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No.002 記憶を消してから、続きを聞く#まだ名前のない哲学

#まだ名前のない哲学

前回、まだ名前のない哲学を探してみると書いた。あれから実際に始めている。

ところが、いまのところ哲学らしい話は一行も出ていない。出てくるのは段取りの話ばかりである。研究所を作るつもりが、しばらく倉庫の棚を組み立てている、という状態に近い。

もっとも、この棚がなかなか面白い。今回はその話を書く。


決まりその一:会話を正本にしない

まず驚いたのは、AIとの長い対話がそのままでは記録にならない、という点だった。

AIは会話が長くなると、それまでのやりとりを要約して持ち直す。要約は便利だが、要約したのはAIである。何を残して何を落としたかは、こちらには見えない。哲学の研究でこれをやられると困る。落ちたほうにこそ大事なものが入っている可能性があるからだ。

そこで、決まりを一つ置いた。

👉️会話を正本にしない。

質問と回答は、一問ごとにファイルへ書き出す。私の回答は原文のまま保存し、AI側の解釈は別のファイルへ分けて書く。誤変換も、言い間違いも、途中で切れた文も直さない。直した瞬間に、それは記録ではなく清書になる。

そして区切りごとに、AIの記憶をこちらから消す。消したうえで、ファイルを最初から読み直させる。

要約で引き継ぐより、原文を読み直させたほうが精度が高い。記憶を持たせないほうが正確になる、というのは少し妙な話だが、実際にそうなっている。

決まりその二:一度に一問だけ

次の決まりは単純である。

一度に一問だけ。

二問まとめて出すと、答えるほうは答えやすいほうから答える。答えにくいほうは、たいてい消える。そして消えたことに誰も気づかない。

一問ずつ出すのは遅い。遅いのだが、消えないほうを取ることにした。

決まりその三:なぜ聞くかを先に言う

これは途中で足した決まりである。

最初、AIには「哲学者の名前を出すな」「選択肢を出すな」「こちらの答えを誘導するな」と指示していた。ここまでは前回書いたとおりだ。

ところがAIは、そこから一歩踏み込んで、なぜその質問をするのかまで隠していた。

👉️これは隠しすぎだった

隠すべきなのは哲学史の中身と、AI側の期待する答えである。問いの目的まで隠すと、答えるほうは何を求められているのか分からないまま答えることになる。返答先が定まらない。定まらないまま答えたものを積み上げても、それは資料にならない。

そこで規則を書き足した。

各問の冒頭で「なぜこれを聞くか」を一行述べる。

指摘を受けて気づいた種類の間違いだったので、経緯も監査記録として残した。規則が変わった日付と理由が残っていないと、あとから「最初からそうしていた」と言えてしまう。

AIの予測は、いまのところ四回外れている

今回いちばん気に入っている運用がこれである。

AIは対話の途中で、何度も予測を立てる。「この人はこういう問いには答えやすいはずだ」「前にこう言ったのだから、今度はこう答えるはずだ」という類のものだ。

そして、外れる。

いまのところ四回外れている。四回とも、外れたという記録が残っている。予測の中身、外れた日付、なぜ外れたと考えられるか、までがファイルに書いてある。

これは意地悪でやっているのではない。当たった予測だけを残すと、あとから読んだ人には、AIが最初から正しく見通していたように見えてしまう。実際には、四回外している。

なぜ外れを数えるのか

前回、「失敗したら、失敗したと書く」と宣言した。

いざ運用してみると、失敗を書くのは決意の問題ではなく、設計の問題だった。

決意でやろうとすると、書くかどうかを毎回その場で判断することになる。都合の悪い日には、たいてい書かないほうが選ばれる。だから決意ではなく、外れたら必ず起票する仕組みにしておく。書かないという選択肢を、最初から手元に置かない。

新規性の捏造というものは、たぶん嘘をつく決断から始まるのではない。
当たったものだけを残していく、という穏やかな作業の積み重ねから始まる。

だから外れを数える。

いまの現在地

質問はいま二十五問まで進んだ。哲学史との照合はまだ一件もしていない。当然、結論もない。

中身をここで書かないのには理由がある。この記事は私自身が読む。AI側の解釈をここに書けば、それを読んだ私が次の質問に答えることになり、最初に置いた「先入観を入れない」という前提が崩れてしまう。

だからしばらくのあいだ、公開できるのは段取りの話だけである。

倉庫の棚の話がもう少し続く。中身が入るのは、そのあとだ。

2026年08月26日(水)14:20


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