第268話:ウメばあちゃんの『新作日本昔ばなし』!『糸車が縫った、心のほころび』
リクちゃん、家族の仲がぎくしゃくしてしもうたこと、あるかい?
ちょっとしたことで、口をきかんくなったりね。
今日はね、そんな心のほころびを縫い合わせる、糸車のお話をしようかね。
むかし話
むかーしむかし、あるところに、代々続く糸車のある家があったそうな。
その糸車は、亡くなったおばあさんが一生大事に使ったものじゃった。
おばあさんは毎晩それを回して糸を紡ぎ、破れた着物を繕い、家族の衣類を整えておった。
「ものはな、大事に使えば、ちゃんと応えてくれるんよ」
それがおばあさんの口ぐせじゃった。
おばあさんが逝ったあと、糸車は納戸の隅に置かれたまま、誰も使わんくなった。
それでも家族は、おばあさんの形見として、その糸車を捨てずにおいた。
ある時期、この家はぎくしゃくしておった。
父と母がささいなことで言い争い、兄と弟は口をきかず、家の中はいつも張り詰めた空気じゃった。
みんな、心のどこかがほつれておったんじゃ。
ある晩、末っ子のツムギが夜中に目を覚ますと、納戸のほうからカタコトと音がした。
そうっと覗いてみると、誰も回しておらんのに、糸車がゆっくりと回っておった。
月明かりの中で、カタコト、カタコトと。
糸車からは、目に見えん細い糸が紡ぎ出されて、家じゅうに広がっていく。
その糸が、父の心と母の心を、兄の心と弟の心を、そっと結び直しているようじゃった。
ツムギは怖くなかった。
むしろ、その音を聞いていると、胸がじんわり温かくなった。
おばあさんが、まだそこにおるような気がしたんじゃ。
次の朝、ふしぎなことが起きた。
父が母に「昨日は言い過ぎた、すまん」と言うた。
兄が弟に「一緒に遊ぶか」と声をかけた。
誰も、なぜ急に仲直りする気になったのか、わからんかった。
ただ、心のほつれが、いつの間にか繕われておったんじゃ。
「物を大切にする心はな、いつか人の心のほころびまで、そっと縫い合わせてくれるもんじゃ」
それから家族は、糸車を納戸から出して、居間の見えるところに置いた。
夜中にカタコトと鳴る音を、家族みんなが、おばあさんの子守唄のように聞いておったそうな。
子どもたちへ
ほらね、リクちゃん。
糸車が心を縫い合わせてくれたのはね、家族がその糸車を大事にしておったからなんよ。
おばあさんが大切にしたものを、家族もまた大切にした。
その心が、めぐりめぐって家族を癒してくれたんじゃ。
リクちゃんのおうちにも、誰かが大事にしとったものがあるかもしれんね。
それを大切にすることは、その人の心を受け継ぐことでもあるんじゃないかね。
そいぎ、今日はここまで
リクちゃん、家族の誰かとぎくしゃくしたら、無理せんでいいけど、そっと歩み寄ってみておくれ。
心のほつれはね、小さいうちに繕うと楽なんよ。
ばあちゃんの糸車も、いつでもリクちゃんの心を縫いに行くけんね。
そいぎ、おやすみ。
もし少しでも心に響いたら、スキ♡やフォローをしてくれると、ばあちゃん若返る気がするよ。
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