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俳優Mさんとタバコで本音

俳優のM氏と私は、年齢も生き方も、もちろん顔の造作もまるで違う(ルックスの差は天と地だ)。
だが、男としての「背骨」というか、精神の根っこが妙によく似ていたという話。 (※今回も関係各所への配慮から、かなりオブラートに包んで書くのをご容赦願います)

もう20年近く前になる。
友人の脚本家が当時の社会問題に深く切り込んだ映画を撮ることになり、私も縁あって裏方として微力ながら足を突っ込んだ。

色々と独特な緊張感が漂う現場で、
B監督の人脈を頼りにキャスティングも難航を極めたが、奇跡的に実力と条件が合致し、主役を引き受けてくれたのがM氏だった。

結果から言えば、完成した作品でのM氏は圧巻だった。
見事に作品の看板を背負ってくれた。 だが、撮影中の私は正直、ハラハラしっぱなしだったのだ。

カメラが回っていない時のM氏は、拍子抜けするほど静かで、どちらかと言えば暗い影をまとっている。
「次のカットでちゃんとテンション上げられるのか?」と素人心に心配になるのだが、いざ「本番!」となると、恐ろしいほどの迫真で役に化ける。
オンとオフのスイッチが完璧なプロだった。

そんな素人が余計な心配をしながら、ニコチン切れで裏口へ。
スタジオ裏の喫煙所が、私の定位置だった。

大した役回りもない雑用係で、おまけに1日40本を消費する筋金入りのヘビースモーカー。煙をくゆらせているのが仕事のようなものだ。 そして、その場所に私に次ぐ頻度で現れたのが、主演のM氏だった。

煙の向こうで、延々と二人でチェーンスモークを決める。映画の真面目な話なんて一切しない。 お互いの生い立ち、ギャンブルの負けネタ、女の話、自身の偏屈な性格について――。彼もまた、私に負けず劣らずの煙草の量を吸い上げていた。

ある日、紫煙越しにストレートに尋ねてみた。
「Mさん、私どうしてもMさんに何やら影を感じてしまうのですよ」

彼は隠すでもなく、言いづらそうにするでもなく、淡々と胸の内を明かしてくれた。
女優Eとの結婚生活が数年で終わってしまったことの後悔。
会いたくても会えない我が子への思い。
自分自身が幼少期に両親の離婚で歪んだ青春を過ごしたからこそ、我が子に同じ思いをさせてしまう苦悩。
そして、「仕事そのものはどんな仕事でも全力でやるが、こだわりは無い」という、どこか悟ったような達観。


週刊誌の記者が聞けば飛びつくようなプライベートだが、彼は素人の私に対し、何の防壁も作らずに裸の言葉を置いていった。

なぜ、初対面の私にそこまで話してくれたのか。 芸能人だからと遠慮せずタバコを差し出すおっさんだったからか、あるいは煙の向こうに「自分と同類の臭い」を感じ取ったからか。

あれから長い年月が経ったが、M氏は俳優として大成している。
もちろんM氏の詳細なプライベートは知らないが、私が見聞きしている限り、やはり今もどこかこの変人のおっさんに似ているところがありそう(自己満足)


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