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すべての戦争は自衛から始まる

作家・ドキュメンタリー作品監督の森さんによる、戦争をめぐる論考てす。元は2015年発行の単行本を2019年に文庫化したものですが、東アジア情勢がきな臭くなってきた今読んでも、古びた感じは受けません。

森さんの論考は、20世紀以降の戦争の歴史に学び、戦争は常に自衛意識の拡大から始まることを中心にすえています。侵略を目的とした軍隊を持つ国はなく、どの国も自衛のための軍隊を、建前としては標榜しています。何しろ、しょっちゅう近隣アラブ諸国を攻撃しているイスラエルの軍隊の名称は「自衛軍」。いまイランに泥沼のような戦争を仕掛けているアメリカのペンタゴンは「国防総省」。東シナ海・南シナ海へと膨張している中国の軍隊は「人民解放軍」。

しかし自衛の意識は簡単に肥大化し、自衛を大義として人は人を殺し、戦争を引き起こしてきました。大日本帝国の戦争目的は、欧米列強からのアジアの解放にあるとされていました。ナチスドイツによるホロコーストも、ゲルマン民族をユダヤ人の脅威から守るためとされました。

銃社会アメリカでは、たびたび銃の乱射事件が起こります。そのたびに銃規制が話題に上るものの、全米ライフル協会による巻き返しが圧倒し、議論は尻すぼみとなります。ライフル協会による「銃を手にした悪人に対抗できるのは、銃を持った善人だけだ」とする主張は、少なくともアメリカ社会では強い同感を持って受け入れられているのでしょうね。銃を持たない日本社会からみたら、バカバカしい悪循環にしか思えないのですが。

日本が戦争をしないために考えていくことの重要性を再確認させてくれる本です。


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