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2026パングランプリ東京

今年18回目となる「パングランプリ東京」。
2026年は「シナモンロール(シナモンを使った菓子パン)部門」、「チキンを使った焼き込み調理パン部門」、「レトロなパン(昭和・平成レトロを感じさせるパン)部門」の3部門で開催されました。

パングランプリ東京とは
町のベーカリーのための製パンコンテストで、メーカー主催のコンテストとは異なり、素材や製法にしばりがないが、実際に販売することを前提に、消費者ニーズをいかに商品化させられるかが審査基準となっています。

主催:東京都パン商工協同組合
共催:東京パン連盟工業協同組合、東京都学校給食パン協同組合、リテールベーカリー協同組合、東京青雲会。後援は全日本パン協同組合連合会、パン食普及協議会、東京都

受賞された皆さん、おめでとうございます。
わたしは今年も審査員をさせていただきました。

このコンテストはいつも、パンの詳細についてあまり公開されないのがもったいないので、
今回はこのnoteで書きます。清水美穂子個人として書いてみます。

最優秀東京都知事賞は「クグロフ フィユテ ポム カネル」

都知事賞を受賞した小島堅嗣さん

まずは、各部門で受賞されたパンをご紹介します。

最優秀グランプリ、東京都知事賞
小島堅嗣さん(東京製菓学校)の「Kouglof Feuillete Pomme Cannelle(クグロフ フィユテ ポム カネル)」

クグロフ フィユテ ポム カネル


ブリオッシュ生地にシナモンなどスパイス入りのバターを折り込み、りんごのコンポートも入れています。クグロフ型に、フィナンシェ生地を敷いてから生地を入れて焼いているのが特徴です。仕上げにはシナモングレーズ。よく見かけるベーシックなフォルムをしていながら、今まで味わったことのない、シナモンの菓子パンでした。
小島さんは実はシナモンが得意ではないのだそうです。そのため正解がわからなかった。それで周りの人に食べてもらって意見を聞いた。受賞できたのは、一人の力ではなかった、と受賞の言葉を感謝で締めくくっておられました。

シナモンロール部門グランプリ

須田孝太さん(須田屋株式会社)の「和香(わこう)ノワール」

和香ノワール

誰もが思わず目をみはるような、キラっと光る魅力的な三日月はデニッシュ生地で、一体どんな味がするのだろう?と、ときめきを感じました。とにかくお菓子のように映える。断面の層も美しいのです。折り込まれているのは白あんや白味噌を用いた特製フィリング。表面のツヤはチャイのナパージュです。シナモン味が弱めでしたが菓子パンとしては最高でした。

シナモンロール部門準グランプリ

岡本勝さん(須田屋株式会社)の「レコルト・ルージュ・ア・ラ・カネル(赤い実りのシナモンパン)」

レコルト・ルージュ・ア・ラ・カネル

駒野眞さん(株式会社サンセリテ)の「スパイス香るチャイロール」

スパイス香るチャイロール

チキンを使った焼き込み調理パン部門グランプリ

菊池敬太さん(株式会社 ル・スティル)の「チキンタコスフォカッチャ」

チキンタコスフォカッチャ

一食分のたんぱく質を摂取できるパンを目指したというこのパンはロースト小麦胚芽入りのフォカッチャに、圧力鍋で柔らかく調理した自家製のチキン料理をのせています。彩りを添えた紫たまねぎのピクルスとサルサソースも自家製です。

チキンを使った焼き込み調理パン部門準グランプリ

高橋圭佑さん(株式会社サンセリテ)の「手のひらタンドール窯の彩りデニッシュ」

手のひらタンドール窯の彩りデニッシュ

レトロなパン部門グランプリ


大見龍弥さん(有限会社亀屋)の「虎の巻パン」

虎の巻パン

亀屋さんで長年愛されてきたマーブルパンに巻かれているのは、オレンジとゆずのマーマレードをサンドしたスポンジケーキ。パン生地とスポンジ生地の間にはピーナツホイップクリーム。パンでロールケーキを巻くという手法やピーナツホイップが懐かしい。カットしないホールサイズは迫力がありました。

レトロなパン部門準グランプリ

酒井崇雅さん(株式会社エッセンゼーレ)の「純喫茶のコーヒー牛乳ホイップ」

純喫茶のコーヒー牛乳ホイップ

日本のパンならではの魅力について

毎回、このコンテストは部門のお題に対してさまざまな捉えかたがあることが興味深く、日本のパンならではのおもしろさを感じます。
たとえばシナモンロール。シナモンを使った菓子パン、とカッコで説明されているので、より広範囲なシナモンロールが集まりました。
シナモンロールをクグロフ仕立てにするとか、紅茶というかチャイ味を忍ばせるとか、発想が自由でおもしろかったです。
このおもしろさが、日本のパンの魅力の一つだと思います。日本は欧米に比べてパンの歴史が短い分、枠にとらわれず、すでにあるものを進化させてしまう。
それが心や体が心地よくなるような、つまり「おいしい」と感じるものであったらいい。
普段取材をしていても「この理由を書きたい」となる部分です。それはパンやお店のチャームポイント、職人さんのスタイル、魅力の一部分だからです。
審査委員長の日本パン技術研究所の原田昌博先生の講評より、「シナモンの量とパン生地の品質、トッピングやフィリング、練り込み原料との組み合わせの妙技や他の香辛料との相乗効果、感性など」を審査のポイントとしています。

チキンもおもしろかった。同じ「チキンを焼き込んだパン」というお題でも、今回の応募作品はメキシコ、イタリア、インド、韓国などなど、世界の料理をイメージしたパンになっているのを見ると、実に興味深かったです。それがパンとして果たしておいしいのか?食べる人に意味なりメッセージなりを伝えられているのか?など考えながら試食しました。
料理を組み合わせるなど、調理技術や経時劣化などの点でハードルもあがると思うのですが、レシピの丁寧さを見ると、大切に考え抜かれたパンなのだなぁと、感じ入ったりもしました。ちなみに、市販の素材を使う人もあります。取材する立場からすると、それはあえて書きたい特徴的なポイントにはならないのですが、もしも市販品を使うことで人件費や原価を抑え、持続可能な仕事にすることができるなら、それはNGではないと思うのです。
あと、たまに誤解があるのですが、「焼き込み調理パン」は具材を一緒に焼かなくてはならないという原則があります。

「レトロ」という言葉もお題として簡単なようで難しいですよね。それは単に古風ということではなく、懐古の感情を意味しているのですから。
わたし個人は、懐かしい昭和や平成のパンを、今流の技術や素材でアップデートしたものを見てみたいと思っていました。
これは世の中のパン屋さんにどんどん取り組んでもらいたいテーマだと思っています。お母さんの味とかソウルフードのように、昔食べて育った、古き良き思い出のある食べもの(コンフォートフードといいます)を、わたしたちの脳は、おいしく感じる。それを当時より発達した設備や技術、より良い素材でつくったなら、おいしくないわけがないのです。

今回もとても勉強になるコンテストでした。
お会いできた皆さま、ありがとうございました。









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