🟩 木曜連載|精麻とむすびの物語🌾第16話|結ぶということ
手の中で結びが作られていく。
撚られた一本の紐は、それだけで、ひとつのかたちを持っている。
ばらばらだったものが揃い、一本の線になる。
けれど、
そこにもう一本の線が重なると、
少し違った動きが生まれます。
交差する。
通る。
ほどけそうで、ほどけない。
結ぶという行為は、
ただ固定することではないように感じます。
紐を動かしていると、
外にあったものが内側に入り、
内側にあったものが外へと出ていく。
一度、通る。
その小さな通過が重なって、
かたちができていきます。
同じ紐でも、
通し方や重ね方によって、
少しずつ違う表情になる。
強く引けば締まり、
ゆるく残せば動きが残る。
結びは、
決められたかたちに見えて、
その中に余白があるようにも思えます。
精麻で結ぶときも、
特別なことをしているというより、
ただ手の中で起きていることを
そのままなぞっている感覚があります。
交差して、
通して、
整えていく。
ごちそうさまでした。
と手をあわせる。
その時の気持ちと似ています。
それを繰り返しているうちに、
かたちだけでなく、
手の中の感覚も少しずつ変わっていく。
なぜそうなるのかは、
はっきりとは言えません。
ただ、
触れて、動かして、
結んでいく中で、
何かが整っていくように感じられることがあります。
結ぶという行為は、
ふたつのものを固定するというよりも、
一度関係を通すことに近いのかもしれません。
そしてその関係が、
ほどけにくいかたちとして残る。
撚ることで、一本になる。
結ぶことで、交わりが生まれる。
そのあいだにあるものは、
まだ言葉にしきれない部分も多いですが、
手を動かしていると、
少しずつ見えてくる気がします。



次回は、「境界」について。
なぜ結びが、場や場所と関わるようになっていったのか。
そのことを、もう少しだけ見ていきます。
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