淡い水色の君とはぐれないように
「似合う?」
待ち合わせ場所に現れた彼女は、少し照れくさそうに両手を後ろで組んだ。
淡い水色の浴衣。
髪はいつもより高い位置でまとめられていて、小さな金魚の髪飾りが揺れている。
「……かわいい」
思わず口からこぼれた。
「え?」
「すごく似合ってる」
彼女は一瞬目を丸くして、それから頬を赤く染めて笑った。
「ありがとう」
その一言だけなのに、僕まで照れくさくなる。
今日はいつもの制服姿とも私服姿とも違う。
少しだけ大人っぽくて、でも笑うといつもの彼女で。
目を合わせるたび、胸が落ち着かなかった。
屋台が並ぶ参道。
焼きそばの香り、子どもたちの元気な声、遠くで鳴る祭り囃子。
提灯の灯りが夜を少しずつ彩り始める。
「何食べる?」
「わたあめ!」
即答する彼女に思わず笑う。
「子どもみたい」
「失礼だなあ。夏祭りに来たら絶対食べるもん」
そう言って頬をふくらませる。
彼女はわたあめを少しちぎると、僕の前に差し出した。
「はい」
「え? くれるの?」
「うん」
照れながら口を開けると、彼女の指先がほんの少しだけ唇に触れた。
「あっ……」
彼女はそっと手を引っ込める。
「……甘いね」
思わずそうつぶやくと、
「おいしいでしょ?」
いたずらっぽく笑う。
「……うん」
わたあめを片手に歩きながら、
射的をのぞいたり、何を食べようか迷ったり。
ただ一緒に歩いているだけなのに、
不思議なくらい特別な時間だった。
「ねえ」
彼女が袖を軽く引っ張る。
「人、多いね」
気づけば周りは、前へ進むのも大変なくらいの人混みになっていた。
「はぐれないで」
慣れない浴衣で小さな歩幅になっている彼女にそう言うと、
彼女は少しうつむいて、ためらうように言った。
「じゃあ……手、つないでもいい?」
その一言に、心臓が大きく鳴った。
「……うん」
そっと手を重ねると、彼女の指先は少し冷たくて、優しく握り返してくれた。
「えへへ」
照れたように笑う横顔を見た瞬間、夜空に最初の花火が咲く。
大きな音が響き、色とりどりの光が夜を染める。
みんなが空を見上げる中、
僕だけは、隣にいる彼女を見ていた。
その日、一番綺麗だったのは花火じゃない。
僕の手を握って、少し照れながら笑う、
浴衣姿の彼女だった。
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