「公務員は安定、民間は不安定」は本当か。10年働いてわかった4つのリスク
公務員を辞める話をすると、「せっかく安定しているのに」と言われることがあります。
これは別に間違っていません。
国家公務員として10年働いた私も、景気が悪くなったから急に給料が大きく下がる、という経験はありませんでした。(民主党政権下の特例減額の後に入庁したので、それも経験無く)コロナ禍でも、賞与が少し下がったくらいです。もちろん、リストラもありません。
その意味では、公務員は明らかに安定しています。
ただ、公務員を辞めた今は、「安定」という言葉が少し雑に使われすぎている気もします。
安定しているかどうかは、一個の話ではない。
何のリスクを引き受けていて、何のリスクを引き受けなくていいのか。
そこを分けないと、公務員と民間を比べる時に結構ズレる気がします。
1. 給与は下がりにくい。でも、大きく上がりにくい
公務員の給料は、民間でいうと株より債券に近いと思っています。
景気が良い時に急に跳ねる感じはない。
でも、景気が悪い時にも急に崩れにくい。
人事院勧告は民間との給与均衡を基本にしていますが、個別企業のように業績が良かったから大幅に上がる、悪かったから大きく下がる、という動きとは違います。
民間に遅れて追随するので、相関はある。
でも、ボラは低い。
毎年少しずつ上がるものだと思っていたし、それが普通だと思っていました。民間へ来て、同じ年齢でも業界や会社で給与の伸びがかなり違うことを見てから、ようやくこの仕組みの意味が分かりました。
下がりにくさを取る代わりに、上がりにくさも取っている。良い悪いではなく、そういう商品性なんだと思います。
2. 昇給と昇格は、努力だけでは読めない
これは安定の話とは少し逸れるような気もしますが、組織ガチャによって給与のばらつきがあります。
公務員の昇給は、基本的には毎年の号俸が積み上がっていきます。
行一だと通常評価で4号俸、月7,000円くらい。
これだけ見ると、毎年上がるなら悪くなさそうに見えます。
ただ、長く働くほど効いてくるのは、号俸より級です。
いつ上の級に上がれるか。
これは最速ラインは在級期間表によって定められていますが、実際の昇格スピードがここが官庁によって、本当に違う。
低級についてはあまり大きく変わりませんが、特に中位〜上位級。
30代後半から40代前半で上がれるところもあれば、50歳近くまで上がらないという官庁もあります。
配置や定数の問題が大きく、本人の頑張りだけではどうにもならない部分があります。入る前に、10年後、20年後にどの級でどんな仕事をしているかまで見抜くのは、ほぼ無理です。
ここは本当にガチャ要素があると思っています。
3. 景気には強い。でも、政策や組織再編の影響は受ける
公務員には、民間企業のような業績悪化によるリストラの不安は小さいです。
一方で、政治や制度の変更とは切り離せません。
例えば、郵政事業は2007年に民営化されました。旧社会保険庁も廃止され、2010年に日本年金機構が設立されています。
もちろん、個別の職員がどうなったかを単純に語れる話ではありません。ただ、国の組織だから絶対に形が変わらない、とは言えない例ではあります。
政策的に必要とされる仕事は増員されます。
逆に、必要性が薄いと判断された仕事は、定員が減ったり、組織が再編されたりする。
民間の景気リスクとは種類が違いますが、リスクがゼロなわけではないんですよね。
4. 身分が安定していても、働き方や勤務地まで安定とは限らない
私がいたような地方機関では、異動も転勤も普通にありました。
10年で4回くらい勤務地が変わっています。
希望した仕事にずっといられるとも限らないし、組織の都合で担当も変わります。
これを色々な仕事ができて成長できると感じる人もいると思います。実際、私も新しい仕事をすぐ回す力は、公務員時代にかなり鍛えられました。
ただ、専門性を積み上げたい人や、住む場所を固定したい人にとっては、普通にリスクです。
安定した身分があることと、生活設計が読みやすいことは、同じではない。
ここは、公務員を辞めてからより強く思うようになりました。
私が捨てたのは、安定そのものではない
公務員の安定は、本物です。
手当や休職制度まで含めると、民間より強い部分もかなりあります。
一方で、給与の伸び、昇格、異動、組織再編には別の不確実さがある。
民間に行けば、今度は会社や業界の景気、評価、業績の影響を受けます。どちらが安全かを一言で決めるのは、さすがに無理です。
私が転職した時も、「安定を捨てて挑戦した」というより、今の自分にとって受け入れやすいリスクへ移っただけなんだと思います。
給与が毎年どれくらい伸びるか。
どこに住んで、どんな仕事を続けたいか。
会社や組織の外で通用する経験を持ちたいか。
人によって、安定に求めるものは違います。
なので、公務員を辞めるか迷っている人は、「公務員は安定」「民間は不安定」で考えない方がいいと思います。
自分が何の不安には耐えられて、何の不安には耐えられないか。
もし、転職を考える時も、この辺りは自分なりに整理しておくと、転職理由が明確になってくると思います。
