性能を競うAI、使われる場所を取りに行くAI──生成AIのインフラ戦争
上記の記事で、GoogleがPCのショートカットを勝手に乗っ取ってきたという体験を書いた。
とにかく、Geminiが簡単に呼び出せるようにした仕様変更であるが、この手法を見てなんとなく感じたことがあった。
今回のGoogleの手法、なんとなくAppleの手法みたいだなと。
Appleについては下記の記事でVAIOとの比較をしたことで、
性能勝負するよりも体験に立ち入ることで、支配者になった
と認識していた。
今回のGoogleの手法は、Geminiの性能で飛び抜けようと言うよりもインフラ側からユーザーを抑えようとしてきたという印象だったからです。
*この記事でいう「インフラ」とは、ユーザーがAIを利用するときの入口(OS・ブラウザ・検索・デバイス)のことです。PC環境内での生活基盤、と考えるとイメージしやすいかもしれません
ここが引っかかったので、AppleとGoogle(Gemini)について調べてみると、
Appleは、自社AIだけですべてを完結させようとは考えていません。
現在はApple Intelligenceを中心に据えつつ、外部AIとしてChatGPTと連携しています。将来的にはGeminiへの対応も検討されており、Appleは「どのAIを使うか」をユーザーが選べる環境を目指していると考えられます。
一方、GoogleはChromeやAndroid、検索、Gmailなど、自社サービス全体にGeminiを組み込み、AIを日常的に使う入口そのものを押さえようとしています。
つまり、Appleが「OSという基盤の上でAIを選べる環境」を目指しているのに対し、Googleは「Geminiをインフラそのものに組み込む」戦略を進めていると言えるでしょう。
AppleがGPTからGeminiに乗り換えたのかと思ってたので、Appleの入れ知恵かと思ったのだが、
むしろインフラ・体験への支配権争いになっているのかもしれません。
共闘に向かうのか、覇権争いに向かうのか、共存の道を選ぶのか、
今後の流れは面白そうです。
今日はこの生成AIのインフラの覇権争いについて考えみたいと思います。
現状、生成AIの性能競争ではGPT-5.5とClaude Fable 5が注目されています。一方で、GoogleのGeminiは、その話題の中心にはあまり入ってきません。
もちろん、性能評価については専門家の分析に委ねたいところです。
ただ、Appleがかつて性能競争だけではなく「体験」を押さえることで存在感を高めていったように、Googleもまた、Geminiをインフラへ組み込むことで別の土俵から勝負を仕掛け始めたのではないか──そんなことを今回の出来事から考えました。
◼︎Gemini(Google)のインフラ戦略
◆Chromeに搭載されたGeminiに相談というボタン
先ほど、勝手にショットカットキーを乗っ取られたことに怒りを覚えた僕であるが、このボタンはよく使っている。
例えば、今は記事をまとめている状況ではあるが、
画面はこのようになっている。

分割ビューを利用して左にChatgptを起動、Geminiボタンを利用して右側にGeminiを起動。
この体制である。
しかも、Geminiの方はわざわざコピペしなくても、
ここまでを導入としたいが、どうでしょう?
などの質問ができる。
また、記事内の画像まで参照してくれる。
まあ、それでもGeminiに一本化しないのは今までの整理に使ってきた関係から反応に安心感がある、という理由なのだが。
Youtube動画の要約をする際は、もっと楽になった。
今まで文字起こしをコピペは、長時間の動画であるほどストレスだったが、
このボタンを利用すると、コピペ不要でかつ長時間の場合も何回に分ければ可能ですか?の相談もできるようになった。
Youtubeの機能の方での『質問する』でも同様の機能ができたかと思うが、こっちの方が見やすいというのは重要だと思う。
ただ、こうして使っていると、Googleが目指しているものも少し見えてきます。
AIの性能だけで選んでもらうのではなく、「気付いたら一番使いやすい場所にいる」。Chromeという日常的に使う環境へAIを溶け込ませることで、ユーザーとの接点そのものを押さえようとしているのではないでしょうか。
ショートカットキーの件では反発を覚えましたが、一方で、この便利さもまた事実です。
だからこそGoogleは、性能競争だけではなく、「使われる体験」そのものを取りにきているのだと感じました。
「一番優れているから使う」のではなく、「そこにあるから使う」。インフラを押さえるとは、そういうことなのかもしれません。
◆Gemini for macOS
この文脈で調べていると、Gemini for macOSというアプリケーションが出ているらしい。
できるようになることをみていると、主に下記の項目になる。
① AIチャット
質問、調査、文章作成、アイデア出しなどを行える。
ブラウザを起動しなくてもチャットに繋げられる。
② 画面の理解
表示している画面をAIに読み取らせ、内容の説明や改善提案を受けられる。
③ ファイル分析
PDF、画像、文書などを読み込み、要約や整理ができる。
④ 文章作成・編集
メール、記事、資料作成、文章の推敲などを支援する。
⑤ プログラム支援
コードの作成、修正、解説などを行える。
⑥ Googleサービスとの連携
GmailやGoogle Driveなどの情報を活用し、作業を効率化できる。
⑦ AIエージェント化への発展
単に質問へ答えるだけではなく、Mac上の作業状況を理解し、将来的には作業そのものを支援・代行する方向へ進んでいる。
これを確認すると②の項目が重要で、
これまでAIを使う場合、人間が必要な情報を選び、コピーやアップロードによってAIに渡す必要がありました。
しかし画面理解型AIでは、ユーザーが許可することで、その時点の作業環境をAIに理解させることができます。
スクリーンショットを撮って貼り付けるという一手間が減るのである。
(他の項目は、今までのアプリでもできた機能ともいえる)
言い換えると、
Gemini for macOSは「Macで使うAI」ではなく、「Macの作業環境に入り込むAIアシスタント」と言えるのではないだろうか。
これは「インフラ」側から取りに行こうとしている戦略の一つと見ることができるのではないだろうか。
現状、文書や表計算などはコピペすることによってAIと接続することができるようになっている。じゃあ、CADや描画ソフトなどはどう接続していくのか考えた時に、ブラウザ上で使用するアプリケーションになるか、アプリケーション側にブラウザがつくようになるか….そんな想像していた僕にとっては、隣に開くと覗き見してくれるAIができるということになる。
これは大きい。
今回、是非触ってみたいと思ってインストールを試みたがちょっと驚くことがあった。
・for Mac OSと名前に入っているのに、Apple側のApp storeにない。
・インストールしてみたもののセキュリティが動いてちゃんと起動しない…
設定をいじれば使えるようになるらしいが、まずMac側のセキュリティに引っ掛かるのである。
これは、AppleとGoogleの中で調整ができていないということになる。
完全な防衛にはなっていないものの、簡単には受け入れようとはしないAppleの姿勢なのではないかと思ってしまう。
◆Geminiのインフラ戦略
ここまでみてくると、Gemini(Google)がインフラ戦略に乗り出しているのは間違いない。他にも取り組みがあるはずだと考えて調べるのも大変なのでGeminiに直接聞くと下記のようなことを教えてくれた。
1. Android版Chromeへのネイティブ統合(エージェント化)
PC版の「Geminiに相談」ボタンに留まらず、スマートフォン(Android)版のChromeブラウザにもGeminiが深く組み込まれ始めています。 単に情報を調べるだけでなく、Webページを自動でスキャンして複数タブの情報を横断的にまとめたり、ユーザーに代わって予約サイトのフォーム入力を代行したりする「エージェント型ブラウジング」への移行を進めています。ブラウザを「見る道具」から「作業を任せる道具」に変えようとしています。
2. Android OSの「標準アシスタント」への完全な置き換え
Googleは長年培ってきた「Googleアシスタント」を、事実上Geminiへ完全にシフトさせました。 スマートフォンの電源ボタン長押しや音声(「On device」の処理を含め)でいつでもGeminiが起動する環境を構築しています。これにより、ユーザーはアプリすら開くことなく、OSの機能として日常的にGeminiを消費することになります。音声で自然に対話できる「Gemini Live」なども、スマホというデバイスそのものをGeminiのインターフェースにする戦略です。
3. Google Workspace(Gmail・ドキュメント等)との完全同期
「Chromeで見つけた情報を、ワンクリックでGoogleカレンダーに登録する」「Gmailの文脈を読み取ってDriveの資料を添付・要約する」といった、自社エコシステム内でのシームレスな連携です。 ユーザーが「アプリ間の移動やコピペ」を意識しなくて済む環境を作ることで、他社AIが入り込む余地をなくす(ロックインする)強力なインフラ戦略と言えます。
4. ハードウェアへの初期実装(Chromebook等)
「Chromebook Plus」などのPCや、Pixelシリーズのスマートフォンには、購入した初期状態からOSのシステムレベルにGeminiが組み込まれています。ユーザーがわざわざ「どのAIを使おうか」と悩む前に、「最初からそこにあるAI」としてのポジションをハードウェアの製造段階から確保しています。
まあ、これらはOSやデバイスをGoogleが握っている部分の取り組みなので当たり前と言えば当たり前だ。
◼︎今回の整理
今回ここまでGeminiの戦略を見てくると、
前回記事にした傍迷惑なグローバルショートカットキーの設定という暴挙は、単なる機能追加ではなく、Googleがインフラを制する戦いに本格的に乗り出したという、一つの宣言だったのかもしれません。
GPT-5.5やClaude Fable 5が「どれだけ賢いAIか」を競う一方で、Googleは「どれだけ自然に使われるAIになるか」という、AI時代のインフラを巡る別の勝負を仕掛けているようにも見えます。
ただ、今回は他のサービスがインフラ戦略をとっていないかどうかについては調べていないためGoogleが一歩進んだといえるのかどうかはわからない。
他のAIサービスに関しては、どう出てくるかはちょっと読めないところですが、インフラ戦略の元祖であるAppleがどう出てくるかも見ものである。
何もせずにインフラを明け渡すなんてことはないはずだ。
Appleにおいては、OSとデバイスという大元を押さえているため、AI時代の入口争いにおいても大きな影響力を持つ存在であることは間違いないでしょう。
AIの性能競争について、僕はまだ専門家のように理解できるわけではない。だからこそ、別の視点から生成AIを見ていきたい。
これからのAI時代において重要になるのは、「どのAIが一番賢いのか」だけではなく、「どのAIが最も自然に人々の生活へ入り込むのか」なのかもしれない。
これから始まる生成AIの『インフラ戦略』、そして『インフラ戦争』に注目していきたい。
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