喜三郎じいちゃんの知恵袋『自分で選んだ道ほど、文句が出るんよ』第37話
「じいちゃん、自分でやるって決めたのに、つらいって思うのって、おかしいんかな」
孫のその言葉、ようわかるばい。
わしにもな、まさにそんな時期があったとよ。
わしが“あっちの世界”から足ば洗うたのは、
命の張り合いより、もっと先のもんを築いて生きたかと思うようになったけんやった。
それに――
姉さんの背中があったけんでもある。
あの人は、ただの侠客やなかった。
人を守るだけやのうて、道ば切りひらいて、仕事場ば作って、町を興しとる人やった。
筑豊の鉄道工事や炭鉱の現場にも名前が通っとって、
筋と志を通しながら、“創る”ことに命を懸けとった。
わしも、いつかあん人みたいに、
“筋の通った起業家”になれたらち思うたんかもしれん。
そう思うたとき、ふと浮かんだのが――
若か頃、さんざん反発しとった、親父の背中やった。
親父は無口で、コテひとつで家ば建てるようなレンガ職人やった。
その仕事が、急によう見えてきたんや。
そうして、わしはレンガの世界に飛び込んだ。
けどな、最初はそげん甘くなかったとよ。
渡されたんは、ほうきとバケツ。
言われたのは、「まず掃除からや」。
セメントこね、砂ば運び、道具を揃えて、
手ぇは豆だらけ、腕はパンパン。
「これが夢に見た職人か…」っち、心の中でなんべんもつぶやいた。
文句ばっかりやった。
「なんでこんなことばっかりせにゃならん」
「わしは、もっとできるはずやろ」ってな。
けど、そのたびに思い出したんや。
わしがこの道ば選んだ理由を。
姉さんの背中と、親父の手のひらを。
◆ 喜三郎じいちゃんの知恵袋
自分で選んだ道ほどな、途中で文句が出るとよ。
しんどうて当たり前。 そのぶん、あとが残るとよ。
✍️ フォローとスキが、じいちゃんの茶代になりますけん。
よう効く話がまだまだあるとよ。続きも楽しみにしとってな。
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