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達城久裕著(2025)『サイバー攻撃 その瞬間 社長の決定』関通サイバー攻撃対策室

実際に被害にあった企業のリアルが伝わってくる

わたしも以前所属していた組織で、ランサム攻撃を仕掛けてくる集団から攻撃対象とされ、その対策に尽力した経験がある。とはいえ大きな組織であり、攻撃の情報は米国から日本、そしてわたしの所属していた組織に連絡があり、相応の支援も頂いた事もあってか、実際には攻撃されることはなく、ランサム攻撃を仕掛けるという団体も壊滅したという情報がその後流れたこともあって、安堵したものです。

そんな事もあって、ランサム攻撃対策のノウハウ含め、今はその所属を離れ転職しサイバーセキュリティ対策等の専門家としてコンサル活動をしています。

そんなわたしも、大阪急性期・総合医療センターや名古屋港、KADOKAWAその他事例に関しては詳しいけれど、実際にランサム攻撃にあった当事者の見解というのは、なかなか聞けるものではありません。

本書は、実際にご自身が経営されている企業がランサム攻撃に見舞われ、その対応や考え方が詳細に書かれており、ランサム攻撃対策ならびに攻撃を受けた際の対応すべきことを考察する上でも大変参考になる本だと思います。

本書は株式会社関通のランサム攻撃で、物流を担っている企業であるため、関係するクライアントが多く、被害に関してはサーバーの暗号化、バックアップの一部損傷、物流の影響を受けたクライアント企業数500社以上という状態だったとのこと。

本書全体でかなり詳しく書かれているのは、対応資金を見込んでいるサイバー保険の損害賠償範囲と額である。そして、これが事後、色々と会合を重ねてもなかなか決定せず、著者のモヤモヤやイライラ感が文章から伝わってくることである。

またサイバーセキュリティ関係の企業複数社がこの会社に絡んでいるけれど、当事者に役に立つセキュリティ関係会社と役に立たないセキュリティ会社が、この本の中に出てくるが、この観点は現在多くの企業でセキュリティに関してベンダーやコンサルにお願いしている部分があると思うが、いざという時に「本当に役立つ視座を提供できるか」という観点で、再度見直してみることは重要だと感じる次第。ぜひその観点について本書を読んで理解してもらうと良いかと思う。(よって、ここでは記述を伏せておきます。)

そして、確かに関通はランサム攻撃を受けた被害者なのだけど、それにより自社が抱えていた物流について停止させてしまうことにいたったユーザーにとっては加害者でもあるということ。ここは実際にランサム攻撃にあった時に真っ先に理解すべき重要なところである。自社サービスを利用してくれているクライアント企業に対しては、十分な謝罪と的確な情報提供、そして補償関係含めた配慮が欠かせない。

また被害者としての立場からは、ランサム攻撃で影響を受けた自社のシステムを、どのように回復に至らせるのか、滞っている業務をどのように少しでも再開に向かわせるのか、著者が経営者ということもあり、その辺のさばき方についても考察できる内容を提供している。従業員への配慮も必要になってきます。

企業としては自社だけに集中するだけでなく、メディアも含めたステークホルダーに対し、的確に情報を流し、事業継続のための知恵を巡らしていく、そのリアルを感じられる良書だと思う。特に中小企業の経営層の方々は、明日は我が身と思いながら一読してもらいたい。そして、日々のサイバーセキュリティ対策の重要性に気づいてもらいたい。

本書で一番改善が必要なのは、サイバー攻撃を対象とした損害保険について、その査定を迅速に行い、早急な損害保険額の提示が、経営者の判断を助けるということかも知れない。やはり急な対応資金というのは経営者の判断も悩ますものであるようです。

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