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車高の話〜昔と現代の比較

地面を這うようなイメージの車高の低いクルマが私は好きである。「車高の低さは知能の低さ」などとどこかでは言われていたが、何もシャコタンが好きなわけではないので「全高」が低いクルマと言った方が良いのだろうか。

スーパーカーブームを経験した世代としては、スポーツカーのような運動性能の高いクルマとデザインの美しいクルマの絶対条件は、車高が低いと相場が決まっているのだ。事実、その方が重心は低くなり、前面投影面積も小さくなって空気抵抗が抑えられるから、速く走るためのスポーツカーのフォルムとしては当然の帰結である。

屋根のついた市販の量産スポーツカーの中で、私の知る限り、最も低いものは、1970年代のミドシップスポーツ、ロータスヨーロッパとランボルギーニカウンタックの1070mm。そこを起点として考えて、1970〜1990年代前半までのフェラーリやその他のミドシップのスーパーカーはおおよそ1.1m台前半である。

これがFRのスポーツカーとなると、低いもので全高1.2mを少し切り、大方1.2m台に収まっていた。ジャガーXJSやコルベット、日本車ではFD RX-7のようなクルマだ。さらに、GTやスペシャリティカーにカテゴライズされるラグジェアリー志向のスポーティークーペになると全高は1.3m前後。セリカXX&70型スープラが1310mm、プレリュード、S13シルビアが1290mmという具合にである。

例外もあるが、スポーツカーのフォルムと認められるのはおおよそここまでである。

ではその頃のセダンの全高はどのくらいかと言えば、スペシャリティカーよりも10cm弱高い1.3m後半。例を出せば、GX71系マーク2三兄弟、日産プリメーラ、スカイラインなどが1380mm〜1385mm。ホンダアコードインスパイア1360mm。あのクラウンでさえ1400mmと現代から考えると驚きの低さである。中でも、現代でいう4ドアクーペ色の強いトヨタ・カリーナEDは同社のスペシャリティカーと同じ1310mmである。

コンパクトなハッチバック車も同様で、トヨタ・スターレット、マツダ・ファミリア、日産・パルサーが1380mmなどと1.3m後半である。
また、例外的に「トールボーイ」と呼ばれ、当時はものすごく背が高いと思っていた初代ホンダ・シティーでも1470mmしかなかったのだ。

まとめると、1990年代後期までは〜
・スーパーカー→1.1mm前半
・FRのスポーツカー→1.2m前後
・スペシャリティークーペ→1.3m前後
・セダン&ハッチバック→1.3m後半
〜というおおよその車高のフォーマットが出来上がっていたと思う。
それ以上のものはトラックかバンかRV車という認識だった。

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ところがある時を境にこれが一変することになった。

最初に違和感を感じたのは、2000年頃にトヨタ・ヴィッツが出た時である。
全高1500mm。トールボーイのホンダ・シティーよりも背が高い。
ある日、レンタカーで乗ることになったが、スターレットの後継という先入観で乗り込むと、着座位置が高く、非常に気持ちの悪いものだったのを覚えている。
一般的にはアップライトな姿勢で目線が高い方が運転しやすいことになっているが、潜り込むのような運転姿勢が好きな私には違和感があったのだ。

次いで2002年と2003年にそれぞれ、三菱・コルト、ホンダ・フィットと続くが、両車とも全高は1550mm。

私は、当初この2台のクルマを、なんと真面目にミニバンだと思っていたのだ。
1550mmもある全高など、私の中ではコンパクトカーのフォーマットではなかったからである。

まさかのコンパクトカーだと知ったのは数年経ったあとである。笑

当時コルトがラリー車のベースになるという話を聞いた時にも仰天した。
私にはどこから見てもミニバンにしか見えなくて、走りの想像がまるでつかなかったからである。

フィットにしても、数年後に立ち読みしたチューニング雑誌でようやく理解しかけていた。なるほど、これはミニバンではなくコンパクトハッチだったのかと。それでも納得しないままでいると、街のクルマの様子がどうもおかしいことに気がつき始めたのだ。

まるでミニカーのスケール違いのように大きさが肥大していたのだ。
全高で言えば、先のフォーマットよりもスーパーカーからセダンまで、それぞれ10cm程度高くなっている印象だ。

理由は、側面衝突安全基準の関係で床が厚くなり、歩行者の頭部保護基準によりボンネットを高く作らなければならず、必然的にエンジン隔壁が高くなる。それに合わせて地面からの着座位置も当然上がることになるからだ。

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現代のそのような条件の中で、特にスポーツカーらしいフォルムを作り出すのは、なかなか難しいのではないかと思われる。
いかに世の中のクルマのルーフが全体的に高くなったとはいえ、最低でも全高1.3m前半に収めなければ、スポーツカーのデザインフォーマットから外れてしまうからだ。

私の知る範疇で例を出すと、ジャガーFタイプの全高は1310mm。往年のセリカXXや70型スープラと同じ全高である。
実際にジャガーFタイプに乗り込んでみると、同じ全高の昭和車に比べて、頭上はかなり窮屈に感じたものである。例によってエンジンフード位置が高いことから、エンジン隔壁が高く、床も厚くなっているので、地上からの着座位置は高い。エクステリアデザインを優先して全高を低く抑えようとすると、頭上空間に余裕がなくなってしまうわけである。これは本来全高1.2m以下のクルマの居住空間である。

クルマを真横から見ると、フェンダーの位置が高く、ボディー全体が分厚く、サイドウィンドウの比率が小さくなるのが現代のクルマである。スポーツカーの場合は屋根を低くする分、極端に窓が小さくなり視界が非常に悪いものとなる。また、フェンダーの高さとのバランスをとるかのように今度はホイールが大径になり、バネした重量の増加とともに、まるでデフォルメしたおもちゃである「チョロQ」のようなクルマが出来上がる。

もう一つ例を出すと、初代アウディーTTがまさにそうだが、新時代のクルマのデザインとして、とても傑作だったのではないかと思う。スポーツクーペなのに全高は1350mmもあったが、斬新なデザインで非常にカッコいいスポーツカーだと思えたからだ。アウディーTTのそれは、明らかにそれまでのスポーツカーデザインのフォーマットにはなかったものである。

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昨今のミニバンやSUVのブームもあり、すっかり背の高いクルマばかりになってしまった今日。やはり人間は慣れてしまうもので、かくいう私も着座位置が高いことにすっかり違和感を感じなくなった。むしろ見やすくて良いと思っているくらいだ。

時々、今でもオーナーに大事にされているような昭和のスペシャリティカーを拝見すると、「こんなに低かったっけ?」と思うことがある。
とにかく真横から見た時のボディーが薄く、サイドウィンドウが大きいことに驚かされるのだ。旧時代のデザインフォーマットである。
新時代のデザインではボディーとサイドウィンドウの比率が逆になる。

実は、あれだけ低いクルマが好きだった私が、今では世間全体的にはスポーツカーよリもSUVの方がカッコいいと思っている。おそらくその理由は、新しいデザインフォーマットに準じてカッコいいクルマをつくるのに、SUVのフォルムの方が上手くハマるのだと思う。私はデザイナーではないからよくわからないが、SUVは、ボンネットの高さと車輪の大きさで、上手くバランスがとりやすいのではないだろうか。新型クラウンクロスオーバーのプロポーションが良い例である。

特に全高1500〜1600mmくらいの車高低めのSUVは、これはもう現代のスペシャリティークーペと言って良いのではないだろうか。
バブル期であれば、プレリュードやシルビアのポジションである。
これだけ人間が背の高いクルマに慣れてしまった以上。今更昔のプレリュードのようなクルマが出てきても、デートカーにはならない。女子ウケは絶対に悪いと思うからだ。笑

なんだか冒頭の話と矛盾するようだが、ただそれでも、私が本当に美しいと思えるクルマは、地を這うようなルーフの低いクルマであることに変わりはない。


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