2024年フェイバリット・フィルムズ
たかだか1年という歳月は、あっというまに経過する。肩の力をぬいてすごしたかったはずなのにさまざまなことに時間を割かれ、気づけばこのnoteを更新できないまま1年間で自分の気に入った映画を列挙する記事が連続することとなってしまった。
[2024年FAVORITE](順不同)
『瞳をとじて』(ビクトル・エリセ)
『静かに燃えて』(小林豊規)
『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』(マルコ・ベロッキオ)
『ヒットマン』(リチャード・リンクレイター)
『孤独の午後』(アルベール・セラ)
『スユチョン』(ホン・サンス)
『ザ・バイクライダーズ』(ジェフ・ニコルズ)
『陪審員2番』(クリント・イーストウッド)
『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』(アレクサンダー・ペイン)
『ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争』『Scénarios』『Exposé du film annonce du film Scénario』(ジャン=リュック・ゴダール)
私にとって、2024年はビクトル・エリセ Victor Erice 監督の新作『瞳をとじて』(Close Your Eyes, 2023)が公開された年として記憶される。『マルメロの陽光』(Dream of Light, 1992)いらいおよそ30年の時を経て誕生したエリセによる長篇劇映画は、いわゆる巨匠の手遊びといったものでは到底なく、真摯で愛にあふれる真の意味で傑作という言葉がふさわしい比類なき作品であった。
また、個人的には日本映画で注目すべき作品が多くあった。三宅唱 Sho Miyake 監督と濱口竜介 Ryusuke Hamaguchi 監督それぞれの新作がまたもや同年公開となりいずれも優れた作品だったが、それ以上に知名度では劣る小林豊規 Toyonori Kobayashi 監督の『静かに燃えて』に触れるべきだろう。長篇劇映画としては第一作でありながら、同時に遺作でもあるという『静かに燃えて』は、2018年に撮影されその後公開の目処が立たぬまま2023年に日の目を見たが、まもなく小林豊規監督は亡くなられてしまう。ごく平易で古典的でありつつも、卓抜というほかない画面とその連鎖は、ありふれた舞台装置を驚くべき時=空間の迷宮に仕立て上げてしまう(この傑出した作品は、2025年3月にも池袋シネマ・ロサにて再上映される。必ず足を運ぶべき必見の作品だ)。
ここで北アメリカに目を向けてみよう。2024年も多くのすばらしいアメリカ映画が公開されたが、合衆国はクリント・イーストウッド Clint Eastwood 監督の新作にじゅうぶんなスクリーンを与えなかったという汚点をなにより恥じるべきである。なぜなら、『陪審員2番』(Juror #2, 2024)と名付けられたこのイーストウッドの新作は、『十二人の怒れる男』(12 Angry Men, 1957)いらいの法廷映画でありつつ、その射程は合衆国そのものを含んでさえいる。21世紀のアメリカ映画がなしうる最良の達成のひとつとして記憶さるべきだ。
最後に、ジャン=リュック・ゴダール Jean-Luc Godard 監督の映画は、ゴダール自身が死してなお、挑発的で、刺激的で、そしてなにより希望に満ちた美しい作品であることを書き残して、この文章を終えたいと思う。
