【疑似跡取り?】その技術、社長と一緒に引退させますか?
商売において、「技術」が商品という業種は、継承を真剣に考えないと価値が途絶える。新しい価値の継承とは?という話
技術は会社の大切な資産
ある現場でのこと。長い付き合いの協力業者のもとで、若い職人が忙しそうに働いていた。
よく見ると顔見知りの同業者で、別の会社に所属する職人である。
転職したのかと思ったが、業者の社長に話を聞くと少し変わった働き方をしているという。
社長しかできない技術への不安
その協力業者の社長は、私も一目置くほど高い技術力を持っている。
その技術にこれまで何度も助けてもらった。
しかし、その技術を見るたびに「この社長が引退したら困るな」という心配がよぎっていた。
社員もおらず、お子さんなどの後継者もいない。
会社がなくなるだけでなく、長年積み上げた経験やノウハウまで失われてしまう可能性があったからだ。
若い職人からの直談判
ところが、その状況に変化が起きたらしい。
ある会社の若い職人が社長の技術に惚れ込み、「修行をさせてほしい」と直談判したのである。
はじめは社長も同業者の競合他社であるゆえ、戸惑ったそうだが、若い職人が自身の会社にも相談し、週に二日ほど出向する形で技術を学ぶことになったという。
まだ二十代で吸収も早く、社長も「いい跡取りができた」と嬉しそうに話していた。
利害を超えた価値ある決断
本来であればライバル同士であるゆえ、目先の損得だけを考えれば、自社の技術を他社の職人へ教えることに抵抗を感じる人もいるだろう。
しかし、両者はそれ以上に技術を未来へ残すことを優先した。
技術は目に見えない無形資産であり、失われてしまえば二度と取り戻せない。
だからこそ、この決断には大きな価値があると感じた。
今どき、こんな向上心のある若者がいたことも感動的だが、社長の技術が途切れない、ということが何よりもうれしい。
継承そのものが新しい価値になる
日本には優れた技術を持ちながら後継者不在に悩む会社が数多く存在する。会社を継ぐだけが事業承継ではない。
技術を継ぐ、人を育てる、業界全体で知恵を残す。
そんな発想もあっていいのではないだろうか?
商売において技術そのものが商品である業種ほど、継承を真剣に考える必要がある。
「技術を未来につなぐこと」それ自体がこれからの時代の新しい価値創造なのではなないだろうか?と今回の例を見て、考えるのは大げさだろうか。
ベテランの技術や仕事観は代替できない価値であることが多い。今こそ見直し、後世に繋げる工夫が必要
