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企業戦略で見る鉄道業界の決算書


はじめに


こんにちは、くまCFOです!

皆さんは電車賃、気にしていますか?

「会社で支給されるから…」と

あまり気にしてはいないのではないでしょうか。

Suicaをタッチして、残高を見て、少なくなったらチャージをする。

鉄道会社にお金を払っている意識はありますか?

ですが、鉄道会社側に立つと話は変わります。

線路を敷き、車両を走らせるコストは、
乗客が1人でも100万人でもほぼ変わらない。

だから「いかに乗ってもらうか」が利益率を直接左右するわけですね!

ちょっと脱線しますが、振替輸送の話をしましょう。

振替輸送とは、ある路線が遅延・不通になったとき、
他社の路線が振替先として乗客を無償で受け入れる制度です。

皆さんも一度は経験があるのではないでしょうか。

例えば小田急線が止まったとき、
東急線や東京メトロが振替先になることがあります。

定期などを購入している場合、乗客は追加料金なしで乗れますね。

経営的に面白いのはここから。

振替を「受け入れた側」の会社は、後日振替元の会社から精算を受ける。

その金額は運賃収入より小さいとのこと。

でも、電車は混んでようが空いてようが、どうせ走っているんです。

空席があれば、乗客が増えてもコストはほぼ増えない。

つまり振替輸送は、固定費ビジネスの「空席に乗せる」構造を、
他社の不具合というかたちで突然体現する瞬間でもあるわけですね。

逆に振替を「送り出した側」は、乗客を他社に渡す分だけ運賃収入を失う。

でも、これは「路線が止まっている以上、どうせ運べない乗客」。

業界全体で助け合うことで、
乗客の不満を最小化するセーフティネットとして
機能しているというわけです。

「走らせるコストはほぼ固定、乗せるほど利益が出る」

振替輸送はその構造を、制度として可視化した一例です。

「国土交通省『令和7年版交通政策白書』は、
人口減少・少子化等により輸送人員が大幅に減少し、
路線廃止の動きも見られる」と指摘しており、
実際JR北海道は、
2020~2024年で多くの区間を廃止しています。

当たり前のように感じている電車も、
営利を確保できなければ廃線の可能性もあるのです。

では、都市部の大手私鉄各社はどうでしょうか。

東急・小田急・阪急・近鉄をはじめとする大手民鉄会社の多くは、
「鉄道1本に頼らない」、
沿線開発・不動産・小売との組み合わせモデルを作り上げてきました。

鉄道で人を運び、沿線に住宅や商業施設を作り、
人が集まることでさらに乗客が増える循環構造は、
世界的にも特異な「日本型鉄道経営」として知られています。

まさにそのど真ん中にいるのが、今回比較する東急と小田急なのです!

売上を見てみよう

まず数字で並べてみました!

注目すべきは、やはり営業利益率。

規模が大きい=効率的に稼いでいる

とはならないところが分かります。

なぜ小田急の利益率は高いのか。

両社セグメント別に見ていきましょう!

事業構造の「設計図」を読む

渋谷・二子玉川・たまプラーザを抱える東急沿線は、
比較的高所得層が多い「プレミアム沿線」です!

東急百貨店、東急ハンズ(現ハンズ)、
東急ストア、ケーブルテレビに電力まで、
生活のあらゆる接点を東急グループが持ちます。

鉄道は「人を集める装置」として機能し、
集まった人の消費を生活サービス全体で回収する設計です。

一方で、小田急には「箱根」という強力な出口があります!

新宿から箱根湯本まで最速72分のロマンスカーに箱根フリーパス。

これが鉄道収益を底上げしていますね!

日々の鉄道利用だけでなく、
観光地までの足、観光地での足として活躍し、
「2026年3月期の運輸収入は前期比+2.3%増」と好調な推移です。

財務体質も比べてみよう


流動比率は両社とも100%を下回っていますが、
鉄道会社は短期借入で回すのが通常なので、
業界としては一般的な水準です。

今回は固定資産の「土地」に着目してみましょう。

東急の所有している土地は7,389億円、
小田急の所有する土地は4,453億円です。

土地は取得時の金額を帳簿に記載し、
土地価格が上がっても、帳簿の金額は変えません。

特に東急は、
現在の高級住宅地を所有していると考えられます。

隠れた実力がここから読み取れます。

もう一つ、固定比率を見てみます。

固定比率は「長く使う資産を、借金ではなく自分のお金で買えているか?」の指標です。

100%以下が教科書的な理想。

「固定資産はすべて自己資本でまかなえ」という考え方が一般的です。

では、東急245%・小田急238%は「危険だ」と判断できるのでしょうか。

答えはNO。

鉄道業界の固定資産は一般的な固定資産とは違い、
20~60年にも及ぶようなトンネルや駅舎など。

長く使う資産に対して考えるときに大事なのがもう一つ。


固定比率と似たような言葉で、
「固定長期適合率」という指標があります。

「長く使う資産を、長く使えるお金でまかなえているか」

東急は約109%、小田急は約113%。

100%を少し超えていますが、これはまだ全然許容範囲内。

完全に100%以下に収めるには、
純資産か長期借入をさらに積み増す必要があり、
成長投資のさなかにある2社には現実的なターゲットではないでしょう。

決算書を見る癖をつけつつ、
業界の数値イメージを掴めたら、
今より更に決算書の理解力が上がること間違いなしですね!

経営に活かせる3つのポイント

①「規模の大きさ」と「収益の効率」は別物

東急は売上も利益絶対額も小田急を圧倒しますが、
利益率でみると小田急に軍配が上がります。

東急は「事業の幅×規模」、
小田急は「鉄道+不動産という集中型」。

ビジネスモデルにあった稼ぎ方を見つけ、
そこに集中しているからこそ、2社とも順調な経営がされているのですね。

まずは、自分の事業を言語化してみるところから始めてみましょう。

②コア事業によって生み出される「副産物」の重要性

東急の不動産事業は全体営業利益の42%を占める主力です。

小田急の不動産業も全体の29%を稼いでいます。

鉄道が運んだ人、開発した土地、沿線のブランドという「副産物」が、
独立した事業に育っているのです。

今の事業から新たなビジネスに紐づける。

今の取引先様に今よりもっと便利なサービスを提供できる。

WINWINな関係を目指していきたいですね!

③「10年後に回収する投資」を、今どう評価するか

貸借対照表に建設仮勘定というものがあります。

これはまだ、建設が完了していない案件です。

まだ利益を生む資産ではないですが、
完成後は賃料収入として長期間回収されます。

東急や小田急レベルの大きな会社では気にならないかもしれませんが、
銀行さんとの融資の際に、
「こんな案件があって~」というように
決算書を見ながら説明できると、
納得感を得られやすいかもしれませんね!

まとめ

最強のビジネスモデルはありません。

次の経営判断をするために決算書があります。

「何を主軸に置き、何で投資を回収するか」

今回は鉄道会社の超大手2社様の決算書を元に解説させていただきました。

こんな業界の深堀をしてほしい!等のご要望がありましたら、
どんどんコメントいただければと思います!

では、また次回!

※ 本資料の数値は、公開資料に基づき作成しています。
-参考URL-
決算短信・説明会資料 | IR資料室 | 株主・投資家のみなさまへ | 東急株式会社
-参考URL-
決算関連資料|株主・投資家情報|小田急電鉄

※数値は概算・四捨五入を含む場合があります。
投資判断の根拠とする場合は必ず原典をご確認ください。


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