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【ガチレビュヌ 第倜】 『うずたき』〜恐怖の枊巻きに匕き蟌たれる䌊藀最二の䞖界

こんにちは。日本民俗孊倧奜きのrenです。きっず、これを読んでらっしゃる方も、民俗孊が奜きでしょうから䟋に挏れず読曞奜きなのではないか、ずいう偏芋のもず、これたで手に取った民俗孊に関係があったりなかったりする曞籍の私的レビュヌを綎っおいたす。興味を持った方、すでに読了の方にも楜しんでいただけたすず幞いです。

黒枊町ずいう「閉じた共同䜓」の恐怖

『うずたき』の舞台ずなる黒枊町は、枊巻きの呪いに䟵食され続ける奇怪な町です。䜏民たちは、目に芋えない「枊」の力にじわじわず支配され、やがお心も䜓もその圢状に呑み蟌たれおいきたす。物語が進むに぀れお、䞻人公たちはこの町を芆う呪いの栞心ぞず少しず぀迫っおいくのですが、私が䜕床読んでも匷く惹かれるのは、単なる「䞍気味な化け物が出る話」ではなく、閉ざされた共同䜓そのものが恐怖の発生源になっおいるずいう構造なんですよね。

これ、日本民俗孊における「村」の抂念ず驚くほど重なる郚分がありたす。柳田國男が『遠野物語』などで描いた日本各地の䌝承の倚くは、倖郚ず隔絶された集萜の䞭で独自の因習や信仰䜓系が育たれ、それが時に「祟り」や「怪異」ずいう圢で衚出するずいうパタヌンを持っおいたす。黒枊町もたさにこの構造の珟代的な倉奏だず蚀えるでしょう。町の倖に出ようずしおも出られない、逃げ堎のない閉塞感。これは実際の民俗瀟䌚が抱えおいた「村八分」や「他所者排陀」の心理ず地続きにあるものです。䌊藀最二本人が意図しおいたかどうかは分かりたせんが、結果ずしお圌が描いた恐怖は、日本人の集萜意識の奥底に眠る「同調圧力」ぞの根源的な恐れを刺激しおいるず私は芋おいたす。

最近のダヌクファンタゞヌ系の挫画やラノベを読んでいるず、「異䞖界に閉じ蟌められる」系の恐怖衚珟は倚いんですが、たいおいは異䞖界ずいう倖郚装眮に恐怖を担わせおいたす。でも『うずたき』が怖いのは、逃げようず思えば物理的には逃げられるはずの、ごく普通の日本の町から出られないずいう点。異䞖界転生モノが「倖偎の異物」で恐怖を䜜るのに察し、䌊藀最二は「内偎の腐敗」で恐怖を䜜っおいる。ここの違いは、実は民俗孊的にもかなり重芁な芖点だず思っおいたす。

枊巻き文様が持぀、もう䞀぀の意味

䌊藀最二䜜品の恐怖衚珟を語る䞊で欠かせないのが、あの緻密なペン画による枊巻きの描写です。枊巻きの圢状やそれに付随する奇怪な生物たちの描写は、恐怖ず矎しさが共存する独特の感芚を読者に䞎えたす。しかし、ここで少し芖点を倉えおみたしょう。「枊巻き」ずいうモチヌフは、実は日本の叀代文化においおも極めお重芁な意匠ずしお登堎するんです。

瞄文土噚に刻たれた枊巻き文様、募玉のS字曲線、泚連瞄のねじれ構造——これらはいずれも「埪環」「再生」「生呜゚ネルギヌの流動」を象城するものずしお、叀代の人々の信仰䜓系に組み蟌たれおいたした。枊は単なる幟䜕孊暡様ではなく、生ず死、秩序ず混沌が絶えず入れ替わり続ける「宇宙の呌吞」のようなものずしお捉えられおいたわけです。

぀たり䌊藀最二が『うずたき』で遞んだモチヌフは、実は日本人の集合的無意識の奥深くに刻たれた、極めお根源的な図像だったのではないか——そう考えるず、この䜜品がなぜここたで倚くの日本人読者の心をざわ぀かせるのか、腑に萜ちる郚分がありたす。私たちは頭で理解する前に、身䜓のどこかで「枊巻き」ずいう圢そのものに、畏れず魅力を同時に感じ取る回路を持っおいるのかもしれたせん。この䜜品の恐怖は、絵の巧みさだけでなく、こうした文化的な蚘憶ぞの揺さぶりによっお増幅されおいるず蚀えるでしょう。

䜙談ですが、最近の少幎挫画でも「螺旋」や「枊」を胜力のモチヌフに䜿う䜜品は少なくありたせん。忍者ものの必殺技から始たっお、呪術系のバトル挫画たで、螺旋ずいう圢状はどこか「力の高たり」を衚す蚘号ずしお消費されがちです。でも䌊藀最二の枊は、力の高たりどころか「力を奪われおいく枊」なんですよね。゚ネルギヌを収束させる蚘号を、あえお厩壊ず喪倱の蚘号ずしお反転させた——このひねりこそが、圌の䜜家性の栞なんじゃないかず個人的には思っおいたす。

「呪い」が䌝染しおいく構造の巧みさ

この䜜品の恐怖衚珟の巧みさは、ストヌリヌテリングの構成力にも衚れおいたす。緊匵感ず䞍安感が絶劙に絡み合い、謎が明らかになるたびに新たな謎が生たれる構成は、読者を䞀瞬たりずも飜きさせたせん。この「解決したはずなのに、さらに深い闇が埅っおいる」ずいう倚局構造は、たさに日本の怪談や䌝承が持぀「語りの入れ子構造」を圷圿ずさせたす。

民俗孊の䞖界では、怪異譚はしばしば単発で終わらず、䞀぀の怪異が別の怪異を呌び蟌み、集萜党䜓、あるいは䞀族党䜓を巻き蟌んでいく「䌝染する呪い」ずしお語られるこずが倚くありたす。有名な䟋で蚀えば、特定の家系に代々䌝わる祟りの話や、ある土地に足を螏み入れた者に次々ず灜いが降りかかる「祟り地」の䌝承です。黒枊町における枊巻きの䟵食もたさにこの構造を螏襲しおおり、個人の悲劇が町党䜓の運呜ぞず拡倧しおいくプロセスが、恐怖のスケヌルをどんどん抌し広げおいきたす。

䌊藀最二がここで巧みなのは、この「䌝染」を芖芚的にも物語的にも衚珟し切っおいる点です。人物の髪が枊を巻き、身䜓そのものが枊の圢状に倉圢しおいく描写は、呪いが「抂念」ではなく「物理珟象」ずしお町を䟵食しおいく様を生々しく芋せ぀けたす。民俗孊的な怪異が、口䌝えの物語ずいう抜象的な圢で䌝染しおいくのに察し、䌊藀最二はそれを挫画ずいうビゞュアルメディアの特性をフルに䜿っお「目に芋える䌝染」ずしお描き切った——ここに圌の䜜家ずしおの独自性があるず私は考えおいたす。

これ、実はグルメ挫画で異䞖界の魔物を「芋た目のたた」食材ずしお描くタむプの䜜品ずも通じるずころがあっお、「抂念を絵ずしお物理化する」ずいうアプロヌチ自䜓は少幎挫画の王道でもあるんです。ただ、あちらが奜奇心をくすぐる方向に物理化を䜿うのに察し、䌊藀最二は嫌悪ず恐怖の方向に振り切る。同じ「絵で説明する」技術でも、向かう先がたったく逆ずいうのが面癜いずころですね。

集団の狂気ず、個人の心理が亀錯する瞬間

䌊藀最二は、ホラヌを通じお人間心理の深淵を探る名手でもありたす。この䜜品では、登堎人物たちが盎面する恐怖や狂気が、人間の本質を浮き圫りにしおいきたす。圌らの遞択や行動は、読者自身の心の奥底にある恐れや䞍安を映し出し、深い共感を呌び起こすのです。

ここで泚目したいのは、「個人の狂気」ず「集団の狂気」がどのように亀差しおいくかずいう点です。民俗孊における「憑䟝珟象」の研究では、個人が特定の存圚に取り憑かれたずされる珟象が、実は共同䜓党䜓の抑圧や緊匵状態を象城的に衚珟する装眮ずしお機胜しおいたケヌスが数倚く報告されおいたす。぀たり、䞀人の人間が「おかしくなる」ずいう出来事は、実際にはその人個人の問題ではなく、共同䜓が抱える芋えない歪みが、最も匱い立堎の人間を通しお噎き出した珟象だったのではないか、ずいう解釈です。

黒枊町の䜏民たちが次々ず枊巻きに䟵食されおいく様子も、この構図ず重ねお読むず非垞に興味深く芋えおきたす。圌らは個々に「狂っお」いくように芋えお、実は町ずいう共同䜓党䜓が抱える閉塞ず歪みが、䞀人ひずりの身䜓を通しお衚出しおいるだけなのかもしれたせん。そう考えるず、この䜜品で明かされおいく真実は、単なるホラヌの萜ずしどころを超えお、「共同䜓ずは䜕か」「個人はどこたで共同䜓から自由でいられるのか」ずいう、非垞に重たい問いを読者に投げかけおいるように思えたす。

個人的には、この構造は珟代の孊園ものの閉塞感を描く䜜品矀ずも地続きだず感じおいたす。クラスずいう小さな共同䜓の䞭で、誰か䞀人が「浮く」こずで秩序が保たれる、あの息苊しさ。黒枊町のスケヌルは町党䜓ですが、そこで起きおいるこずの心理的なメカニズムは、教宀の䞭で起きおいるこずず驚くほど盞䌌圢なんですよね。

恐怖の裏偎にある、静かな矎しさ

䌊藀最二の䜜品は、圌の緻密なペン画が生み出す異様な䞖界芳で知られおいたす。この䜜品でも、その特異なビゞュアルは健圚で、现郚にわたるディテヌルが読者の想像力を刺激し、芖芚的にも粟神的にも恐怖を匕き出したす。

しかし私が個人的に匷調したいのは、この恐怖が決しお「気持ち悪いだけ」で終わらないずいう点です。枊巻きずいう圢状そのものが持぀、ある皮の様匏矎——曌荌矅や家王、着物の文様にも通じるような、日本的な「装食ずしおの恐怖」が、この䜜品には確かに存圚しおいたす。恐ろしいのに、目が離せない。気持ち悪いのに、矎しい。この矛盟した感芚こそが、䌊藀最二䜜品が単なるスプラッタヌホラヌず䞀線を画す最倧の理由だず私は考えおいたす。

民俗孊的な芖点で芋れば、日本の劖怪画や地獄絵図もたた、恐怖ず矎が同居する衚珟圢匏ずしお長い歎史を持っおいたす。鳥山石燕の劖怪画然り、地獄草玙然り。恐ろしいものを、あえお矎しく、䞁寧に描き蟌むこずで、人々はその恐怖を「鑑賞できるもの」ずしお自分の䞭に取り蟌んできたした。䌊藀最二の緻密なペン画も、たさにこの系譜に連なる珟代の「劖怪絵巻」なのではないでしょうか。読み終えたあず、恐怖ず同時に奇劙な満足感が残るのは、こうした日本的な恐怖衚珟の䌝統が、無意識のうちに私たちの䞭で䜜動しおいるからなのかもしれたせん。

「うずたき」が瀺すもの

『うずたき』は、䌊藀最二の恐怖衚珟の代衚䜜でもあり、ホラヌ挫画の新たな可胜性を瀺す䜜品です。枊巻きずいう極めおシンプルな図圢䞀぀から、これほどたでに重局的な恐怖ず物語を玡ぎ出せるこずに、あらためお驚かされたす。

この䜜品を通じお、圌の倩才的なストヌリヌテリングず芖芚衚珟を再確認できるだけでなく、その奥に眠る日本人特有の「共同䜓ぞの恐れ」「埪環するものぞの畏れ」「矎しさず恐怖の同居」ずいった、民俗孊的なテヌマの数々を読み取るこずができたす。恐怖だけでなく、その背埌にある人間性ぞの掞察も楜しめる䜜品ずしお、倚くの読者にお勧めしたい䞀冊です。

ここたで読んでくださっおありがずうございたす。「ちょっずこの本に興味が湧いたな」「以前読んだけどもう䞀床読み返しおみようかな」なんお感じた人、是非是非蚘事ぞの高評䟡マヌクをポチッずお願いしたすnoteに䌚員登録しおなくおもポチれたす


【この本の情報】
曞名うずたき新装版
著者䌊藀最二
出版瀟小孊通

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