会議を効率的に変える構造化の7つのフレーム③ 「5回のなぜ (5 Whys)」 ~根本原因や要素を掘り下げる~
「5回のなぜ」は、問題の表面的な解決(応急処置)にとどまらず、その裏に潜む「真因(しんいん:本当の原因)」を突き止めるための最もシンプルで強力な思考法です。
トヨタ自動車の創業者・豊田佐吉氏が考案し、大野耐一氏らによって「トヨタ生産方式」の柱として体系化されました。現在では製造業のみならず、IT業界やサービス業など、世界中のビジネス現場で「再発防止」のスタンダードとして活用されています。
1. 「5回のなぜ」の核心:対症療法か、根治療法か
目の前で問題が起きたとき、私たちはつい「目に見える原因」だけを取り除いて満足してしまいがちです。
対症療法: 熱が出たから解熱剤を飲む(一時的に熱は下がるが、病気そのものは治っていない)。
根治療法(5回のなぜ): なぜ熱が出たのか?を掘り下げ、細菌感染という「真因」を見つけ出し、抗生物質を投与する。
ビジネスにおいても、ミスが起きたときに「担当者に注意する」だけで終わらせると、必ず同じミスが繰り返されます。「仕組み」のどこに欠陥があったのかを5回掘り下げることで、初めて再発を防ぐことができるのです。
2. 具体例で見る「真因」へのたどり着き方
有名な「機械が止まった」という例で考えてみましょう。
なぜ機械が止まったのか? → 過負荷でヒューズが切れたから。
なぜ過負荷になったのか? → 軸受(ベアリング)の潤滑が十分でなかったから。
なぜ潤滑が不十分だったのか? → 潤滑ポンプが十分に油を汲み上げなかったから。
なぜポンプが汲み上げなかったのか? → ポンプの軸が摩耗してガタついていたから。
なぜ摩耗したのか? → ろ過器(ストレーナー)がなく、切り粉が入ったから。【真因】
もし、1回目の「なぜ」で止めてヒューズを交換するだけなら、数日後にまた故障します。5回繰り返したことで、「ストレーナーを取り付ける」という根本的な解決策にたどり着けるのです。
3. 実践するための「3つの鉄則」
ただ「なぜ?」と繰り返すだけでは、単なる犯人探しや袋小路に迷い込むことがあります。成功させるための重要なポイントが3つあります。
① 人ではなく「仕組み」を責める
「なぜミスをしたのか?」に対し、「担当者が不注意だったから」という結論はNGです。それでは真因
にたどり着けません。「なぜ不注意が起きる手順だったのか?」「なぜチェック機能が働かなかったの
か?」と、個人の能力ではなく仕組みの不備にフォーカスします。
② 「事実」に基づき、論理の飛躍をなくす
想像や思い込みで進めると、間違った結論に至ります。先ほどの「空・雨・傘」と同様、客観的な事
実(空)をベースに論理を繋ぎます。
チェック法: 下から上に「〜だから、〜となった」と読み返したときに、矛盾なく繋がっていれば合格です。
③ 「5回」は目安、納得いくまで繰り返す
3回で真因にたどり着くこともあれば、7回必要なこともあります。「もうこれ以上掘り下げられない」
「これを変えれば二度と起きない」という確信が持てるまで問い続けます。
4. 導入のメリット
コスト削減: 再発防止ができるため、同じミスによる損失がなくなります。
考える組織: 全社員が「なぜ?」と考える習慣を持つことで、自律的な改善(カイゼン)が進むようになります。
合意形成: 結論に至るまでのプロセスが可視化されるため、対策への納得感が高まります。
まとめ: 「5回のなぜ」は、「なぜ(原因)」の連鎖を辿り、「どうやって(対策)」の精度を高める技
術です。みなさんも真因を探ってみましょう。
