいっぱいにしていた。
日本に着いてからの私は、ふとした瞬間に現実に漫画の世界を合わせてみたくなっている。
例えば今みたいな、目の前に主張中(推定)の人が2人いる状況とか。または学生のグループとか。漫画だったらどんなポジションにいる人なんだろう、なんて考えてみたりして。
と、こんなことを書いていると、我ながらなかなか気持ち悪いおばさんだなと思う。

漫画はかさばるので普段は買わないようにしているのだけれど、今回は、買った。古本の完結セットを2つ。どちらも知っている話で、どちらも高校生の話。似ていると言われたら似ているけれど、とっかえひっかえ脳内トリップするにちょうどいい。『テリトリーMの住人』と『ひるなかの流星』。
そしてこれらは両方とも友人が持っていて、貸してもらったことがあった。
様々に、懐かしい話。

ところで、オンラインで読んで気に入ったのは、
『マイペースと歩く』
『放課後帰宅びより』
『スキップとローファー』
だった。最初の少ししか読んでいないのだけれど、とても好きだと思った。
これらを買って帰りたい一方で、本屋さんで新品を前に躊躇した。1冊700円くらいするから、集めるとなると…
完結していないのも思いとどまる理由の一つだ。私が漫画を買う理由は、「最終回まで読める作品がほしい」だから。

そして『放課後帰宅びより』は見つけられてさえいない。
オンラインで買えばいいじゃない、と思う人もいるかもしれない。だけどそれは私の中で「始めてはいけないこと」に分類されている項目の一つだ。たぶん瞬く間のうちにすごいお金を使ってしまう、とても危ないことに違いないから。
そして、本も漫画も、私は結局のところ紙の方が好きだなと思う。

チェックアウトの時間が迫ってきたので、再び部屋に戻ることにする。子供たちを急かして(起きていることを願う)、荷物を持って、10時前にはホテルを出なければ。
今回の日本滞在唯一のホテル泊、1泊2日。







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