国境を越えて強制失踪に向き合う―AFAD地域会議に参加して
7月17、18日の2日間、タイ・バンコクで開かれたAFAD(Asian Federation Against Involuntary Disappearances、アジア強制失踪反対連盟)の地域会議「Truth Beyond Borders」に参加しました。
AFADは、アジア各地で強制失踪問題に取り組む被害者家族団体や人権団体のネットワークです。会場には、フィリピン、タイ、パキスタン、スリランカ、バングラデシュ、ネパール、インドネシアなどから、強制失踪被害者の家族や人権活動家が集まりました。

Free2Moveからは共同代表の朴と理事の松田が出席。日頃から連帯している韓国の北朝鮮人権団体NKHR(북한인권시민연합、北韓人権市民連合)のメンバーとともに、韓国チームとして参加しました。
1日目は、強制失踪に関する調査と記録、被害者家族への心理社会的支援、キャンペーンや政府・国際機関への働きかけなどが取り上げられました。2日目は女性の経験に焦点を当て、強制失踪が残された家族の生活に与える影響について考えました。
被害を記録し、「見える形」にする
1日目の発表で特に印象に残ったのは、フィリピンの被害者家族団体FINDが取り組む「Regional ED Map」です。EDはEnforced Disappearance、強制失踪を意味します。
各地で起きた強制失踪を地図上に示し、一つひとつの事件を地域全体の問題として可視化する取り組みです。
証言を集め、事実を正確に記録することは活動の土台です。一方で、その記録をより多くの人に届けるためには、地図や写真、映像など、初めて問題に触れる人にも分かりやすい形にする必要があります。
この取り組みは、北朝鮮による人権侵害や帰国事業による家族の分断を伝える上でも参考になると感じました。
「やめろ」だけでなく、その先の希望を示す
グループワークでは、「キャンペーンとロビー活動」「心理社会的支援と家族」「調査と記録」「ジェンダー」の四つのテーマについて、今後もっと行うべきこと、新たに始めること、やめることを話し合いました。

その中で心に残ったのが、政策提言や政府への働きかけには「HOPE(希望)」が必要だという意見です。
人権団体は国家に対し、「人権侵害をやめろ」「弾圧をやめろ」と訴えます。それはもちろん必要です。しかし、反対を表明するだけでなく、その後にどのような社会をつくりたいのか、政府に何を実現してほしいのかまで示すことが大切ではないか、という提案がありました。
若い世代に問題を届けるため、長い報告書や従来型の活動だけに頼らず、ショート動画などの新しい発信方法に力を入れるべきだという意見も出ました。
タイと韓国の民主化運動
タイの民主化運動や、国家による弾圧をめぐる発表も印象に残りました。

国や時代、政治的背景は異なりますが、国家権力による抑圧を記録し、被害者や家族が裁判や真相究明を通じて責任を問い続ける姿には、韓国の民主化運動と重なる部分があるように感じました。
民主化が進んでも、過去の人権侵害が自動的に解決するわけではありません。被害を記録し、社会の記憶として残し、国家の責任を問い続けることの重要性を改めて考えさせられました。
声を上げ続ける女性たち
2日目は、強制失踪と女性の経験に焦点を当てた地域女性会議でした。
参加した女性活動家の中には、父親や叔父が強制失踪した経験を持つ人もいました。家族を失った当事者でありながら、自ら活動家となり、被害を記録し、政府や国際機関への働きかけを続けています。
家族が失踪した後、残された女性が家計や子育て、介護を担いながら、家族の消息を捜し、真相究明を求めることも少なくありません。さらに、宗教や民族、経済状況、女性であることなどによって、困難が重なっていきます。
女性活動家からは、政策提言やロビー活動の中で直面するジェンダーに基づく偏見や、インターネット上のハラスメントについても語られました。

写真から語られた家族の記憶
2日目のワークショップでは、参加者が写真や思い出の品を手に、家族との記憶を語りました。
事件の経緯や団体の活動を説明する前に、その家族がどのような人だったのか、どのような時間を一緒に過ごしたのかを話します。ほかの参加者は質問や助言を挟まず、静かに耳を傾けました。
朴代表も、平壌でいとこと一緒に過ごした時の写真を見せながら、家族との思い出を紹介しました。


語られた言葉は、「文化と宗教」「民族とアイデンティティ」「経済と生計」「安全と社会的スティグマ」の観点から整理された。
国境を越えた連帯を、今後の活動へ
2日間を通して、家族が突然いなくなった時のことや、その後も長い間、消息が分からないまま過ごしてきた経験を、活動家本人の口から聞きました。どの話も生々しく、胸が痛むものばかりでした。
それと同時に、家族を失った悲しみやトラウマ、国家や社会からの圧力を抱えながらも、自らの経験を語り、国境を越えた場に参加して行動を続ける人々の果敢な姿に、深い尊敬の念を抱きました。
一方で、同じ問題に向き合う人や団体がつながることによって、新しい活動方法や発信のアイデアが生まれることも感じました。経験を共有することは、活動の手法を学ぶだけでなく、「自分たちは孤立していない」と確かめ、活動を続ける力にもなるのだと思います。
今回の学びを、Free2Moveの今後の活動に積極的に生かしていきたいと思います。

これからじっくり読みたいと思います。
