弦の太さと弓の重量
前回までに弦の太さと音質について書いてきた。今回は、弦の太さと弓の重量についてまとめていきたい。
楽器によって楽器のサイズが違うのはだれでも知っている。そして、楽器が大きくなるにつれて弦が太くなっていくというのも何となくわかっている。ところが、弓の方の情報となると途端に不安になるものである。下に各楽器の弦と弓の平均的な値を並べてみた。各楽器で個性があるので、だいたいの平均的な数値と理解してほしい。決してこの表の値が普通でそれ以外が異端というわけではない。

この表を眺めていると面白い傾向が見えてくる。弓の重量と毛の本数はだいたい比例している。どの楽器でも重量を3倍するとだいたい毛の本数となる。それに対し、弓の長さは楽器が大きくなるにつれ短くなる。以前の記事でも書いたが、長さに関しては腕の可動範囲に合わせて作られている。
一方で弦の方を比べていくと、楽器が大きくなれば張力や太さが大きくなるのだが、その大きくなる比率が違う。バイオリンを基準にコントラバスの値を比べると、張力は5倍となっているのに対し、太さは2.5倍ほどである。コントラバスの弓の重量や毛の本数はバイオリンを基準にして考えると約2倍である。そう考えると、弦の太さと弓の重量や毛の本数の比はどの楽器でも似たようなものとなる。
この比がどの楽器でも似ているというのは楽器を演奏するうえではとても重要なポイントとなる。バイオリンを弾いていてもコントラバスを弾いていても、弓にかける力というのは似たような感じでできるのである。バイオリンだから力を入れずに軽く、コントラバスだから思いっきり力を入れて弾く、などということは絶対にしない。この感覚の同等性、微妙な違いというのは全部の楽器を弾いてみないことには理解しづらいが、とにかく楽器による差別をしなくていいというのが面白いところである。もちろん、まったく同じ力加減というわけではない。確かにコントラバスの方が力がかかっている。でも、見た目ほどの違いはない。
音質を決める弓の要素は「圧力、速度、接点」の3つである。圧力と表現してしまっているが、弓の重さや松脂による引っ掛かり(つかみ)も含まれる。弓の速度は私の感覚ではバイオリンの方が速い。それは、コントラバスの弓の方が短いせいでもある。もしコントラバスやチェロでむやみに弓を速く動かしてしまうと、弓が弦の上を滑ってしまい裏返った音しか鳴らない。それを防止するためにも松脂がバイオリンとは違った重いものになっている。チェロの松脂は粒子が荒いし、コントラバスの松脂はベッタリとしている。そのおかげで、弓による弦のつかみが強くなっている。接点は弦のどの位置を弓でこするかというのと、弦に接する弓の毛の量のことである。要するに駒寄で弾くか指板寄りで弾くかの違いと、弓を傾けて使う毛の量を減らすか毛の全面を使うかの問題である。
これらの3要素が絡んで楽器の音質を決めているので、単純に弦の太さと弓の重量や毛の本数だけで弓の圧力が似ていると言うわけにはいかない。でも、感覚としても数値と同じように似ているのである。
各楽器を弾くときの感覚を物理的な数値として示そうと試みたのだがうまく伝わるだろうか?
