石川達三『青春の差鉄』 人差し指のさき。〜棚とキオクの草子たち〜
第五回
『青春の差鉄』
出会いは19歳、親父の書庫というより、本が詰まっていた段ボールから、石川達三『青春の蹉跌』を発見した。爽やかそうなタイトルのみに惹かれて、「蹉跌」の意味も知らなく読み始めた私は、読み終えた時、なんとも言えない気持ちになり、友人にすぐ薦めた。
おそらく、その感情を誰かに押し付けたかっ・・・、共感して欲しかったのだろう。またそうしてくれそうな友人を私は間違いなく選んだ。言わずもがな、私たちは『青春の蹉跌』について感想を言い合った。
この『青春の蹉跌』、親父の本の中から読んだもので、1番、心に残ったものである。2番は言うまでもない、フランス書院である。そう、フランス書院。ニーチェとショーペンハウエルの間に挟まれていた。私は何かわからなく、人差し指をかけ、手に取る。タイトルはおそらく『女警官キャシー』的なものだったと思う。
言わずもがなフランス書院は官能小説である。もちろん当時の私は知る由もない。知る由もないが、ページをめくる手は止まらなかった。なぜなら、中学生の私にはとても刺激的であったからだ。そして知ったのだ。文字がこれほど想像力を掻き立てるものだということに。
そして、思う。あの時、私が『愛と生の苦悩』を手に取っていたら、今と違う私がいたかもしれない、と。
