弦の太さと張力と長さ
前回は弦楽器を押さえる左手の指の角度についてまとめた。指の角度が楽器によってことなる要因の一つに弦の太さと張力も関係する。太い弦は指の先端だけでは押さえきれない。コントラバスを弾くのに指先で押さえようとしても弦の太さを覆いきれない。今回は弦の太さと張力と長さについてまとめる。
弦の音程は、長さ、張力、線密度の3要素で決まる。これらの3要素のうちの長さは楽器のサイズ(上駒(ナット)から駒の距離)で決まる。張力と線密度は弦の材質で決まる。線密度というと難しいが、ある一定の長さあたりの重さのことであり、材質によって決定される。弦の材質は、ガット、スチール、ナイロンなどがある。スチール材は重い(比重が高い)ので弦を細くすることで単位長さあたりの重さを軽くし、逆にガット材は軽いので太くすることで単位長さあたりの重さを重くしている。そのようにすることで、全く異なる材質でも同程度の張力で同じ音程をだせるようにしている。
太さに追加して張力が音質を決める要素となっている。張力が高ければ力強く、張りがあり、固い音質になると言われている。なので、同じ材質だとしても弦の太さが違えば張力が変わるので音質も変化する。弦のメーカーにより音質が異なるのは、単に材質の問題だけでなく、このような3要素の影響を受けているからである。
楽器の種類が違えば当然弦の長さは異なる。それと合わせて弦の太さと張力も関係して楽器の種類ごとの音質が決定される。単に楽器の形が違うから音質が変わるというわけではない。バイオリンよりビオラ、チェロの方が音が柔らかいのは、同じ音でも弦の太さや張力が違うからである。
バイオリンからコントラバスの各楽器の平均的なA線の弦の長さ、太さ、張力を表にまとめた。楽器間でオクターブの違いはあるものの、楽器が大きくなれば太さも張力も大きくなっているのがわかる。弦の張力が5倍になったら指で押さえる力が5倍になるというわけではない。そこは勘違いしてはいけない。弦と指板の距離(弦高)も影響するし、太さやネックの握りやすさも関係する。どの楽器でも第一ポジションよりもハイポジションの方が押さえるのに必要な力が大きく、さらに押さえにくい手の形となっている。決して張力だけで押さえる指の力が決まるのではない。

一応、音の周波数と弦長、弦の線密度、弦の張力の関係を表す式を示す。この式を言葉で表現すると、「周波数(f)は弦の長さ(L)に反比例し、張力(T)と太さ(ρ)の比の平方根に比例する」ということになる。数式でみても言葉でみても難しい。もっと簡単に言うなら、弦の長さが短くなれば音程は高くなり、太さが細くなれば音程が高くなり、張力が高くなれば音程が高くなる。

ビオラにバイオリンの弦を張るとどうなるか?数式を悪用すれば色々なことが想像つく。ビオラにバイオリンのA線を張った場合、弦長が長くなり音程が低くなるので、そのぶん張力を高くしなければAの音はでない。バイオリンのE線と同程度の張力が必要となる。実際にそういう悪戯をしてみると、弦がきれるかどうかギリギリのところまで張ることになる。でも、たいていは切れずに弾ける。運が悪いと音程を上げた瞬間に弦が切れる。ビオラにバイオリンのE線を張ってA音にチューニングした場合、弦の張力はバイオリンのG線と同程度になる。ビオラの本来のA線の張力より低いのでかなりたるんだ感じを受けるが、一応弾ける。
こういった悪戯を子供用の分数楽器にも応用できる。子供の楽器で予備弦を常時保管しておくのは金銭的なリスクが大きい。分数楽器は1~2年ごとにサイズアップしていくので、よほど練習をしない限り、その期間に弦が切れる可能性は低い。そのため切れたら購入するというスタンスが多いのではないだろうか。もし重要なイベントの時に弦が切れてしまったら、大人の楽器の弦を短く切って使えばいい。もちろん張力がうまくあわないので非常に弾きにくいしきれいな音にはならない。でも、「弦が切れたから本番で弾けません」という最悪の事態は避けられる。そんなことをしなくても、弦が切れた場所によっては、結んで再利用ということもできる。
