第260話:ウメばあちゃんの『新作日本昔ばなし』!『夜に鳴く茶釜の歌』
リクちゃん、家の中で、ふしぎな音を聞いたことあるかい?
夜中にぴしっと家鳴りがしたり、なんだか音が聞こえたり。
こわがらんでええよ。
今日はね、夜に鳴く茶釜の、あったかいお話をしようかね。
むかし話
むかーしむかし、あるところに、古い茶釜のある家があったそうな。
その茶釜は、家ができたときからずっと囲炉裏にかけられておった。
何十年ものあいだ、家族のためにお湯を沸かし続けてきた、黒くて丸い茶釜じゃ。
ある時から、この家のおばあさんが、夜中に茶釜が鳴るのに気づいた。
誰も囲炉裏に火をくべておらん夜更けに、しゅんしゅん、ことことと、茶釜が小さく鳴るんじゃ。
孫のソウタは、最初は気味悪がっておった。
「おばあちゃん、あの音、なんなの?」
おばあさんは静かに笑うて言うた。
「あれはな、茶釜が昔を思い出して歌っとるんよ」
ある冬の夜、ソウタは眠れずに囲炉裏のそばに座っておった。
火の消えた囲炉裏は冷えておったが、茶釜だけがほんのり温かい気がした。
しばらくすると、茶釜がことこと鳴り始めた。
耳を澄ますと、その音の中に、いろんな声が聞こえてくるような気がした。
幼いころの父が「おかわり!」と笑う声。
若いころのおばあさんが鼻歌を歌う声。
今は亡き曾祖父が「うまい茶じゃ」と満足げに言う声。
それは、何十年もこの囲炉裏端で交わされてきた、家族の温かい笑い声じゃった。
茶釜はそれを、ぜんぶ覚えておったんじゃ。
ソウタの胸が、じんわり温かくなった。
会ったことのない曾祖父の声まで、なつかしく感じられた。
「家族が過ごした時間は、消えてなくなりはせん。道具がそれを覚えていて、ふとした夜に歌い返してくれるんじゃ」
ソウタはそれから、茶釜の音がこわくなくなった。
むしろ、夜にことこと鳴る音を聞くと、家族みんなに包まれとるような、安心した気持ちになったそうな。
茶釜は今でも、誰もおらん夜の囲炉裏で、静かに昔の歌を歌っておるという。
子どもたちへ
ほらね、リクちゃん。
茶釜が鳴っとったのはね、こわいものやなかったんよ。
長いあいだ家族を見守ってきた茶釜が、その温かい思い出を覚えていて、歌い返してくれとったんじゃ。
リクちゃんのおうちにもね、ずっと家族と一緒にいる古い道具があるかもしれん。
その道具はね、リクちゃんの笑い声も、ちゃんと覚えとるんよ。
家族で過ごす毎日が、そうやって道具の中に積もっていくんじゃないかね。
そいぎ、今日はここまで
リクちゃん、今度おうちで古い道具を見つけたら、そっと話しかけてみるといいよ。
リクちゃんの声も、その道具の歌になっていくけんね。
ばあちゃんとの時間も、どこかの茶釜が覚えてくれとるといいなぁ。
そいぎ、おやすみ。
もし少しでも心に響いたら、スキ♡やフォローをしてくれると、ばあちゃん若返る気がするよ。
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