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ケーススタディ(事例報告、事例検討)なんて書きたくない!?――書き始める前に知っておきたい小さなコツ

みなさんは、ケーススタディ(事例報告、事例検討)を書いたことがありますか。

「書いて」と言われたことがありますか。

「書いてね」と、誰かに頼んだことはありますか。

いずれにせよ、ケーススタディ(事例報告、事例検討)なんて、書かなくていいなら書きたくない。そう思ったことがある方は、きっと少なくないはずです。


1. 「書きたくない」と感じるのは、あなただけではないかもしれません

ちょっとだけ硬い話から入ります。苦手な方は読み飛ばしていただいてかまいません。
ある看護師や医師をはじめとする医療専門職とその学生を対象とした研究を紹介します。リフレクティブ・ライティング(自身の経験を振り返って書く記述)」という、事例報告を含む営みについてのレビュー論文です。

Almost exclusively, students reported hindering factors (limited time, difficulty in writing and understanding assignments, privacy issues, feeling bored or forced). As to professionals, few described RW as a very stressful activity.(訳:学生はほぼ例外なく、妨げとなる要因として、時間の制約、書くことや課題を理解することの難しさ、プライバシーへの懸念、退屈または強制されている感覚を挙げていた。専門職については、リフレクティブ・ライティングを「非常にストレスの多い活動」と表現した人が少数ながら見られた。)

Artioli, G., Deiana, L., De Vincenzo, F., et al. (2021)

興味深いのは、この論文の中で、すでに現場で働く専門職にとってリフレクティブ・ライティングは「日常的に行うもの」ではなく、「患者の死など、極端な状況においてのみ求められるもの」として語られていたという指摘です。

事例報告(事例検討、ケーススタディ)もまさに同じ構造を持っています。普段の記録や日々の看護記録とは違い、年に一度、あるいは資格更新のたびに、突然求められる「特別な作業」だからこそ、書くための土台や慣れが育ちにくいのです。

2. 書き始める前に知っておくと、少し楽になる小さなコツ

「書きたくない」という気持ちの正体が、少し見えてきたところで、実際に「ケーススタディ(事例報告、事例検討、症例検討、症例報告)」を目の前に手を動かすときに使える、小さなコツを2つだけご紹介します。

小さなコツ1

一つ目は、事例選びについてです。
多くの人が最初に手を止めてしまう理由は、「特別なことをしていないのに、書けるような事例があるのだろうか」という思い込みにあります。

しかし実際には、うまくいった鮮やかな事例よりも、対応に迷った、判断に自信が持てなかった、途中で方針を変えたといった、いわば「引っかかりのある事例」のほうが、考察を書くための材料が自然と多く含まれています。

事例を選ぶときは「うまくやれた話」を探すのではなく、「今でも気になっている、あの場面」を思い出すところから始めると、驚くほど筆が進みやすくなります。

小さなコツ2

二つ目は、結果と考察を混ぜてしまう問題への対処法です。
ここで少し立ち止まって、「結果」と「考察」がそもそも何を指しているのか、確認しておきたいと思います。

・「結果」とは、実際に何が起きたかという、いわば事実の記録です。対象者がどんな状態だったか、どんな援助や介入を行ったか、その後どんな変化が見られたか、といった、その場にいれば誰でも同じように観察できたはずの出来事を指します。

・一方、「考察」とは、その結果を受けて、自分がどう考えたか、なぜそうなったと思うか、そこから何を学んだかという、書き手自身の解釈や意味づけを指します。同じ場面を見ても、感じ方や気づきは人によって違いますから、考察には必ず書き手自身の視点が入ります。

この二つを簡単に言い換えるなら、「結果」は「何が起きたか」、「考察」は「それをどう受け止め、どう考えたか」ということになります。

実践の場では、感じることと考えることと動くことが一体になっているため、それをそのまま文章にすると、結果の中に考察が紛れ込み、考察の中に結果が繰り返されるという、よくある混乱が生じます。

これを避ける簡単な方法として、まず下書きの段階で「実際に起きたこと・観察できたこと」と「そのときに自分が考えたこと・あとから気づいたこと」を、二つの別々のメモに分けて書き出してみるという手があります。

書きながら迷ったときは、「これは、その場にいた誰かも同じように見えたはずのことか」を自分に問いかけてみてください。もし答えが「はい」なら結果側のメモへ、「いいえ、これは私がそう感じただけだ」と思うなら考察側のメモへ、という具合に振り分けていくと、自然と仕分けが進みます。

この仕分け作業を先に済ませてから清書に取りかかると、結果と考察が自然と分離した状態で文章を組み立てられます。

これらはあくまで入り口のコツにすぎません。事例をどう選び、どう骨組みを立て、結果と考察をどう分け、考察をどこまで深め、倫理的配慮をどう実務に落とし込むかについては、もう少し体系立てて整理したものを一冊にまとめています。

3. 最後に

この記事では、事例報告という営みがなぜ重く感じられるのか、そしてその重さを少し軽くするための小さな入り口だけをお話ししました。実際には、「考察を書こうとすると感想文になってしまう」「文献をどう探して引用すればいいかわからない」といった、もう一段具体的な悩みが、この先にたくさん控えているでしょう。

そこで、看護・介護・福祉の現場で働く方が、通勤電車のなかやお昼休みの数分で、肩の力を抜いて読める本を書きました。
難しい専門用語や、いかめしい理論はできるだけ使わず、「なるほど、それなら書けそう」と思える言葉だけを選びました。

記事を読んで「もう少し深く知りたい」と思ったときに、手に取ってみてください。

【事例報告の書き方】 書き出せない、タイトルが決まらない、何を書けばいいか分からない——事例報告(事例検討、症例報告、ケーススタディ、事例研究)に向き合うすべての支援職へ。

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引用文献

Artioli, G., Deiana, L., De Vincenzo, F., et al. (2021). "Health professionals and students' experiences of reflective writing during clinical training: a systematic review." BMC Medical Education. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8299581/

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