🌺ウメばあちゃんのひとり語り「ネズミの仕事」
—— 見えんところに、誰かの手があるんやで
昔の家には、ようネズミがおったもんや。
夜な夜な、天井裏をカサコソ走る音聞いてな、
「あぁ、今夜も仕事しとるなぁ」て思うてたんよ。
ふつうは嫌われもんやろ?
食べもんかじるし、音もうるさいし。
せやけどな、うちはどこか、ネズミにちょっと感心しとったんよ。
なんでって?
あの子ら、ちゃーんと見とるんよ。
どこに米置いてるか、どの戸がちょっと開いとるか、
誰よりも家の“ほころび”を知っとる。
ちょっとした隙間、古くなった床のきしみ、
うちが気づかんとこを、よう見つけよる。
ネズミの通った跡見るたびにな、
「あぁ、このあたり、手ぇ入れなあかんな」って気づかされるんよ。
まるで、「ここ、ほったらかしやで」って
教えてくれとるみたいやってな。
うちが若いころ、味噌樽のフタをちゃんと閉めへんかった晩があってな。
次の朝、フタがちょっとズレとって、中にかじったあとがあった。
悔しかったけど、「あんたの油断やで」って
ネズミに言われたような気がしたんよ。
せやから、うちは「ネズミの仕事」って呼んどったんや。
悪さしよるんやのうて、「気ぃつけなはれや」って教えとるんやって。
どんなもんにも、意味がある。
嫌われもんにも、役割がある。
それを知ったのは、ネズミのおかげかもしれへん。
いまの家には、もうネズミはおらんけどな。
ふと隅っこがほこりかぶっとるのを見たとき、
「あんた、生きとるか?」って、あのネズミがこっそり見とる気がしてな。
思わず、ほうき取りに行ってしもたわ。
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読んでくれるあんたがいてくれて、うちはほんまに嬉しいんよ。
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また会える日を、楽しみにしとるけんね。
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