「次の朝ドラは福崎町から?」―柳田國男を支えた女性たちが主人公になる可能性を考える―
NHK連続テレビ小説(朝ドラ)は、日本各地の歴史や文化を全国へ発信する大きな力を持っています。
近年、妖怪や民俗文化にゆかりのある人物を取り上げた作品が続いていることをご存じでしょうか。
島根県境港市:水木しげる氏の妻・武良布枝さんをモデルにした『ゲゲゲの女房』
島根県松江市:小泉八雲の妻・小泉セツをモデルにした『ばけばけ』
では、兵庫県福崎町が誇る「日本民俗学の父」柳田國男にも、朝ドラの主人公となるような女性はいるのでしょうか。
調べてみると、その可能性は決して小さくないことが分かりました。
1.福崎町でも「朝ドラ化」が話題に

実は福崎町では、柳田國男を主人公としたNHK朝ドラの実現について、町議会で正式に議論されたことがあります。
令和8年(2026年)3月の町議会では、「柳田國男を主人公にした朝ドラ化へ向けた取組」を求める一般質問が行われ、町としても提案を受け止める姿勢が示されました。
つまり、「柳田國男と朝ドラ」は決して夢物語ではなく、地域振興策の一つとして考えられているテーマなのです。
2.朝ドラは「偉人本人」より「支えた女性」を描く時代へ
近年の朝ドラには共通する傾向があります。
2-1.『ゲゲゲの女房』

主人公は漫画家・水木しげるではありません。
妻・武良布枝さんです。
戦争から帰還した夫を支え、貧しい生活を乗り越えながら『ゲゲゲの鬼太郎』誕生までを描き、多くの視聴者の共感を呼びました。
2-2.『ばけばけ』

現在放送されている『ばけばけ』も、小泉八雲本人ではなく、その妻・小泉セツがモデルです。
異国から来た夫へ日本各地の怪談や伝承を語り聞かせた女性として描かれています。
つまり、「偉人を支えた女性の人生」こそ、現代の朝ドラらしいテーマになっているのです。
3.柳田國男を支えた女性たち
それでは、柳田國男にはどのような女性がいたのでしょうか。
3-1.母・松岡たけ
私が最も朝ドラ向きだと感じる人物です。
柳田國男は『故郷七十年』などで、母についてたびたび語っています。
近所の夫婦喧嘩の仲裁役となるなど、人望が厚く、地域社会の中心的な存在だったといいます。
また、
明治維新後の生活の変化
医師一家としての暮らし
大家族の子育て
貧しい時代を乗り越える努力
など、多くの苦労を経験しました。
こうした母の姿が、後に柳田國男が民俗学を志す土台になったとも考えられています。
3-2.妻・柳田孝
柳田國男の妻・孝も、朝ドラの主人公候補になり得ます。
柳田國男は官僚として全国各地へ赴任しながら研究を続けました。
その長い年月、家庭を守り、研究生活を支え続けたのが妻・孝でした。
近年の朝ドラが描いてきた「夫を支える妻」という構図にも重なります。
一方で、水木しげるの妻・武良布枝さんのような自伝作品が広く知られているわけではなく、ドラマ化にはさらなる資料調査や脚本づくりが必要になるでしょう。
3-3.娘という可能性
娘を主人公とする案も考えられますが、現在確認できる資料は母や妻ほど多くありません。
そのため、朝ドラの主人公としては、ややハードルが高い印象です。
3-4.私なら「母・たけ」を主人公にしたい
もし私が企画するなら、主人公は母・松岡たけです。
物語は、
明治維新という激動の時代
播磨の自然豊かな福崎での暮らし
子どもたちを育てる日々
地域に伝わる昔話や伝承
柳田國男少年の成長
を丁寧に描きます。
そして終盤では、柳田國男が『遠野物語』を著し、日本民俗学の父へと成長していく姿へつながっていく――。
一人の母親の人生が、日本民俗学誕生の物語と重なっていく作品になるでしょう。
4.妖怪文化をつなぐ「第三の朝ドラ」へ
実は、
境港市(水木しげる)
松江市(小泉八雲)
という二つの「妖怪文化のまち」は、既に朝ドラという形で全国へ発信されています。
そこへ、
福崎町(柳田國男)
が加われば、日本の妖怪文化・民俗文化を代表する三つの地域がそろうことになります。
さらに、
柳田國男(民俗学)
↓
小泉八雲(怪談文学)
↓
水木しげる(漫画・妖怪文化)
という、日本文化の系譜を一つの物語として全国へ伝えることもできるでしょう。
5.福崎町の新たな地域振興への期待
福崎町では現在、「民俗学のふるさと」として柳田國男を活かしたまちづくりが進められています。
もし朝ドラが実現すれば、
柳田國男生家
辻川山公園
柳田國男・松岡家顕彰会
妖怪ベンチ
河童・天狗などの妖怪スポット
などが全国から注目を集め、観光振興にも大きく寄与することでしょう。
また、松江市や境港市との広域連携が実現すれば、「妖怪文化・民俗文化」をテーマにした新たな観光ルートや文化交流も期待できます。
6.おわりに
現時点では、柳田國男やその家族をモデルにした朝ドラの制作は決定していません。
しかし、福崎町では朝ドラ化に向けた提案が町議会で議論されるなど、地域としての機運は高まりつつあります。
近年の朝ドラが「偉人を支えた女性」に光を当てる作品を続けていることを考えると、柳田國男を育てた母・松岡たけや、研究生活を支えた妻・孝を主人公にした物語は、十分に検討に値するテーマではないでしょうか。
妖怪や民俗文化は、単なる昔話ではありません。
そこには人々の暮らしや地域の歴史、そして日本人の心があります。
福崎町から、日本民俗学誕生の物語が朝ドラとして全国へ発信される日が来ることを、期待したいものです。
