フェンダーアーチとタイヤの隙間#2〜「KUHL OUTOROAD GR86」〜スポーツカーのリフトアップカスタム
前回の記事で、フェンダーアーチとタイヤの隙間が大きく空いているのはクルマのデザインとしては間抜けであるようなことを書いた。その隙間は、趣味性が高くスポーティーなモデルであればあるほど気になってしまうものではないだろうか。
ところが、今回はそれとは矛盾する内容を書くことになる。
というのは、今年2026年1月に開催された東京オートサロンの展示車両の中で、私が個人的に最も気に入ったモデルが、ヘッダー写真のTOYOTA・GR86だったからである。
これはKUHLさんがGR86のRCグレードをベースに販売するコンプリートカーで「KUHL OUTROAD」と名付けられていた。多くのローダウンされた展示車両とは手法が逆。車高をリフトアップしてオフロードモデルに仕立てたものである。
スポーツカーのリフトアップモデルとしては(スポーツカーというよりはスーパーカーの部類だが)ポルシェ・911・ダカールやランボルギーニ・ウラカン・ステラートが既にあって、これらと同じ手法であるが、おそらくは特にウラカン・ステラートの影響があったのだろうと思われる。

資料によると「KUHL OUTROAD」は、専用に開発した車高調とタイヤの外径を大きくすることによって、車高を3.0インチ(約7.5cm)もアップしている。オートサロンでは、スポーツカーとセダンだけでなくミニバンやSUVに至るまで、嫌というほどのシャコタン車の中では異彩を放っていて私は目を奪われた。
当然フェンダーアーチとタイヤの隙間はより大きく空くことになるが、これが間抜けどころか精悍で頼もしいスタイルなのである。
前回の記事とは言ってることがまるで違ってしまうのだが、フェンダーとタイヤの隙間が大きく空くことで、むしろカッコよく見えてしまう不思議。
それはたぶん脳内変換が起きているからなのだろう。
「KUHL OUTROAD」のことをオンロードのスポーツカーではなく、SUVだとかオフロード車として私の脳は勝手に認識していて、本格的なオフロード車の場合は、地上高が高い方が強そうに見えてカッコいいのである。
脳内変換の起きない人は、このクルマを「車高の高い変なスポーツカー」として違和感を覚えるに違いない。また、リフトアップして重心の上がったスポーツカーなど本末転倒と考える人もいるかもしれないが、そんなに真面目に考えずに緩く遊び心があることが魅力なのである。
そのカッコ良さは、ボディーキットで全体のデザインやマットな色彩で上手くまとめてあるからなのだが、主にはランボルギーニ・ウラカン・ステラートと同じように、ゴツゴツしたオールテレインタイヤを履いていることと、無骨な黒い樹脂素材のオーバーフェンダーが主に惹かれたポイントだった。
「KUHL OUTROAD」のパンフレットには「道なき道を、疾走れ。」とある。さて、どんな走りを期待できるのだろうかなどとつい妄想が広がってしまうのだった。
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オフロードモデルとして、唯一悪路走行で気になる点は、GR86の駆動方式は2WDのFRであることだ。
現代では、アウトドア遊びで使うオフロード車と言えば4WDということになっているが、果たしてオフロード車がFRでも大丈夫なのだろうか考えてみた(クルマの性格上、そんなに真面目に考えるほどでもないのだが…)
しかしそれ以前に、現代の日本で未舗装路を走る機会はほとんどないと言って良い。意図的に「険道や酷道」を選んでもほとんどは舗装されていて、狭くてすれ違いが困難なだけの、わざわざ通る必要のない道である。
ただ一度、Googleマップに頼ってとんでもない道に迷い込んだことがあった。
それは、あるリゾートエリアにある洒落たカフェに向かう途中のことで、森の中を進むうちにだんだん道が狭くなり「本当にこんなところにカフェあるのか?」と不安になりながらも突き進むと、荒れた未舗装路に変わり引き返すことも困難。そのまま森を抜けると、今度は畑の真ん中を通って県道に出た。なんとそのカフェはその県道沿いにあったのだ。
Googleマップに頼りすぎはこのような危険に陥るが、だからと言って4WDが必要な道でもなかった。
真面目に、ランドクルーザーをはじめ、ディフェンダーやゲレンデなどの巨体を持つ本格オフロード車をいったいどこで走らせるというのだろうか?と考えたことがあるが、これは300km/hも出るスーパーカーをどこで走らせるのか?という愚問と同じであることに気づいた。
実用で性能を発揮するよりも、何より凄そうに見えることが大事なのだ。
強いて、オフロード車は災害に強そうなイメージもあるが、それも幻想である。建物の倒壊や電柱が倒れて道が寸断されてしまってはクルマではどうしようもないからだ。
他に、もし未舗装路を通ることがあってもそこは公道ではなく、せいぜいキャンプ場やスキー場の中であったり、別荘地の私道を通過する時くらいではないだろうか。
たとえ悪路でも4WDが必須の場所は稀で、大抵は2WDでもLSDさえあればなんとか抜けられるものである(逆に最低でも擬似LSDがないと困るが…)。
もちろん雪道の走行は4WDの方が楽で安心なのはジープも使っているから知っている。ただ今のところ私は2WD(しかもFRやMRを含む)で冬山へ行ってもほとんど問題なく走りきっている。脱出用プレートやチェーンも持っていくが使ったことはない。あくまで今のところであるが…。
そして昨今、2WDでカッコウだけの「なんちゃってSUV」も多いが、大事なのは4WDであることよりも、ロードクリアランスなのではないかと思っている。
そのロードクリアランスは街中でも大いに有効で、たとえノーマル車高でもスポーツカーやスポーツセダンの運転は段差や傾斜に非常に気を遣う。
つい先日など田園調布のとあるコインパークを出る時にBMWセダンの底をガリガリ擦ってしまった。SUVならば気にもせずに通過できる。
メーカー純正のクルマでも、スポーツカーの車種によっては、入れるガソリンスタンドや店舗の駐車場は限定されるし、本当は大丈夫なのに立体駐車場への入庫を断られて平置きに回されたこともあった。
見知らぬ場所へ出かけるにも、出先の段差や傾斜角の状況を事前リサーチしなければならない。
その点「KUHL OUTROAD」は、どこへ行っても気を使わずにストレスが溜まらない機動力の高いクロスオーバースポーツカーである。
今や路面がうねっている峠道などは、ローダウンしてストロークしないスポーツカーよりも、少々背高で重心が高くてもクロスオーバーSUVの方が速く走れてるように感じるくらいだから、ここでも威力を発揮しそうである。それでいて普通のSUVよりもずっと重心が低いのだから無敵と思えてしまう。
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そして最もこのクルマの真価を発揮する使用方法は、クローズされたダートコースでのドリフト走行である。
ダートコースに持ち込めば誰でも比較的簡単にドリフトを楽しめるはずだ。
実は私は峠の走り屋時代から現在に至るまで、ドリフトと呼べるドリフトをやったことがない。峠を走っていたのはドリフトが爆発的に流行る少し前のことで、ギャラリーを沸かせるような見せる派手な走りではなく、なるべくギャラリーのいない曜日と時間帯に走って地味に速さを求めていた。いや、最終的には速さも求めていなかったかもしれない。目指すところをタイヤも鳴らさず綺麗なラインを描くコーナリングに方向性を変えたからである。
センターラインを大きく割るなど考えられず、せいぜいグリップ限界内で走ろうとして結果的にタイヤが滑ってしまってカウンターステアを当てるか、やったとしても超タイトコーナーのサイドブレーキを使ったターンまでである。一応ドリフトの一種ではあるが、現代のレベルではそう呼ぶには至らないのではないだろうか。
ドリフトと呼べるドリフトとは、現代ではコーナーの入り口から出口まで横を向きっぱなしの白煙をあげた派手なやつのことと定義している。
そのようなドリフトは最高レベルでクルマをコントロールできている感じがしてやってみたいと思ったことはあるが、もしこれをやるとなると、専用にチューニングしたFR車が必要でその上タイヤ代がかかりすぎる。
ターマック路面ではタイヤがすぐに丸坊主になってしまうから、おいそれと手の出せるものではなかったのだ。
その点、ダート路面は違う。非常に低いスピードでクルマが流れてタイヤの減りはターマックの比ではない。
ダート路面と言えば、私が走り始めた頃にはまだダート区間が多く残るワインディングロードがあって、夜中にラリー屋さんが練習していたものだが、
100馬力程度のクルマでもパワーをかけると、制限速度程度でも滑ってくれてカウンターステアの練習にはなったものである。
今からドリフトをやりたければダートコースに行くしかない。
そして、ダートコースを走り終えたら、泥だらけな姿もなかなかカッコいいから洗車の手間も省けそうだ。
2026年、今年のオートサロンで最も妄想が広がったクルマの話であった。
