滅びの美を咲かせる夜
奥浜名湖の夏が、年々、内向きになっていく。
かつてのような、夜通し腹の底を揺らすような熱気はもうない。打ち上がる数は減り、時間も一時間。仕方のないことだと頭ではわかる。湖面を渡る風は、どこか昔より静かになった気がする。
それでも、である。
漆黒の闇を裂いて咲く、星形も、ハート形も、紫陽花色の錦冠も。あれはあれで見事だ。若い衆が考えたんだろう、粋な演出に湖畔のあちこちから歓声が上がる。私もグラスを傾けながら、素直に「ほう」と呟く。
だが、私の目は、どうしても一つの玉を探してしまう。
単色。橙。十号玉の柳。
天空で破裂した瞬間、夜空いっぱいに大きく枝を広げ、残響を置き去りにするように、ただひたすらに流れ落ちる。金色の雨。金色の滝。そして、何の未練も残さず、闇に溶けて消える。
あの、抗わぬ滅び方に、私は毎年、酔眼を奪われるのだ。
咲き切って、そして散る。その潔さ。そこに、日本人がずっと見つめてきた幽玄がある。もののあはれがある。人の一生も、祭りの賑わいも、所詮はこの一筋の光のようなものではないかと、三ヶ日の夜風に吹かれながら、柄にもなくそんなことを考えてしまう。
華やかな時代は、移ろう。
闇に溶けていく柳だけが、不思議といつまでも心に残る。
さあ、グラスが空いた。来年もまた、この柳を見るために生きようか、などと大袈裟なことを思う、夏の夜である。
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