メモリサイクルは、新たな構造へ|なぜ、史上最高益のMicronは売り値にキャップをかけるのか $MU
2026年6月24日、午後4時すぎ、Micron (MU) の決算が出た。時間外で、株はそのまま15%上がって、約1210ドルを付けた。
数字は、確かにすごかった。四半期の売上が414.6億ドル、過去最高。粗利率84.9%、これも過去最高。でも、私がその開示でいちばん長く手が止まったのは、最高益のほうではなかった。
決算資料には、16本の契約のことが書いてあった。データセンターと車載の顧客と結んだ、5年間の供給契約だ。期間は2026年から2030年まで。そして、その契約には、上限価格がついていた。いまの市況の価格で、天井に蓋をする。5年間、ここから上には行かない、という約束だ。
引っかかったのは、ここだ。メモリは、テック業界でいちばん値動きの荒い商品だ。そのメモリが、史上最大の価格上昇のまっただ中で、自分から進んで、5年先までの上限に署名した。
普通は、上がるだけ上げたい。なのにMicronは、上限を手放した。その代わりに、何を手に入れたのか。この記事は、その一点をほどいていく話だ。
私はこのところ、AI投資の重心がどこへ動くかを、層で考えてきた。いちばん上に計算(NVIDIAのGPU、GoogleのTPU)があり、その下に計算を時間貸しする器(ネオクラウド)があり、さらにその下に、メモリ、ネットワーク、電力がある。価値は、いちばん目立つモデルの層からは逃げて、上下のこの層に溜まっていく。
ただ、メモリ企業は構造的な追い風を受ける層だが、株として長く持つ対象ではなかった。理由は単純で、メモリの価格は循環する対象だったからだ。
今回のMicronの契約はその構造そのものに手をかけてきた。メモリ価格の循環という性質を、契約で変えにいく。これは、四半期がよかったという話ではない。メモリという商品のビジネスモデルの作り替えの話になる。
84.9%という、メモリらしくない数字
まず、今回の数字がどういう構造でできているかを見る。ここを押さえないと、契約の意味が分からない。
売上は414.6億ドル。前の四半期が238.6億ドル、前年の同じ時期が93.0億ドルだった。一年で4.5倍だ。
ただ、増収の幅そのものは、今回の主役ではない。主役は、その横で売上原価がほとんど動かなかったことだ。
原価は、前の四半期の61.1億ドルから64.0億ドルへ、4.7%しか増えていない。売上が176億ドル積み上がる横で、原価は3億ドルしか増えていない。増えた売上の、およそ98%が、そのまま粗利になった。

結果として、粗利率は前の四半期の74%台から84.6%へ、前年同期の37.7%からは倍以上に跳ねた。会社が示す調整後ベースでは84.9%だ。

この構造が何を言っているか。
Micronは、劇的に多くのメモリを売ったわけではない。同じ量のメモリが、はるかに高い値段で売れている。 DRAMとHBM(広帯域メモリ。AIアクセラレータに積む高速メモリ)の逼迫が、出荷数量ではなく、単価として損益に通っている。
数字でいうと、データセンター向け(クラウド向けメモリとコアのデータセンター)だけで約253億ドル、売上の6割を占めた。AIサーバーの需要が、メモリの値付けを押し上げている。
ここで、立ち止まってこの84.9%という数字を眺めてほしい。
これは、メモリ製造企業が出す数字ではない。ソフトウェア会社の粗利率に近い。コードをコピーして売る商売ならともかく、シリコンウェハーを削って、何百もの工程を通して、物理的なチップを作って売る商売で、原価が売上の15%しかない。
そんなことは、メモリの歴史で一度もなかった、なかったのである。
そして、ここがいちばん大事なところだ。粗利率84.9%というのは、どう見ても循環の天井に見える。メモリを長く見てきた人間なら、反射的にこう思う。
(これは、戻る。必ず戻る….)
と。
メモリの常識では、こういう局面でやることは決まっている。出せるだけ出して、上がるだけ取る。天井がいつ来るかは誰にも分からないのだから、来るまで全力で売る。
しかし、Micronは、逆をやった。
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