5分でわかる 保育・幼児教育デイリーニュース 2026/8/24
「ちゃんと見て」の前に。子どもの力が見えてくる、保育者の“待つ時間”
「先生、できない」
「どうやってやるの?」
子どもからそう言われると、つい手伝いたくなります。
遊びに入れずにいる子がいれば、「一緒にやろうって言ってみたら?」と声をかけたくなる。
積み木が崩れれば、「下に大きいのを置いたら?」と教えたくなる。
もちろん、子どもを支えることは大切です。
でも今日紹介する研究を読んでいると、大人がすぐに答えを出さない時間にも、保育の意味があるのではないかと感じます。
今日のテーマは、「何をさせるか」よりも、大人がどう見るか、どこまで待つかです。
1.遊んでいる子だけでなく、「見ている子」を見てみる
8月18日、フィンランドの研究チームが、保育者を目指す学生が子どもの遊びを見るとき、どこに注目し、どんな援助の機会を見つけるのかを調べた研究を発表しました。
学生の視線をアイトラッキングで調べ、その後の振り返りも分析しています。
この研究から考えたいのは、同じ子どもの姿を見ていても、大人がどこを見るかによって、見えてくるものが違うということです。
例えば、積み木で3人の子が楽しそうに遊んでいる。
少し離れたところに、一人の子が立って見ている。
「3人で楽しそうに遊んでいるな」
と見ることもできます。
でも、その一人に目を向けると、
「ずっと見ているな」
「入りたいのかな?」
「声をかけるタイミングを探している?」
と、別の姿が見えてきます。
もちろん、本当に入りたいのかは本人にしか分かりません。
だからこそ、すぐに「一緒に遊びたいんだね」と決めつけるのではなく、もう少し見る。
その子が近づくのか。
別の遊びへ行くのか。
友達に話しかけるのか。
そこまで見て初めて、その子の思いが少しずつ見えてきます。
今日試すなら
遊びを見ながら一度だけ、
「今、遊びに入っていない子は何をしている?」
と見てみてください。
遊んでいる子だけでなく、
見ている子。
迷っている子。
少し離れている子。
そこに、今まで気づかなかった姿があるかもしれません。
2.「次は何するんだっけ?」と聞いてみる
8月18日には、5〜6歳児265人を半年間隔で3回追跡し、家庭での養育環境と実行機能との関係を調べた研究も公開されました。
「実行機能」と聞くと難しく感じますが、
ちょっと待つ
今やっていることを覚えておく
状況に合わせてやり方を変える
など、自分の行動や考えを調整するときに使う力です。
この研究では、家庭の養育環境と、子どもの実行機能の発達との関連が調べられています。
ただし、中国の一地域を対象とした観察研究です。
そのため、
「家庭で○○をすれば実行機能が伸びる」
とまでは言えません。
それでも、日常の保育や育児を考えるきっかけにはなります。
例えば朝の支度。
大人が、
「靴下履いて」
「次はズボン」
「バッグ持って」
と全部指示すれば、確かに早く終わります。
でも、ときには、
「次、何するんだっけ?」
と聞いてみる。
子ども自身が思い出す時間が生まれます。
園でも同じです。
「片づけて、トイレに行って、椅子に座って」
と全部伝える前に、
「このあと何するんだっけ?」
と聞いてみる。
答えを知っている大人が、あえて少し待つ。
特別な教材がなくても、日常生活の中には子どもが自分で考える機会がたくさんあります。
3.「保育の魅力」を、やりがいだけで語らない
今日8月24日、こども家庭庁から「令和8年度 保育士・保育の現場の魅力普及啓発事業」の入札が公告されました。
現時点では公告の段階なので、具体的にどんな取り組みになるのかはまだ分かりません。
ここから一つ考えたいことがあります。
保育の魅力って、何でしょうか。
子どもの成長を間近で見られる。
昨日までできなかったことが、今日できる。
一人で遊んでいた子が友達に、
「一緒にやろう」
と言う。
自分が変えた環境によって、子どもの遊びが広がる。
保育には確かに、他の仕事にはない面白さがあります。
でも、
「子どもの笑顔に囲まれる素敵な仕事です」
だけで人材不足を解決するのは難しいと思います。
休憩が取れる。
記録を書く時間がある。
困ったときに相談できる。
保育について職員同士で話せる。
学び続けられる。
保育の魅力と、専門職として働き続けられる環境はセットで考える必要があります。
「やりがいがあるから頑張れる」
ではなく、
「やりがいのある仕事を、無理なく続けられる」
ところまでつくる。
それも、これからの保育の質を考えるうえで大切なことだと思います。
4.ごっこ遊びを「今日は楽しみました」で終わらせない
2026年8月号の『Journal of Experimental Child Psychology』には、ごっこ遊びと自己調整についての研究が掲載されています。
ポーランドの就学前児を対象に調べたところ、役割や物語がより組織化されたごっこ遊びの複雑さと、行動面の自己調整との関連が確認されました。
関連を調べた研究なので、
「ごっこ遊びを増やせば自己調整力が伸びる」
とは言えません。
ここで面白いのは、「ごっこ遊びをしたかどうか」ではなく、遊びの中身を見る視点です。
例えば、お店屋さんごっこ。
「今日はお店屋さんごっこを楽しみました」
だけでなく、もう少し見てみる。
誰が店員になるか相談していた。
「売り切れ」という設定が生まれた。
お客さんが並ぶルールを子どもたちで決めた。
途中で役割を交代した。
こうして見ると、ごっこ遊びの中で子どもたちは、
覚える。待つ。相手に合わせる。ルールを守る。物語を続ける。
いろいろなことを同時にしています。
保育者ができること
すぐに立派なお店を用意する必要はありません。
子どもたちがお店屋さんごっこを始めたら、
「ここには何が必要かな?」
と聞いてみる。
「レジ!」
「メニュー!」
「看板がいる!」
と、子どもからアイデアが出てくるかもしれません。
大人が完成した遊びを渡すのではなく、子どもたちが遊びをつくる余白を残す。
保育者の役割は、「遊びを用意する人」だけではなく、遊びが広がるきっかけをつくる人でもあるのだと思います。
今日の保育・育児に1つ持ち帰るなら
今日は、新しい活動を用意しなくて大丈夫です。
いつもの遊びを30秒だけ、少し離れて見てみる。
そして、
「この子は今、何をしようとしているんだろう?」
と考えてみる。
すぐに声をかけない。
すぐに手伝わない。
すぐに「こうしたら?」と言わない。
もちろん、安全に関わる場面ではすぐに介入します。
でも、そうでなければ少しだけ待ってみる。
子ども自身で試すかもしれません。
友達を見るかもしれません。
違う方法を考えるかもしれません。
「手伝って」と自分から言うかもしれません。
大人が30秒待ったからこそ見える子どもの姿があります。
今日の4つの情報を通して考えたのは、「子どもに何をさせるか」だけが保育ではないということです。
大人がどう見るか。
どんな環境をつくるか。
どこまで待つか。
明日は、そのうち一つだけ意識してみてください。
出典
Hurme et al., Education Sciences, 2026年8月18日公開。保育者養成課程の学生による遊びの観察・アイトラッキング等を扱った研究。
Shi et al., Behavioral Sciences, 2026年8月18日公開。5〜6歳児265人を対象に家庭環境と実行機能の発達を追跡。
こども家庭庁「令和8年度 保育士・保育の現場の魅力普及啓発事業」、2026年8月24日公告。
Józefacka, Korucu & McClelland, Journal of Experimental Child Psychology, Vol.268, 2026年8月号。就学前児のごっこ遊びの複雑さと自己調整との関連を検討。
※研究結果は、対象となった国・文化・研究方法などによって、日本の園や家庭にそのまま当てはまらない場合があります。「研究で確認された事実」と「そこから考えられる保育への応用」は分けて記載しています。
