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コロの窓辺〜犬の気持ち〜
こちらの投稿は、公開済「コロの窓辺」をコンパクトに纏めたショートバージョンです。
本編はこちら
1.ボクの仕事
ボクの名前はコロ。
あの日、初めてこの家にやってきて毛布に包まれていたボクを、キミちゃんが抱っこしてそう呼んでくれたからだ。キミちゃんが名前を呼ぶと、嬉しさでボクの心臓は速く動く。ボクの毎日はキミちゃんを中心に回っていて、キミちゃんの匂いや音を感じながら「待つこと」がボクの大切な仕事だ。
毎朝、キミちゃんがボクの頭を撫でて学校へ出かけると、ボクは窓辺に座り、小さな背中が見えなくなるまで見送る。キミちゃんの心はいつもボクの方を向いていると知っているから、それが待つ力になるんだ。待つことは退屈ではなく、光や風が運ぶ外の匂いを感じながら過ごす時間だ。でも本当に待っているのは、夕方のオレンジ色の光とともに聞こえてくる、キミちゃんのウキウキと弾むような足音だ。
ドアが開き、「ただいま」の声とともに腕に飛び込むと、学校のいろんな匂いが混ざったキミちゃんの匂いが一日の緊張を溶かしてくれる。そして、ご飯の時に頭をトントンと叩く「美味しい魔法」をかけてもらう瞬間こそが、ボクの毎日の真ん中にあるキラキラした光なんだ。
2.静かな匂い
ある日、いつものように窓辺でオレンジ色の光の中で待っていたけれど、キミちゃんのウキウキする足音はいつまでも聞こえなかった。夜の深い匂いが窓の外を覆い、帰ってきたパパの足音は重く、ママの足音は不安定だった。
キミちゃんの代わりにママがご飯をくれたけれど、魔法はかからず、ママの目からはしょっぱい匂いのする水がこぼれていた。ボクはご飯を残し、少し匂いが寂しくなったキミちゃんの部屋のドアの前で丸くなった。ある日、家にはたくさんの人がやってきて、黒くて悲しい匂いや涙のしょっぱい匂いで溢れた。
みんながいなくなった後、パパとママが散歩に連れて行ってくれたが、笑い声はなく、心臓の奥から鳴るような深い悲しみの青い匂いがした。ボクはその匂いを消したくて彼らを舐めると、強く抱きしめてくれた。それでも、ボクの「待つ仕事」が終わるはずはなく、何度も外の景色が変わる中、窓辺でキミちゃんを待ち続けた。
3.カサカサの匂い
光が金色に変わり、風に乗ってカサカサという乾いた甘い匂いが部屋に入ってくる季節になった。キミちゃんはこの季節が大好きで、綺麗に色づいた葉っぱを見せてくれたり、公園で一緒に走り回ったりした。葉っぱを蹴散らすザクザクという音と、キミちゃんの大笑いする声が、このカサカサの匂いにはいつも混ざっている。
キミちゃんが帰ってきたらまた一緒に走ろうと思いながら、ボクは今日もドアが開かないキミちゃんの部屋の前にいる。
4.ツンとする匂い
景色は白く変わり、窓ガラスが冷たくなる季節が来た。ツンと冷たい白いものが地面を覆うと、キミちゃんは大喜びでボクと外へ出て、雪だるまを作ってくれた。ボクの手足は冷たかったけれど、キミちゃんの太陽みたいな笑い声が温めてくれた。
お正月になり、親戚の人がたくさん来ても家の中は静かで、みんなの寂しい匂いを消したくてボクは尻尾を振った。家の中でキミちゃんの匂いのするものを見つけてママに見せると、ママはまたしょっぱい水を出して泣いたので、ボクは夢中でママの顔を舐め続けた。
5.青々とした匂い
白いものが溶け、青々とした新しい希望の匂いが窓から入ってくるようになった。地面には色とりどりの花が咲き、甘い匂いや草の匂いがした。この季節、キミちゃんは野の花で首輪を作ってくれて、「似合うね」と笑ってくれた。
キミちゃんが帰ってきたらまた一緒にこの匂いを嗅ぎたい。でも、ボクの体は動かしにくくなり、散歩もすぐ疲れるようになった。パパとママはボクを抱きしめる回数が増え、その手からは消えない心配の匂いがしていた。
6.焼けるような光の匂い
熱を持った光がボクを包み込み、窓ガラスから焼けるような暑い匂いがする季節になった。ボクはうとうと眠ることが増えたけれど、この季節はキミちゃんが水遊びをして一番長く一緒にいてくれた。
窓の外の景色は何度も変わり、いつしか角を曲がる人も見えなくなってきたけれど、ボクはフカフカの毛布の上でずっとキミちゃんを待っていた。
7.キラキラの匂い
青々とした匂いがする新しい季節がまた巡ってきた。ボクは毛布の上で眠っていて、瞼が重くて開けられず、体の力が抜けていきそうだった。パパとママが優しく頭を撫でてくれる声も遠くなり、部屋が暗くなって少し怖くて寂しくなった。でも、ボクの仕事は待つことだから、起きなくちゃいけない。
その時、遠い場所から「コロ!」とボクを呼ぶ声が聞こえた。それは間違いなくキミちゃんの声で、強い喜びで耳が動いた。いつの間にかキミちゃんはすぐそばに来てくれていて、背中を優しく撫でてくれた。嬉しくて心臓がバクバクし、精一杯尻尾を振った。「コロ、行こう」というキミちゃんの声を聞くと、体が布団から出たように軽くなった。目の前には、朝でも午後でもない、もっと暖かくて優しいキラキラとした光が見えた。その光の中には悲しみや心配の匂いはなく、ただボクの大好きなキミちゃんの匂いと喜びの匂いだけが満ちていた。
キミちゃん、一緒に行けるね。大好きな匂いに溢れた光の洪水がボクとキミちゃんを包み込む中、ボクの心からの「ありがとう」という言葉が響いた。
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